Personnel Management Office Report 3月号 発行日:平成15年3月1日 |
永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信 |
(前書き)4月より新卒採用者の入社を予定している企業の人事労務担当の皆様は、社員研修の準備などあわただしいときを送っていることと思います。一方、健康保険、厚生年金保険の保険料率の変更も4月から始まります。ご不明な点は、担当者労士までお問い合わせください。
最近のニュースから |
三菱自、来年度から定昇を全廃 成果主義賃金に移行
三菱自動車は03年4月から、一般社員(非管理職)の賃金について、年齢や資格等級に応じて毎年増える定期昇給制度を廃止する。骨格について労使が大筋で合意し、13日発表する。現行の年齢給や経験給をやめ、個人の業績評価を反映する成果主義型の「役割貢献給」を新たに導入する。自動車業界では、ホンダが昨秋、入社年次の若い社員を除いて定昇を廃止しているが、全廃するのは主要企業で極めて異例。
12日に本格始動した03年春闘では、ベースアップ(ベア)に代わって定昇の維持が争点に浮上しているが、右肩上がりを前提にしてきた賃金制度の見直しに拍車がかかりそうだ。
三菱自は、02年6月に資本提携先の独米ダイムラークライスラーから社長を迎え、賃金制度改革を進めてきた。 新制度は事務・技術系双方で、年齢給と経験給などで構成する定昇に代え、「役割貢献給」を導入し、入社初年度から査定で決める。さらに、従来の職務区分ごとに一定額を支払っていた給与を「職務基準給」とする。また、工場などの技能職には、技能の習熟度に応じた「技能習熟給」も設ける。
会社側が新賃金制度を実施するにあたり、従来の定昇などのために用意してきた賃金原資より総額を増やすかどうかが、今春闘での焦点になる。
定昇を一部廃止したホンダ労使は、従来の賃金原資に月間で数億円規模を上乗せし、組合員全体の賃金カーブを上げている。
三菱自は一般社員に先駆け、02年4月に管理職(非組合員)に成果主義を徹底する賃金制度を導入した。「参事」「主管」「主任」などの社内資格を廃止し、役割の大きさや職責に応じて賃金を支給する制度に移っている。同社は02年春闘妥結以来、こうした成果主義型賃金制度を一般社員に拡大することを労使協議してきた。
[朝日新聞2月13日]
解雇ルール法制化など答申 労基法改正案要綱
厚生労働省の労働政策審議会は18日、労働者の解雇ルールや有期雇用の期間延長などを定めた労働基準法改正案の要綱について、坂口厚労相に「おおむね妥当」と答申した。これを受け厚労省は3月上旬にも改正法案を国会に提出する。ただ、審議会で労働側委員から、解雇無効の立証責任などで「労働者に不利になる懸念がある」との意見が出たため、その旨を答申に付記した。
主な改正点は、(1)契約社員など事前に雇用期間を定めておく有期雇用の契約期間の上限を現行の1年から3年に延長(2)解雇ルールの明文化(3)労働時間の配分を労働者の裁量に任せる「裁量労働制」の適用範囲の拡大。
解雇については、使用者の解雇権を明記した上で、「客観的、合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合、権利乱用で無効」との規定を盛り込み、一定の歯止めを設けた。解雇予告を受けた労働者は解雇される前に理由を記した文書を企業側に請求できることも明記した。
労働側は、この法文の書き方では、使用者の解雇権が原則で権利乱用の規定が例外と裁判所に解釈されかねない、と強い懸念を表明。「使用者に解雇の妥当性を立証する責任を負わせてきた判例の流れを変える恐れがある」と主張した。厚労省は「これまでの法理を曲げる意図はない」とし、「通達などで趣旨を徹底する」と説明した。
また当初は、裁判所が解雇無効と判断した場合に使用者が補償金を支払って雇用関係を終了できる「金銭解決手段」についても、明記する予定だったが、労使の意見がまとまらず改めて検討することになった。
有期雇用については、98年の労基法改正で一律1年だった上限が、高度な専門職と60歳以上に限って3年に延長されている。それが原則3年、専門職などが5年に延長される。更新の手間を省き、雇用の安定にもつながるというのが理由だ。
裁量労働制は、専門業務型(研究開発や情報処理システムの設計など)と、企画業務型(本社や支社で企画や立案、調査に携わる)に限定されているが、企画型を営業所などでも導入できるようにする。
[朝日新聞2月19日]
NEC、昇給に歯止め/賃金の成果主義色強める
NECは6日、賃金制度を見直し、工場の現場労働者や事務職など役割に応じて、昇給を一定水準で打ち切る方針を明らかにした。労組との交渉を経て早期の導入を目指す。
成果主義重視の賃金体系に切り替えることで、賃金の上昇を抑制し国際競争力を高めるとともに、従業員のやる気を引き出す。
新制度だと、一定の給与水準に達した従業員は、昇進・昇格して社内の資格区分が上がらない限り昇給しない。すでに同社の管理職は役割に応じた給与が決まっている。これを組合員(約2万7,000人)にも拡大し、チャレンジ精神を発揮するよう促す。
同社の現行賃金体系に自動昇給制度はないが、一定の業績を上げた社員は毎年月給が数千円から数百円上がる年功的要素が残っており、事実上毎年賃金が上昇する仕組みになっている。
NECの丸山誠常務は「現行制度だと賃金の上昇が止まらないが、役割に応じた賃金水準があるはずで、天井を設けた方が良い」と説明している。
2月6日(共同通信)
今月の統計 |
上場企業における年俸制の導入4割まで高まる 一方、年俸制度導入には、対象者の設定、評価制度、賃金制度改定等社内の整備が必要となりますので、ご興味のある方は、担当社労士までお問い合わせください。
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今月の判例 |
仮眠時間労働訴訟が和解/会社が290万円支払い
宿直勤務中の仮眠時間も労働時間に当たるとして、「大星ビル管理」(東京)の社員ら10人が賃金支払いを求めた訴訟の差し戻し控訴審は24日、会社側が請求通りに約290万円を支払うことで東京高裁(秋山寿延裁判長)で和解が成立した。
昨年2月の最高裁判決は、一、二審判決に続き、実際に作業をしていなくても労働からの解放が保障されていない場合は労働時間に当たると判断した上で、約50万円と認定した支払い額算定に問題があるとして、審理を差し戻していた。
10人は、1988年2〜7月、派遣先のビルで連続24時間の設備監視、点検業務に月に2〜6回従事。会社側は7〜8時間の仮眠時間の賃金を支払わず、2,300円の手当だけを支給した。
2月24日(共同通信)
(あとがき)
米国がイラクを攻撃するかしないか微妙な情勢になってきました。攻撃があった場合には、石油価格の高騰、攻撃後のイラク復興支援のため日本政府の支出の増大、などが考えられます。日本政府の本音は、イラク問題は速やかに解決させて米国は北朝鮮問題に集中してほしいというところでしょうか。
さて、来月から新年度ということで、健康保険法をはじめいくつかの改正された法律が施行されます。改正された内容で業務に関係ある事柄は、来月より順次掲載していく予定です。