Personnel Management Office Report 12月号 発行日:平成15年12月1日 |
永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信 |
(前書き)11月は、日立製作所、松下電器、ソニーという電機の代表的企業がそろって、一般社員に対して成果主義賃金制度を導入するというニュースが飛び込んできました。一方、多くの中小企業でも賃金制度の変革を検討しています。成果主義賃金制度と言っても実際にはそのやり方は多種多様です。只やみくもに流行にのって新しい賃金制度を導入しようとするのではなく、自社の実情と将来をよく検討した上で、しかし、かつ大胆に新しい自社に合った賃金制度の導入を考えた方が得策であると考えます。
最近のニュースから |
ソニーが手当を全廃、完全成果主義に
ソニーは2004年4月、年功給や住宅・家族手当などを廃止し、成果主義賃金に全面的に移行する。国内の一般社員約1万2000人が対象で、個人の業績や成果を反映させた「基本給」に給与を一本化する。電機業界でソニーは初めて諸手当の全廃にまで踏み込む。
電機業界の賃金相場や制度改革を先導してきた日立製作所と松下電器産業に続きソニーが年功型賃金の廃止を決めたことで、賃金制度の見直しが加速するとみられる。
ソニーの労組とこのほど合意した。同社は生産部門を別会社化しており、主に事務・研究開発などの一般社員(係長以下)が対象となる。6000人いる課長以上の管理職は2000年に同様の制度に移行済み。
(日本経済新聞 11月28日)
松坂屋がサービス残業/1億1,000万円支払い
大手百貨店の松坂屋(名古屋市)が東京の上野店で、時間外労働に対する賃金を払わない「サービス残業」をさせていたとして、上野労働基準監督署が労働基準法に基づく是正勧告をしていたことが6日、分かった。
松坂屋はサービス残業があったことを認め、店頭販売を担当する社員321人に対し、2001年7月から03年6月までの未払い分賃金の計約1億1,000万円を、10月分の給与に合わせて支払った。
本社を東海地方に置く企業では今年に入り、トヨタ自動車と中部電力でもサービス残業があったことが分かっている。
同監督署は7月30日に上野店を立ち入り検査し、8月6日に是正を勧告。これを受け松坂屋は対象者となる537人の勤務記録を調べた結果、本来の勤務時間以外に勤務したのに、直属の上司を通し報告せず、賃金を受け取っていないケースが多数みつかった。
松坂屋は銀座店など東京地区の他の職場でも残業の状況を調べる一方、「再発防止に向け管理を徹底していきたい」と説明している。
(共同通信 11月)
今月の統計 |
日本の生産性 OECD30カ国中第19位先進主要7カ国中では4年連続最下位
社会経済生産性本部は2003年版の労働生産性の国際比較をまとめた.
OECD諸国間比較では,2001年の日本の労働生産性(就業者1人当りの付加価値)は52,408ドル(786万円)でOECD30カ国中第19位,主要先進7カ国間では1998年から4年連続最下位であった.日本は昨年の順位は第20位でランクが1つ上がったが,購買力平価の円高によるものであった.
(出典:日本労働生産性本部)
今月の判例 |
「転籍拒否で隔離、うつ病に」 化粧品会社員に労災認定
転籍を拒否したために仕事を与えられないなどの嫌がらせを受け、うつ病になったとして、化粧品メーカー「ファンケル」(本社・横浜市)の30代の男性社員2人が出した労災申請について、横浜西労働基準監督署が労災と認める決定をしていたことがわかった。社員側代理人の弁護士によると、仕事を与えられないことを理由とする申請が認められたのは極めて異例だという。
社員側によると、2人は出版部と生産管理グループに所属していた01年4月、子会社への転籍を言い渡された。2人とも拒否したところ、翌月に人事部付とする通告を受け、ついたてで区切られた社内の一角に隔離されて読書などをするよう命じられたという。
同年7月、いずれもうつ病と診断され、「会社の嫌がらせで脱力感や孤独感にさいなまれたため」として労災申請。横浜西労基署は今年8月、労災と認める決定をした。
ファンケル側は、社員2人がこの問題で慰謝料の支払いなどを求めた民事訴訟(横浜地裁で係争中)で「うつ病は業務に起因しない」と主張。労災認定への対応は、「内容についてはコメントできない」(広報部)としている。
(日本経済新聞 11月2日)
男女の賃金格差訴訟で判決/「兼松」の女性6人が訴え
男女のコース別人事による賃金格差は違法として、総合商社「兼松」(東京)の社員と元社員の女性計6人が、男性との差額など計約3億1,900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決
で、東京地裁の山口幸雄裁判長は5日、原告の請求を棄却した。
訴状などによると、6人は、1957〜82年入社で、66〜42歳の社員3人と元社員3人。兼松はもともと男女別の賃金体系だったが、1985年に男性を一般職、女性を事務職と一律に振り分けるコース別賃金制度を実施した。
6人は95年に提訴。92年4月から今年7月の結審までの賃金や一時金の差額、慰謝料などを請求し「制度自体が合理性のない性差別で、実際に男女の仕事に違いはなく賃金に格差をつける理由はない」と主張。
会社側は「男性は基幹業務、女性は補助業務を担当していた。女性は勤務地限定で採用しており、賃金格差は当時、適法だった採用手続きの結果だ」と反論していた。
兼松は、情報技術分野や食料などが主力の中堅商社で、今年3月期の売上高は約4,124億円。従業員は約600人。
男女のコース別人事をめぐっては、東京地裁が昨年2月、野村証券に対し、差別的取り扱いを禁止した99年の改正男女雇用均等法施行後もコース別で処遇したのは不合理な差別として、12人に慰謝料など計約5,600万円を支払うよう命じている。
(共同通信11月5日)
(あとがき) イラクへの自衛隊派兵、高速道路の民営化、北朝鮮外交、年金改革等々政治が揺れています。今後の日本の有り方を国民が問われているのかもしれません。大きな政府を目指すのか、小さな政府を目指すのか、覇権力のある大国を目指すのか、身の丈サイズの一小国家を目指すのか、ますます盛んな議論が必要です。