労務管理事務所通信

Labor Management Office Report

5月号  発行日: 平成14年5月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)

労働保険の更新の季節です。平成13年度から、登録型派遣労働者、パートタイム労働者の方について雇用保険の適用が拡大されていますので、不明な点については、担当社労士にお尋ねください。

 

 

 

最近のニュースから

 

留学は個人の利益−元証券社員に返還命令  

留学から帰国後2年足らずで転職した男性社員に野村証券(現野村ホールディングス)が留学費用の一部約1,000万円の返還を求めた訴訟の判決で、東京地裁は16日、元社員に請求額通りの返還を命じた。

 同社は留学から帰国後5年以内に退職した場合には費用を返還する規定があったが、元社員側は「業務命令に従っただけ。帰国した社員を引き留める規定は労働基準法に反し無効」と主張していた。

 これに対し、判決理由で多見谷寿郎裁判官は「海外留学は広い意味では人材育成策で業務に関連するとしても、資格、人脈など労働者個人の利益になる部分が多いから必ずしも企業が費用を負担する必要はない」と指摘。 「留学期間中、男性は自由に勉強し、獲得した資格で転職が容易になるなどの利益を得ており、費用の返還規定は不当な拘束とは言えない」と述べた。
判決によると、元社員は1989年4月に野村証券に入社。91年に同社の海外留学生候補となり、翌年2月にフランスに留学。MBA(経営学修士)資格を取得し、94年7月に帰国したが、96年5月に退職した。この間の費用は約3,900万円かかった。

[共同通信4月17日]

 

 

サービス残業:
85%の職場が労基法に抵触 厚労省調査

 
時間外賃金が支払われない「サービス残業」に関する厚生労働省の実態調査で、84・8%の職場が労働基準法に抵触したとして、同省の指導や勧告を受けていたことが5日分かった。サービス残業の廃止は、ワークシェアリング推進の前提とされているが、深刻な実情が浮かんだ。
 厚労省は昨年10、11の両月、全国2589事業所を無作為に選び特別調査を実施した。毎日新聞が入手した資料によると、このうち1875事業所(全体の72・4%)に是正勧告書、321事業所(同12・4%)に指導票を出した。法律違反の内訳として「労働時間」(45・3%)▽「賃金台帳の有無」(23・4%)――など7項目を挙げた。
 
[毎日新聞4月6日]

 

 

 

 

 

 
インターネット:
私的利用に企業が監視 13・7%が処罰も

社内インターネットの私的利用について、3分の1以上の企業が防止策を講じ、そのうち半数近くがモニタリング(監視)を実施していることが、厚生労働省の外郭団体「日本労働研究機構」の調査で分かった。プライバシー保護との関係が論議になりそうだ。
 調査は上場・店頭登録企業を対象に3月に実施し、267社から回答を得て、「インターネットを業務で使用している」とした263社について集計した。
 従業員の私的利用の実態については「かなりいる」と「多少いる」が合計88・2%に達した。私的利用についての「ガイドラインや規制を定めた」企業が全体の40・7%で、35・4%が「具体的な防止策を実施している」とした。
 具体策としては実施企業の61・3%が「メールやホームページの利用状況等の履歴を保存」とし、46・2%が「モニタリングしている」と回答した。モニタリング内容は「あて先」が66・7%で、「内容」は41・7%。私的利用に関連して何らかの処罰を行ったことのある企業は全263社中13・7%だった。
 社内メールの私的利用の監視などについては、00年12月に当時の厚生省が「労働者の個人情報保護に関する行動指針」でモニタリング内容を事前に通知することなどを求めている。

[毎日新聞4月20日]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今月の統計

 

日本の将来推計人口

(単位:千人)

2000年

2010年

2020年

2030年

2040年

2050年

126,697

127,473

124,107

117,580

109,338

100,596

 

平成12(2000)年の日本の総人口は同年の国勢調査によれば1億2,693万人であった。この総人口は今後も緩やかに増加し、平成18(2006)年に1億2,774万人でピークに達した後、以後長期の人口減少過程に入る。平成25(2013)年にはほぼ現在の人口規模に戻り、平成62(2050)年にはおよそ1億60万人になるものと予測される。

(出典:国立社会保障・人口問題研究所)

因みに、同研究所によると、 2050年の日本人の平均寿命は、男:80.95歳、女:89.22歳と仮定している。

 

 
 


法改正情報

             詳細については、担当社労士までお尋ねください!

 

健康保険・厚生年金保険の適用関係届出の一部について、社会保険事務所へFDによる届出が2002年6月から可能となります。

 

従来、健康保険(政府管掌)・厚生年金保険の適用関係の届出は紙の届出のみとなっているところですが、平成14年6月からは、事業主の届出義務があり、大量又は定期的な届出となる届書について、磁気媒体(FD)による届出を届出方法の選択肢として追加し、事業主の方々の届出手続きの利便性の向上を図ることとしております。

FDによる届出を行う場合、事前に特別な手続き等は必要ありません。社会保険庁では、これらの手続きをより多くの事業主の方々が利用できるよう、上記のFDを作成するためのパソコンソフトをホームページ上から無償で提供します。

また、社会保険労務士が事業主の方々に代わって届書を提出代行する際についても、FDによる届出を行うことが可能です。なお、一枚のFDには、同一社会保険事務所管轄内の適用事業所のみ混在させることが可能です。ただし、管轄の異なる適用事業所を一枚のFDに収録し提出された場合は、受け付けすることができませんので、ご注意下さい。

 

 

36協定の届出様式が変わりました(平成14年4月〜)。

特定労働者(一定の育児又は介護を行う女性労働者)についての延長時間の限度の措置(激変緩和措置)が平成13年度末で終了することに伴い、平成14年4月1日より現在の36協定の届出の様式が改定され、「B 育児又は家族介護を行う女性労働者のうち延長することができる時間を短くすることを申し出た者」欄が削除されました。
つまり、労働時間の女子保護規定が削除が完了したことになります。
一方、同日より、改正育児・介護休業法が施行され、育児及び家族介護を行う男女(女だけでないことに注意)労働者について、その請求により、事業の正常な運営を妨げる場合を除き一ヶ月当り24時間、一年当り150時間を越える時間外労働を制限する制度が新設されていますので、労働時間を適切に管理し、制度の遵守に努めてください。

 

 中小企業退職金共済法の一部を改正する法案が今国会で可決されました。


景気低迷が続き金利や株価が低水準で推移していることから、運用利回り実績が予定運用利回り(3.0%)を下回る状態が続き、中小企業退職金共済制度における平成12年度末の積立不足は、2,000億円を超える状況にあります。退職金の額及び退職金の予定運用利回りに応じた率等については、法律でこれを定めることから、昨今の経済及び金融の情勢に的確に対応した制度設計が可能となるよう、これを政令で定めることとなります。なお、政令において、現在の経済及び金融の情勢に対応するべく予定運用利回りの見直しを行う予定です。

 

 

 

 

 

(あとがき)

今回の記事には、載せませんでしたが、大阪地裁で、外回り営業の残業手当についての興味深い判決がありました。「指揮命令がなくても会社の管理下での労働で、営業活動の時間は労働時間」との判断を示し、残業代金の支払いを会社に命じたのです。誰でも携帯電話を持つようになり、外回り中でも会社の管理下と判断される場合もあります。労働基準法上の事業場外労働のみなし労働時間の適用については、担当社労士と相談して注意して取り扱ってください。