Labor Management Office Report

6月号  発行日: 平成14年6月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)

労働保険の更新の手続きは、済んだでしょうか。 総務省の発表によると、4月の完全失業率は、5.2%で高水準のままです。なかでも、「世帯主」の失業者が過去最高になったとのこと。景気の回復は、いったいいつになるのでしょうか。

さて、今月は、法改正情報の替わりに、判例を載せました。年俸制に関ることです。年俸制を採用している企業で、疑問のある方は、担当社労士に相談ください。

 

最近のニュースから

 

過労死認定が過去最高
2001年度  143件で68%増加

厚生労働省は22日、2001年度の「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(「過労死」など)の労災補償状況」及び「精神障害等の労災補償状況」を発表した。いわゆる過労死の労災補償状況については、昨年12月の認定基準改正後、初めての認定数の発表になる。新たに取り入れられた基準は、「発症前に長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと」。これまで「発症前1週間」だった就労状況の評価期間を6カ月間に拡大した。

集計結果では、「業務上と認定された件数」は全国で143件で、前年度に比べ58件増と大幅な伸びとなった。そのうち、47件(33%)が、今回追加された「長期間の過重業務」基準により業務上と認定されている。

  請求件数は690件で、前年度に比べ73件の増加(12%増)となっている。請求の内訳は脳血管疾患が452件(うち認定件数96件)、虚血性心疾患等が238件(うち認定件数47件)であった。 [週刊労働ニュース5月27日]

 

 

残業代未払いで是正勧告 三菱電機とシャープに

大手電機メーカーのシャープ(本社・大阪市)と三菱電機(同・東京都)が、残業分の賃金の一部を支払っていなかったとして、労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けていたことが17日、分かった。

 シャープに対しては今年2月、大阪南労基署が立ち入り検査を実施。フレックスタイム制の管理部門の社員で、パソコンに記録された退社時刻以後に電子メールの送信記録が残っていたことなどから、記録が勤務実態に合っていないことが明らかになった。同社によると、上司の指示で社員が実態と違う数字を残すケースもあったという。

 3月に是正勧告があり、同社は昨年12月から3カ月の未払い分を社員に支払った。人数や金額は公表していない。同社は労働時間の把握が難しいとしてフレックスタイム制を廃止したという。

 三菱電機には、尼崎と伊丹の両労基署が今年1月から兵庫県内の事業所を対象に立ち入り検査。月20時間を超える残業代を受け取る手続きをしていない係長級の社員が多かったことが分かった。同社は社員700人に昨年12月と今年1月の未払い分約6500万円を支払った。 [朝日新聞4月18日]

     
<過労死認定>元広告代理店勤務の女性デザイナーに 天満労基署

 
退職7日後にくも膜下出血を発症、死亡した元広告代理店勤務の女性デザイナー(当時23歳)について、天満労基署は24日までに、遺族補償の支給を決め、遺族に通知した。厚労省は昨年12月、過重労働の認定基準を従来の「発症前1週間」から「同6カ月」に拡大しており、新基準が生かされた決定となった。

[毎日新聞4月20日]

 
   
         

 

今月の統計

個別労働紛争解決制度の利用進む

〜 あっせん申請受理件数66%の伸び 〜 都道府県労働局における「個別労働紛争解決促進法」の施行状況(平成14年1月〜3月)

総合労働相談件数 130,215件 (121,330件、+7%)
民事上の個別労働関係紛争相談件数 20,814件 (20,470件、+2%)
助言・指導申出受付件数 358件 (411件、▲13%)
あっせん申請受理件数 511件 (308件、+66%)
※前期分(平成13年10月〜12月)との比較を行ったもの。
 平成13年10月より各都道府県労働局においてスタートした個別労働紛争解決制度は、ADR(裁判外紛争処理制度)の1つとして、社会に着実に浸透しつつある。

 企業組織の再編や人事労務管理の個別化等に伴い、解雇や労働条件の引下げ、退職勧奨等、労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(以下、「個別労働関係紛争」という。)が増加している。
 このため、平成13年10月1日より、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、各都道府県労働局において、労働局長による助言・指導、紛争調整委員会によるあっせん等の個別労働紛争解決制度が開始され、半年が経過した。
(平成14年4月25日、厚生労働省発表)

 
 
     

判例情報

年俸制でも時間外支払え−割増賃金めぐり大阪地裁

  年俸制を理由に時間外労働に対する割増賃金を支給しなかったのは違法として、大阪府内の男性が、以前勤務していた測量会社に未払い賃金の支払いなどを求めた訴訟の判決で、大阪地裁は18日までに、割増賃金など計約120万円の支払いを命じた。

  大島道代裁判官は「同社は基本給と割増賃金を一体で支給しているというが、同社の給与支払い明細では、どの部分が基本給か明確に定めていない。こうした支給方法は労働基準法に違反しており無効」と判断した。 判決によると、男性は1997年4月、同社の正社員になった。測量の仕事は不規則で時間外勤務も多くなることなどを理由に、年俸制で賃金の支給を受けた。

  2000年4月ごろから男性は公共事業の測量の担当となり、時間外労働が増えたため同社に割増賃金を支払うよう求めたが、同社は「賃金には時間外割増分も含まれている」として応じなかった。この後、男性は昨年1月に退職した。

(共同通信)

 

(あとがき)

梅雨の季節です。色々と体調を壊す季節でもあります。「最近のニュース」でも紹介したとおり、過労死が増えています。健康管理には、十分に注意してください。過労死防止等の社内安全衛生管理対策については、担当社労士と相談して進めて行ってください。