Personnel Management Office Report 12月号 発行日:平成14年12月1日 |
永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信 |
(前書き)雇用保険料率、有価証券譲渡益課税、譲渡・相続税率の変更など政府では色々なことが議論されていますが、最終的な結論が出るまではしばらく時間が掛かりそうです。一方、改正社会保険労務士法が今国会で可決され、来年4月から施行になります。主な、改正点は、社会保険労務士が個別労使紛争の斡旋代理人になれることと、社会保険労務士法人設立が可能になることです。これらの業務拡大に伴い、弊事務所の業務メニューも拡大する予定です。詳細は、追ってご連絡します。
最近のニュースから |
ストックオプション:
所得は「一時所得」 国側敗訴
ストックオプション(自社株購入権)で得た利益をめぐり、米国企業の日本法人社員が「課税対象額が高くなる給与所得と認定した処分は違法だ」と主張して、課税処分の取り消しを求めた三つの訴訟で、東京地裁は26日、原告側の主張を認め、処分を取り消した。藤山雅行裁判長は「ストックオプションで得られる利益は、本人の労働の対価とは言えず、給与には当たらない」と述べた。同様の訴訟は53件起こされているが、司法判断は初めて。 ストックオプションは国内上場企業の約3割を占める1000社近くが導入しており、係争中の訴訟でも同じ判断が続けば、課税のあり方に影響を及ぼすとみられる。
訴えていたのは「マイクロソフト」と「コンパックコンピュータ」の日本法人社員。国税当局は、ストックオプションによる所得を「給与所得」と分類しているが、原告側は、競馬などの払戻金などと同じで、課税対象額が約半分になる「一時所得」と主張し、最大の争点になっていた。 判決は、給与所得を「労働と給付との間に合理的な対価関係がなければならない」と位置付けたうえで、海外本社株の権利を受けた今回のケースは「原告の勤務先は米国本社ではないので、労働と(利益につながる)株価の関係は、間接的で希薄だ」と指摘した。 さらに「ストックオプションによる利益は、本社株価の推移や、権利をいつ行使するかの投資判断という、労働の質とは関係ない要素がある」と述べ、給与の根拠となる「対価関係」を否定した。
ストックオプションは、自社株を一定期間内に決められた価格で取得できる権利で、企業の業績向上で株価が上がった時に売却すれば、高額の利益が得られる。80年代から米国で導入され、日本企業は97年に解禁された。 国税当局は、97年以前は海外本社株の権利行使について「一時所得」と指導したケースもあった。原告は指導に従う形で一時所得として申告し、後に給与と認定されて差額を過去にさかのぼって課税されたため、処分の無効を訴えていた。 [毎日新聞11月26日]
労働生産性:
日本は3年連続のG7最下位 00年
社会経済生産性本部は12日、00年の日本の労働生産性が5万1129ドル(798万円)となり、経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国中20位で、先進7カ国(G7)では最下位と発表した。いずれも98年から3年連続。 労働生産性はOECDの購買力平価(1ドル=156円)での国内総生産(GDP)を就業者数で割った値。1位はルクセンブルクの7万8626ドル(1227万円)、2位は米国の7万1923ドル(1122万円)、3位はイタリアの6万8434ドル(1068万円)。同本部は「景気の冷え込みで企業の設備投資が少なく、生産性改善の要素に乏しかった」と日本の低迷を分析している。 購買力平価に基づく労働生産性の国際比較は70年以降のデータがあるが、日本が最も上位にランクされたのは89年のOECD加盟25カ国中14位、90、91年の同28カ国中14位で、G7の中では91年の5位が最高。日本の生産性の低さは景気にかかわらず、構造的な問題とも言えそうだ。 [毎日新聞11月12日]
ILO、公務員のスト権で日本政府に再考促す
国際労働機関(ILO)は20日の理事会で、日本の公務員制度改革を巡り、スト権一律禁止などを見直す法改正を検討するよう政府に勧告する「結社の自由委員会」の中間報告を採択する。連合が「政府の改革案はスト権など労働基本権の制約を緩めない半面、各省の人事管理権限を強める内容」と反発、2月に同委に提訴していた。 中間報告は改革後もスト権などの制約維持を表明している日本政府に「再考」を要請。法改正を実施し、「結社の自由」の原則に適合させるため、政府や労働側など改革の全関係者による「十分で率直かつ意味のある協議」を強く促した。勧告内容に法的拘束力はないが、連合はこれを受けて政府に改革案の再考を迫る方針で、法制化作業に影響する公算もある。
(11月21日日本経済新聞)
今月の統計 |
平成14年の初任給は、ほぼ前年並み
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今月の判例 |
セクハラ認め賠償命令ー元上司らに760万円
上司からセクハラを受けた上、不当に解雇されたとして、岡山市の中古ゲームソフト販売会社に勤務していた30代女性が、慰謝料など計約2,400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、岡山地裁は6日、会社と上司2人に計約760万円を支払うよう命じた。 小野木等裁判長は判決理由で「会社は職場環境を保つように配慮すべき義務を怠った」などとした。 判決によると、上司の1人は1999年9月〜2000年2月の間、勤務時間中に何度もわいせつな言葉をかけるなどした。別の上司は99年11月、セクハラの相談に乗った後、女性を自宅に送った際、わいせつな行為をした。 説明がないまま解雇されたという訴えについては「女性は上司に辞職を伝えていた」として退けた。 女性は「納得できる内容」と評価。会社側代理人は「判決文をよく読んでいないのでコメントできない」としている。
11月6日(共同通信)
(あとがき)
今月の判例では、「セクハラ」を取り上げました。最近、セクハラの相談件数は、増加傾向にあり、さらに、裁判になったときの賠償額も増加傾向にあります。そして、ほとんどの場合、加害者本人のみならず、会社の管理責任も問われるものがほとんどです。具体的な防止対策については、担当社労士までご相談ください。