光害から夜を取り戻す為に力を貸して下さい
David L. Crawford
国際ダークスカイ協会(IDA)会長(ボランティア)
|
前書き
あなたは、最近夜空を見上げた事がありますか?都市に住む世界中の私たち、ほとんど誰からも、星々や天の川は、なくなっています。祖先達が見た暗い空は、消え去ってしまいました。
私たち人類の遺産であり、何物にも代え難いものが、夜空から消え去ろうとしているのです。何千年もの間に、太古の空は詩人や小説家、音楽家だけではなく、全ての人の想像力を動かしてきました。想像力とともに宇宙での私たちの位置づけを実感する為には、暗い空は、人類にとって、根本的で必要なものだと、私たちの多くは信じています。同じように、昼と夜の繰り返しは何時までも、私たちと共にあり、疑うまでもなく私たちの体の中に作り込まれています;もし、それを失う時は、まさに顕著な精神的、社会的なストレスにつながる可能性があります。
|
不幸にも、ほとんどのアメリカの国民は、彼らの両親や祖父母が、良く知っていた星々を見ることが出来ないまま、成長しているのです。彼らは、夜空を写真やテレビ、或いは、プラネタリウムでしか見ていないのです。これは、単に街の中心に住む者だけに言えることでは無く、郊外や田舎に住む多くの人にも言えることです。街灯やその他の光害の原因が星座や、流星や、そして惑星の姿を隠してしまったのです。
問題は、都市部の空の明るさです、光害の根元です。空の明るさの実体は、質の悪い照明が、あまりにも沢山、私たちの街の中やその他、色々な所にあることです。
もし、私たちが空を見上げて、星々や、私たちの周囲を取り囲む夜の沢山の興味ある様子を見ることが無くなれば、私たち人類は、私たち自身の何かを失うのです。それは、消え去った動物種を見なくなったり、子ども達の笑い声が聞こえなくなるのと似ています。私たちは、環境の大切なこの一要素を失うことで、私たちの存在の一部を捨てているのです。
科学にとっては、その影響は悲劇的でさえあります。例えば、宇宙がどの様に造られたかを研究する天文家は、地球から信じられないほど遠くの銀河や、クエーサーを調査します。しかし、何光年もの、果てしもない時間を旅する後に、これらの対象からの光は、その最後の道程で私たちの空の明るさの中で消え去る事が起こるのです。
質の悪い夜間屋外照明の問題
暗闇で良く見える為に、安全の為、便利さの為に、そして私たちの周囲に魅力ある夜の環境を保つためには、私たち誰もが夜間照明を求めていることは、はっきりしています。なぜ私たちは、この様な大切な目的を達成する照明を、そうです、「適切」な夜間照明を特に求めないのでしょうか?この様な目的を犠牲にし、私たちの隣人に迷惑をかけ、エネルギーを無駄にし、そして夜の雰囲気を台無しにするような、質の悪い照明を、絶対に私たちは、使ってはいけないのです。
ここで、私が考える質の悪い夜間照明の障害を上げてみます:
- 都市の空が明るくなること(頭上の空が明るくなること)、宇宙の姿を見ることを失ってしまうこと。
- グレア。グレアは、視認性を決して良くすることは無いのですが、私たちの街の中で大変良く見るものです。私たちは、グレアの無い環境をつくるよう、努力するべきです。グレアは、辞書によれば、「眩しさで見えなくする光」です。必要のないものです。良質の夜間照明は、基本的にグレアがありません。
- 漏れ光。今ある沢山の照明設備は、役に立つと同程度か、又はそれ以上に迷惑にもなっています。無駄に漏れている光が、私たちの庭を、窓辺を、そして私たちの望遠鏡の中までも照らすのです。騒音公害と同じように、この様な障害光を私たちはまったく必要としません。
- 貧しい視環境、夜間環境の混乱。私たち全員が良い夜間環境をつくるように努力しなければいけません、それは、昼間の良い環境をつくるのと同様です。このような貧弱な環境は、現代生活のストレスの一部になっています。この問題を無くするよう務め、妥協してはいけません。気付いて下さい。夜は環境の一部でもあるのです。
- エネルギーの無駄。必要もなく、求められてもいない場所を照らし(空に向けられたものを含み)、エネルギー効率の悪い光源や照明設計を使うことによって天文学的な量のエネルギーとお金を無駄にしています。このお金を私たちの世界を、より良いものにするために使い、汚すために使ってはいけません。ひかえめな推測でも、夜空を照らす為に年間約20億ドルをアメリカ国内だけで、無駄にしています。
私たちになにが出来るでしょうか?
気が付いているかどうかは、別としても、誰もが光害の問題を持っています。私たち全部が上に掲げた問題の犠牲者です。しかし、そうである必要はありません。
そこで私たちに何が出来るでしょうか?
- 適切な照明を使うこと。品質の良い設計というのは、実際は照明に対して常識的な見方をする事です。適切な照明は、夜間照明による障害を最小にし、照明の利になる部分を最大にします。不適切な照明を許さないこと−そう無くさなければいけません。
- 照明を下方向に向けて、求められている場所を照明すること。照明の出力を無駄にせず、必要な場所に届くよう、上手く制御しましょう。
- タイマー(または、減光装置やその他のコントローラー)を使い、光が必要なときだけ照明を使うようにし、不要時は、消すこと。
- グレアが最小になるように照明を設計したり、設置すること。グレアのほとんどは、質の悪い器具か、同様な施工に起因するものです。グレアは全く不要で、視認性を助けることは、ありません。そして良い視認性こそが、私たちの夜間照明の目的です。
- 適切な光量を目的に応じて使い、過剰にならないこと。「もっと明るく」というやり方ではありません。グレアで目が眩まない時、かなり少ないと思われる光量でも、人の目は、よく見える素晴らしい道具です。更に、過剰に照明された場所から、暗い場所へ移動する時視力が低下し(変化にたいする順応作用)、また逆も同じです。
- エネルギー効率の良い光源を使う。照明の光源によって、効率は大きく違っています。低圧ナトリウムランプ(LPS)の使用検討:これは、最も効率が良く、LPSの出力は基本的に一色で、上手くフィルターで除く事が出来ることもあって、天文家に強く望まれるものです。LPSは、道路灯、駐車場、安全灯など演色性が問題にならない場所では、最適です。注意深く照明設計を行えば、LPSは、基本的にどんな場所でも応用出来ます。
これらの対策は、実際に良好な照明をつくる事に間違いありません。そして役立つ訳です。私たちは、それが確かな事を知っているはずです。良好な照明とは、実際常識的な事なのです。幸いにもその価値が急速に知られるようになって、この良質の照明は、多くの場所に広がっています。この照明を使う市では、市民がより良好な照明を得る事、大きく省エネにつながり、そして暗い夜空(決して暗い道路ではなく)を実現するなどの恩恵を受けています。私たちの全てが利を得る訳です。
問題に気づくよう、世論を育てること
この課題に関心のあるものが、問題と解決方法について全ての人を教育し、そしてどこにでも広がっている無関心を克服するようつとめることです。
問題に気づいてもらう為の具体的提案:
- 問題のある照明について人々に話すこと。支援を求めること。友好的であること。しかし、確固とした態度をとること。敵をつくらない様気を付けながら、継続することが必要です。私たちは、同盟を必要としているのであって、敵をつくることではありません。良好な照明は、正しいのです。社会の要求を満足するのです。質の悪い照明は、問題になるばかりでなく、夜間照明の要求を満たすには、絶対非効率的なのです。
- 人々に何が出来るか教えること。ほとんどの人が照明について知識もなく、何が出来、価格について、そして良好な照明と質の悪い照明の区別さえつかないのです。
- 質の悪い照明がつくる問題について知ってもらうことです:グレア、ギラギラ、漏れ光、夜空の明るさ、エネルギーの無駄など。良質の照明で何が可能か示すこと。質の良い照明について調べ、それを実際に使ってみることです。良い手本になることです。
- 沢山の自治体が悪い照明を撲滅し、視認性を向上し、安全、防犯そして省エネを実現するための屋外照明条例を制定しています。このような条例を制定することも企業、行政、そして人々に良好な照明の価値を知ってもらう大きな支えになります。
- 国際ダークスカイ協会IDAに入会すること。これは、この問題と問題解決の方法について学び、実際に参加する最良の道です。
生活の中で問題を解決することが、節約につながる事は、わずかしかありません。光害という病気を治す事でお金を節約し、より安全な夜間の環境をつくり、そして暗い空を守る事になります。誰もが利を得るのです。
Everyone can win.
支援も可能です
国際ダークスカイ協会は、非営利団体で、周知する努力を通して力になるために組織されました。会員制を土台とする組織で、米国50州そして68カ国からなる2,700人の会員で成り立っています。人々がこの問題とIDAの存在に気づき、現在も順調に会員は増え続けています。この組織が育つ事で、暗い空と良好な屋外照明の為により大きな力になっていきます。
IDAは、この問題を議論する多くのインフォメーション・シートを作っています。この他にもスライド、ビデオ、ポスター、そして情報を入手して他の人々に、この声を広げたいと希望する人の為に、その他の資料も準備しています。
IDAは、色々な市や、地域、そして国に沢山のセクションと支部を持っています。この全てが、地域の情報源となり、行動したいと思う多くの個人を支えています。
インターネット上でIDAのWWWを覗いてみること:大切で利用価値のある多くの情報があります。
URLは: http://www.darksky.org/
入会用紙も準備しています。もし、まだ会員でなければ、どうぞ入会をお願いします。私たちも、あなたの支援を必要としています。
結論
此処に問題があり、そしてほとんどの場所で、更に悪くなるばかりです。しかし、解決する方法があり、それが実現できることを、私たちは知っているのです。その方法は、同時にあなたの夜間環境の質を改善し、莫大なエネルギーと費用の節約になります。この事実が知られていないこと、無関心が問題の本質です。行動が求められています。
グレアやギラギラ、漏れ光、エネルギーの浪費、そして夜空を明るくするなど、質の悪い照明は、沢山の障害を起こすのです。
暗い空は、安全、防犯、そして機能的な夜間の環境と両立します。天文家だけの為では無く、人々は、夜の質の良い環境を必要とし、飢えてさえいるのです。良質の夜間照明により、私たちは皆利益を得るのです。
We all win!
更に詳細については、下記に連絡ください:
The International Dark-Sky Association (IDA)
3225 N First Avenue, Tucson AZ 85719 USA
電話: 520-293-3198
Fax: 520-293-3192
電子メール: ida@darksky.org
IDAのホームページ: http://www.darksky.org/
IDA日本セクション (IDA Japan Section)
ホームページ: http://www2a.biglobe.ne.jp/~wakaba/wakaba-j.htm
Copy right (c) 1998 David L. Crawford
Last update: 1998 Sept 17