Personnel Management Office Report

9月号

発行日:平成15年9月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)この夏は、日本列島のほとんどが冷夏で終わりそうですが、皆様のところへの影響は如何でしたか。エアコンやビールの売上が減る一方、オデンやセーターの売れゆきが例年になく良かったようです。また、稲の不作から米の値段が上がり始めたようです。但し、10年前の凶作のときと違い、政府の備蓄が豊富で、輸入の一部ですが行われていますので決して慌てることはないと思いますがどうででしょうか。

 

最近のニュースから

 

新しい労使紛争の解決制度  

労使紛争の新たな解決制度として、「労働審判制度」が近い将来、創設されることになりそうだ。司法制度改革推進本部の労働検討会が公表した中間取りまとめに盛り込まれている。9月12日までの期限で広く意見を求めているが、長引く不況と雇用制度の多様化の下で急増している、個別労使紛争に対応するものとして、大筋での異存は余りないのではないかと思う。  新設される「労働審判制度」は、3回程度の審理で事件処理がされる、つまり"スピード審理"が特徴である。労使紛争は、関係する労働者にとっては生活に直接影響するだけに、通常の裁判のように長い期間がかかったのでは、実効は求められないので、紛争の速やかな解決を目指すことになる。  この労働審判では、職業裁判官と雇用・労使関係に関する専門的知識を持つ民間人が合議制で審理を進める。雇用・労使関係に詳しい人については、(1)労働関係法令・判決に詳しい(2)労働関係の制度、技術、慣行などの実情に詳しい(3)労使紛争の解決に平衡感覚があり、調整・判断力がある、といった3点が挙げられているが、労使紛争の性格からいって、公正な立場にふさわしい人材を労使双方から選出することになるだろう。 (日本労働研究機構 8月)


米、生産性で日欧引き離す ILOが国際比較まとめ  

国際労働機関(ILO)は1日、労働生産性などの国際比較をまとめた2年に一度の「労働市場の主要指標」2003年版を発表した。  労働者1人当たりの国内総生産(GDP)で比較した労働生産性は、米国が01年から02年にかけて2・8%上昇。過去7年間の平均でも年2・2%の上昇率を示し、同時期の上昇率が1・2%の欧州連合(EU)、1・1%の日本を大きく引き離した。  ただ、労働時間当たりのGDP比較では、フランスなど一部EU諸国の方が高く、労働時間が短いほど生産性が向上することを裏付けた。  一方、ILOは一部の国では農業人口が労働人口の約70%を占めるほど農業への依存度が高いが生産性は極めて低く、ベトナムの農業生産者1人当たりの生産性は米国の650分の1にすぎないと指摘。農業貿易の自由化と開発推進による農業生産性の向上を促した。(共同通信9月1日)

今月の統計

サービス業、「労働者の能力向上」などが経営課題に−厚労省調査
 厚生労働省は20日、2002年産業労働事情調査(サービス業就業実態調査)の概況を発表した。「直面している経営面の課題がある」と回答した   事業所は97.4%で、具体的な課題として、「労働者の能力の向上」(55.4   %)、「人件費等経費の削減」(43.4%)などがあがっている。


厚生労働省発表より
 
     

今月の判例

暴行理由の解雇は行き過ぎ/「偶発的」と鹿児島地裁  

同僚を殴ったことを理由に解雇されたのは解雇権の乱用だとして、宮崎市の男性(55)が、福岡運輸(福岡市)に社員としての地位確認と未払い賃金の支払いを求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁の池谷泉裁判長は25日、男性の訴えを認め地位を確認、会社に約380万円の支払いを命じた。  判決理由で池谷裁判長は「暴行は、年下の同僚から侮辱的な言葉をかけられたことがきっかけで偶発的。解雇するほど重大・悪質な行為とは言えない」と述べた。  判決によると、トラックの運転手だった男性は2001年11月10日、東京から冷凍食品を積んで広島営業所に到着。従業員がいなかったため自分で積み荷を降ろした。  それを見た同僚(22)が侮辱的な言い方で勝手に降ろさないよう注意したため立腹、顔を殴るなどして骨折などのけがを負わせた。会社は同年12月、男性を解雇した。 8月25日(共同通信)


日航社員のセクハラ認定/派遣社員への賠償命じる  

日本航空で働いていた派遣社員の女性(23)が、体を触られるなどセクハラを受けたとして、日航と同社の男性社員に550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁の宇田川基裁判官は26日、77万円の支払いを命じた。  判決によると、女性は2000年4月から日航に派遣され、社史編さん事業のチームに所属。同年5〜7月に、チーム長の男性社員が食事代について「今度体で払ってもらう」と発言したり、公園に誘って肩を抱くなどのセクハラをした。  男性社員は「手を握ったことはあるが、励ますのが目的だった。(セクハラとされる)発言は冗談」と主張したが宇田川裁判官は「地位に乗じてセクハラをしており、人格権の侵害に当たる」と退けた。使用者としての日航にも賠償責任を認めた。 8月26日(共同通信)

 

(あとがき)フランスで行われていた「世界陸上」が閉幕しました。結果は、室伏(マンマー投げ)、末続(200メートル走)がそれぞれ銅メダル、女子マラソンでは、野口、千葉、坂本が、2,3,4位となりました。末続のメダル獲得は、ビジネスの世界でも示唆するところ大でしょう。日本人でスプリントは無理だ。黒人に短距離でかなう筈がない。そのような、思い込みのなかにとらわれていたら今回のような結果はなかったでしょう。女子マラソンにしても、カモシカのように長くて細い脚のキャサリン・ヌデレバ(ケニア)に、小さな野口は、決して引けの取らない走りを見せてくれました。勝手な思い込みで決め付けるのではなく、とことん考えた末のブレイクスルーが求められています。