Personnel Management Office Report

3月号

発行日:平成16年3月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)日米・日韓の社会保障協定の成立が、ほぼ確実になって来ました。後は、お互いの国の国会での承認を待つばかりです。今回の日米の協定は、年金のみならず、医療保険についての二重加入の解消について定めていることです。将来的には、雇用保険や労災保険についても二カ国間条約により、海外で働く日本人・日本で働く外国人がすっきりした形で働ける時代が来るかもしれません。租税条約が世界中の国々となされているのと対照的に、非常に国際化の遅れた日本の社会保障制度でしたが、やっと国際化が始まって来たようです。

 

最近のニュースから

 

年金保険料、日米の二重支払い解消  

日米両国政府は20日、相手国に赴任した会社員らが公的年金や健康保険料を自国と相手国で二重払いするのを防ぐ社会保障協定にワシントンで署名した。原則として5年以内の赴任は自国の制度に、5年超の場合は赴任先の制度に加入し保険料を払うようにする。関連法案を今国会に提出し、2005年度中に発効を目指す。  公的年金などの社会保障は国籍に関係なく、住んでいる国の制度に加入することが国際的な原則。ただ日本の会社員は海外赴任したときに将来の年金額が減ることを避けるため、相手先と自国の両方の制度に加入し保険料を払う例が多い。赴任先国の保険料は企業が全額負担するケースが大半。日本から米国へ赴任している会社員は現在約5万2000人。日本企業が負担する米国での保険料は年間約600億円に達する。米国では10年以上保険料を払わないと年金受給権が発生しないので、これらの保険料の大半は掛け捨てになっていた。社会保障協定が発効すれば、5年以内の赴任は赴任先での制度加入が免除され、掛け捨てが防げる。
(2月20日 日本経済新聞)
 


日韓、年金協定に署名  

日韓両政府は17日、両国の会社員が相手国へ赴任した際に自国と相手国で公的年金保険料を二重に負担するのを防ぐ「社会保障協定」(年金協定)を締結することで合意し、ソウルで署名した。滞在期間が5年以内であれば相手国への公的年金制度加入を免除し、自国の年金制度に加入するだけにする。2005年度からの実施を目指す。協定はドイツ、英国に続き3カ国目で、近く米国とも締結する見通し。  会社員らが海外赴任する場合、自国の年金制度から脱退し、相手国の制度に加入するのが原則。しかし、滞在期間が短い場合は自国で受け取る年金額が減ったり、受給資格がなくなったりする可能性がある。こうした事態を防ぐため、赴任先と自国で保険料を二重に負担するケースが多い。 保険料は大部分を企業が負担しており、経済界は企業の国際競争力を阻害するとして各国との協定締結を望んでいる。厚労省によると、協定の対象となる会社員などは日本、韓国でそれぞれ2000人程度とみられ、日本企業で年間約6億円、韓国企業で同約14億円の二重負担がなくなる。 (2月17日 日本経済新聞

今月の統計
民営職業紹介事業所の新規求職申込み件数、求人数 及び就職件数、全て増加
平成14年度民営職業紹介事業報告の集計結果について 
厚生労働省は、民営職業紹介事業の事業運営状況について、職業紹介事業者から年度毎に提出される「職業紹介事業報告」に基づき、平成14年度(平成14年4月1日から平成15年3月31日まで)の事業運営状況について、その概要を公表した。 新規求職申込み件数、求人数 及び就職件数、全ておいて増加しているのが特徴的である。
 
1  新規求職申込件数・・・約153万件(対前年度比21.6%増)
(1 )有料職業紹介事業   1,039,951件
  (1)専門的・技術的職業   218,070件
  (2)管理的職業   91,352件
  (3)事務的職業   114,288件
  (4)その他の職業の計   616,241件
(2 )無料職業紹介事業   486,927件
2  求人数(常用求人)・・・約107万人(対前年度比16.6%増)
(1 )有料職業紹介事業   657,248人
  (1)専門的・技術的職業   264,543人
  (2)管理的職業   58,833人
  (3)事務的職業   74,464人
  (4)その他の職業の計   259,408人
(2 )無料職業紹介事業   409,968人
3  就職件数(常用就職)・・・ 約26万件(対前年度比6.6%増)
〔 就職率%〕
(1 )有料職業紹介事業   205,168件〔 19.7%〕
  (1)専門的・技術的職業   33,435件〔 15.3%〕
  (2)管理的職業   8,474件〔 9.3%〕
  (3)事務的職業   13,759件〔 12.0%〕
  (4)その他の職業の計   149,500件〔 24.3%〕
(2 )無料職業紹介事業   56,859件〔 11.7%〕
厚生労働省発表 平成16年2月13日
     

今月の判例


過重業務で事故、賠償命令/「持ち込み運転手」勝訴  

共同通信によると、トラック運転中の事故で両手足まひとなったのは過重な仕事が原因として、和歌山市の男性運転手(59)が仕事を発注した運送会社(和歌山市)に損害賠償を求めた訴訟の判決で、和歌山地裁は13日までに、ほぼ請求通り約6,900万円の支払いを運送会社に命じた。  男性は個人でトラックを所有し、運送会社から仕事を請け負う「持ち込み運転手」だったが、河田充規裁判官は判決理由で「会社の意に反して休むことができず、雇用契約に準じる使用従属関係があった」と認定。その上で「運転時間は月500時間前後に上り、男性は過重な業務のため運転中に脳内出血を発症し、事故を起こした。会社には安全配慮義務違反がある」と判断した。  男性側の稲野正明弁護士は「雇用関係のない持ち込み運転手への安全配慮義務を認めた意義深い判決」と話している。  判決によると、男性は1999年6月、大阪市内で運送会社から請け負った仕事中に追突事故を起こした。  運送会社は「控訴の方向で検討している」と話している。 (2月13日)


「給与所得」と高裁初判断 国税当局の課税適法/ストックオプション訴訟  

共同通信によると、米国の親会社から与えられたストックオプション(自社株購入権)で得た利益が「給与所得」と税額の安い「一時所得」のどちらに当たるかが争われた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は19日「労務の対価で給与所得に当たる」と判断し、国税当局の課税処分を適法とする納税者側逆転敗訴を言い渡した。  ストックオプションをめぐる同様の訴訟は、全国の地裁、高裁で約百件が係争中で、控訴審判決は初めて。一審では東京地裁の2つの部が一時所得としたが、今年1月に横浜地裁と東京地裁の別の部が相次いで逆の判断を示し、今回の判決が注目されていた。  判決理由で村上敬一裁判長は「ストックオプションの付与は職務に励み勤務を続けることを動機づけるためのもので、労務の対価に当たる」と指摘、「自社株売却で得た利益は給与所得と解される」と述べた。  昨年8月の一審東京地裁判決は「株価の推移という偶発的要因で決まる利益は、労務の対価に当たらない」として課税処分を取り消していた。  (2月19日)

 

(あとがき) 先の国会で成立した、改正労働者派遣法と職上安定法が、3月1日から施行となりました。製造分野への労働者派遣の解禁や派遣期間の延長などが改正の柱ですが、改正内容を理解して間違いのない運用をしたいところです。不明な点がありましたら、いつでも当事務所に問い合わせて下さい。