グローブ型の水銀灯は、屋外の夜間照明として広く利用されている。(写真1、2参照)その大きな理由には、安価であること(灯具のみで3万円前後の価格で販売されている)、そして円形のガラス球の外観が美しい事にあるようだ。同型の照明は、ほとんどの照明器具メーカから販売されており、製品の種類も豊富である。
大変残念なことに、上のような利点に反して、グローブ型の照明は、屋外照明の欠点のほとんどを代表している。照明器具の欠点について一般には詳しく理解されていないこともあり、上記のような経済的な理由と外観の良さから、その問題の大きさにも関わらず多く利用されてきているようだ。
このグローブ型の照明が夜間に必要な場所を照明するという本来の役割以上に、グレア(まぶしさ)、迷光(不要な場所を照らすこと)、エネルギーの無駄そして景観をだいなしにしていることを知っている人は少ない。また、グローブ型の照明に限らず、ほとんどの屋外照明がもつ同様の問題が、利用者の間で議論されることは少ない。
写真−1 | 写真−2 |
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写真3が実際に夜間、この照明具が点灯されているのを撮影したものだ。これらの写真の実例を参考にしながら、このごく一般的な照明具の問題を検討してみよう。
(眩しさ)
次に照明はその使い方次第では、眩しさの原因となり、夜間の視認性を阻害する場合がある。これは、発光するランプそのものが通行人に直接見えるような構造を持つ照明具が原因となる。70度(又は75度)から90度の角度はグレアゾーンと呼ばれ、この角度で出る光が遮蔽されていない場合、眩しさの原因となり、夜間の視認性を阻害する。
両者を合わせると、少なく見積もっても30%以上の光が無駄になっている。これは当然使われている電気エネルギーの30%以上を無駄にしている訳だ。
同じように見てみると、写真−1の例はもっとひどい、実に60%以上のエネルギーを無駄にしている。
写真3がそのグレアの実例の一つだ。歩行者からも、車を運転している人からも、強い光をだしているランプが何十メートルも離れた所から良く見える。 これは、見ている人の目をくらまし、極端に視認性を低下させている。 写真-3の中で一番よく見えている物は、ランプそのものだ。照明は、道路上をもっとも明るくし、人や車の安全に貢献するべきではないだろうか? グレアは誰にとっても不要であり、特に視力が多少とも低下している高齢者にとっては、グレアに対する順応がむずかしい場合もあり、危険でもある。絶対的な明るさよりもグレアが視認性により影響している事を裏付けている報告もある。
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同じ様な照明は、約2万人が住んでいる住宅地で約500本使われている例がある。年間で約1,125万円の費用を使っている事になる。この費用の内30%が無駄になっているとしたら、その費用は338万円となる。これを日本の人口一億二千万に換算すれば、約200億円になる。この数字はたった一種類の照明具が持っている無駄であり、実際には同じ様な照明具が優にこの十倍は使われているはずだ。一年間で少なく見積もっても二千億円相当のエネルギーの無駄を作り出していることになる。
これだけの無駄を私達は、許しておいても良いのだろうか。
我が国の統計が公表されていないが、米国に比べて、電力コストが約三倍、総人口が約三分の一であることを考えれば、同様の費用を無駄にし、排気ガスもその約三分の一を送り出していることは容易に想像がつく。2兆円といえば、日本の国家予算の約3%に相当する。これだけの膨大な費用を無駄にし、環境の劣化を促進していることを誰も気付いていないのが現実だ。
また、夜間の景観にふれるならば、照明器具から出るギラギラした光が夜間の景観を台無しにしている。照明はランプそのものを演出するために設置されることは、特別の場合と考えて良い。グローブ型の照明具が街灯、夜間灯、防犯灯を目的として使われるなら、照明される対象をより良く見えるようにすることが大切で、眩しさもギラギラも防ぐべきであろう。
同時にもし効率が二倍良いメタルハライドランプを使うなら200ワットx0.7 x 0.5=70ワットのランプを使うことで水銀灯と同じだけの光量を確保し、グレアのない質の良い照明を実現できる。もっと効率の良い低圧ナトリウムランプを使えるなら、50ワットのランプで充分となる。
以上を工夫するだけで、消費電力は1/3〜1/4となる。これを日本全国に展開することが出来れば、それだけで屋外照明にかかる4千億円以上の費用を削減できることになる。また、環境に対する影響も同様に1/3〜1/4となる。屋内照明についても同様な改善が可能だ。
誰もが利を得る改善ではないだろうか。
最後に残念ながら、この条件に合う照明器具は大変少ない。照明器具メーカーの積極的な改善と、正しい照明の知識を持った上での照明の設置と管理が望まれる。