Personnel Management Office Report

2月号

発行日:平成16年2月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)一月に始まった通常国会では、去年の国会と比べても勝るとも劣らない労働・社会保障関係のいくつかの重要な法律・条約が審議される予定です。例えば、年金改正、それと併せた定年延長、日米・日韓の社会保障協定についての法案(条約案)が提出されます。日本社会の少子高齢化及びグローバル化に則した内容と言えるでしょう。

 

最近のニュースから

 

<りそな>ボーナス全廃の新給与体系 月給の2〜3割に業績給  

りそなグループは1月4日、全社員に対しボーナス(賞与)の全廃を含む新しい給与体系を4月から導入する方針を固めた。給与を職種別賃金(職務給)とインセンティブ(業績給や業績連動報酬)の2本柱にして、同じ仕事に就いていても個々の実績に応じた給与格差をつける「成果主義」を取り入れる。  新体系は持ち株会社のりそなホールディングスのほか、りそな、埼玉りそな、近畿大阪、りそな信託の傘下4銀行の全社員が対象。今月中旬から労使交渉に入る。  窓口業務などの事務職、法人担当の営業職など、社員が従事している職種ごとに給与格差を設ける。一定の勤続年数があることを条件にしていた特定職種への異動制限も原則撤廃。各手当も廃止する。インセンティブのうち業績給は、半年ごとの個人査定で決定、月給の2〜3割にする方針。  りそな銀などは現在、ボーナス支給を凍結しているが、再開の環境が整っても従来型のボーナスは廃止する。「一律数カ月支給」という考えから、業績が黒字の時に利益を配分する考えに改め、業績の回復程度に応じて夏と冬に「業績連動報酬」として支給することを検討する。  新体系の導入により、同学歴同期入社の社員間でも、職種や業績によって年収が2〜3倍違ってくることも想定している。  また査定の透明性・公正性確保のため、ポストごとの等級や給与水準を社員に開示し、社員が昇級・降級した場合、一目で分かる仕組みにする。処遇に不満な場合、社員が“提訴”し、経営陣が“判決”を下す制度も設ける方針だ。  りそなは昨年、1兆9600億円の公的資金投入を受けて、賞与ゼロを含む年収3割カットを実施するとともに、社内活性化に向けた処遇制度の抜本的な見直しを進めていた。(毎日新聞)


サービス残業で書類送検/神奈川県の住宅販売会社
 

共同通信によると、神奈川県相模原市の住宅建設販売「城南建設」が残業代などを社員に支払わなかったとして、相模原労働基準監督署は7日、労働基準法違反(サービス残業)の疑いで、社長(53)と同社を書類送検した。  調べでは、同社は2002年9月から03年4月の間、従業員15人に残業させ、割増賃金など約115万円を支払わなかった疑い。  労基署は数年前からサービス残業の改善を行政指導をしていたが、タイムカードを改ざんして改善したかのように装うなどしていたため、書類送検した。 1月7日

今月の統計
福利厚生費調査結果(2002年度)
現金給与総額が前年比減となる中で、福利厚生費は引き続き増加
福利厚生費と退職金の合計は、現金給与総額の約3分の1に相当
企業が負担した福利厚生費は、従業員1人1ヵ月平均96,755円(前年度比0.9%増)。そのうち、社会保険料等の企業拠出分である「法定福利費」は68,552円(同0.1%増)、企業が任意に行う福祉施策に要する費用である「法定外福利費」は28,203円(同2.9%増)となった。月例給与と賞与・一時金を含めた現金給与総額(558,494円)に対する比率は、福利厚生費全体が17.3%(同0.2%ポイント増)で過去最高となった。そのうち、法定福利費は12.3%(同0.1%ポイント増)、法定外福利費は5.0%(同0.1%ポイント増)であり、法定福利費の比率は前年度(12.2%)に引き続き12%を超えて、調査開始以来の最高水準となっている。
 
2002 年度 2001 年度
現金給与総額 558,494 円(▲0.6%) 562,098 円(2.1%)
福利厚生費 96,755 円(0.9%) 95,883 円(2.9%)
法定福利費 68,552 円(0.1%) 68,482 円(4.7%)
法定外福利費 28,203 円(2.9%) 27,401 円(▲1.4%)
退職金 87,283 円(8.4%) 80,495 円(16.2%)
福利厚生費+退職金 184,038 円(4.3%) 176,378 円(8.6%)
福利厚生費/現金給与総額 17.3% 17.1%
法定福利費/現金給与総額 12.3% 12.2%
法定外福利費/現金給与総額 5.0% 4.9%
退職金/現金給与総額 15.6% 14.3%
(福利厚生費+退職金)/現金給与総額 33.0% 31.4%
法定福利費/福利厚生費 70.9% 71.4%
法定外福利費/福利厚生費 29.1% 28.6%
(注)
1 .従業員1 人1 ヵ月当たりの数値。
2 .( )内は対前年度増減率
3 .四捨五入の関係上、100%あるいは合計数値にならない場合がある。
出典:(社)日本経済団体連合会
     

今月の判例


昇格と解決金1,000万円で和解/住友電工の男女差別訴訟  

共同通信によると、女性であることを理由に一般職から専門職(総合職)への登用などを拒み、昇進させないのは憲法などに違反するとして、住友電気工業(大阪市)の女性社員2人が同社と、男女雇用 機会均等法に基づく調停の不開始決定をした国に、男性社員との差額賃金など計約1億6,000万円の損害賠償を求めた訴訟は5日までに、大阪高裁(井垣敏生(いがき・としお)裁判長)で和解した。  和解条項は(1)2人を今月16日付で課長級の「主席」と係長級の「主査」にそれぞれ昇格させる(2)会社が解決金として計1,000万円を支払う(3)厚生労働大臣は調停の積極的運用に努める――など。  原告側弁護士によると、地位確認を求めていない労働訴訟の和解で昇格が実現するのは初めてで、原告側は「判決以上の大きな成果を勝ち取った」と評価している。  和解は先月24日に成立、昇格人事は今月5日付で発令された。 1月5日



「給与所得」課税は適法 ストックオプション利益 労務の対価と/横浜地裁  

共同通信によると、米国の親会社から与えられたストックオプション(自社株購入権)で得た利益を、一時所得より税率の高い給与所得とみなして課税したのは違法として、フォード・モーターズなどの日本法人の元社長ら4人が国税当局に課税処分取り消しを求めた訴訟で、横浜地裁は21日、4人の請求を棄却した。  川勝隆之裁判長は「利益は、雇用契約に基づき提供した労務の対価としての性質があり、給与所得に該当する」と判断した。  ストックオプション課税をめぐる裁判では、これまで「一時所得」との判断が続いており、「給与所得」と判断されたのは初めて。  川勝裁判長は、給与所得に当たる理由として「親会社が、原告らの提供する労務によって得られる利益を認識し、ストックオプションを与えていたというべきだ」と述べた。  訴えていたのは旧コンパックコンピュータ(現ヒューレット・パッカード)日本法人の元会長(66)とフォード・モーターズ日本法人の元社長(65)ら。  原告らは1996年ごろから2000年ごろにかけてストックオプションで得た利益を一時所得として申告。しかし、国税当局が給与所得として課税した結果、4人の税額が計約6億9,000万円高くなったとして「利益を給与とする法律上の根拠はない」と主張していた。  02年の東京地裁判決は「利益は就労の対価とは言えず、一時所得に当たる。給与所得としての課税は違法」とした。 1月21日
 

 

(あとがき) 週所定労働時間20時間以上の短時間労働者を全て厚生年金に加入させるという厚生労働省の案は、今回は見送られるようです。一方、国民年金の未加入問題は、いっこうに解決のめどが立っていません。このまま国民年金保険料が与党案通りに上がっていったら未加入者が増加します。厚生労働省は、何を考えているのでしょうか。