Personnel Management Office Report

4月号

発行日:平成16年4月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)桜が今まさに満開の関東地方ですが、皆さんいかがお過ごしですか。労働保険の更新の時季がまたやって来ました。また、政府管掌の健康保険に加入している事業所につきましては、この4月の健康保険の保険料の支払いから料率が1000分の11.1に変更となりますので気をつけて下さい。
 
また、今年の1月から施行された改正労働基準法、3月から施行された改正労働者派遣法に関係して、下記のニュースに載せたようにさっそく企業の対応として大きな動きが出てきました。今回の改正にのった動きは今後とも続きそうです。

 

最近のニュースから

 

トヨタ、工場に派遣社員・製造現場、まず500人  

トヨタ自動車は4月から国内工場の製造ラインに初めて派遣社員を採用する。改正労働者派遣法の施行で製造現場への直接派遣が解禁されたのを機に、派遣会社からまず約500人を受け入れる。労務費上昇を抑えながら緊急増産要員などを即座に確保する狙い。松下電器産業グループも夏にも派遣社員の受け入れを計画しており、正社員、期間従業員に派遣社員を加えた雇用形態が製造業の生産現場に広がりそうだ。  トヨタの国内12工場では現在、正社員と期間従業員合わせ約5万人が勤務しているが、国内外の新車販売好調で繁忙感が強まっている。2004年の国内生産は354万台と3年連続で前年を上回る見込み。輸出拡大に海外工場の立ち上げ支援などが重なり、生産要員は不足気味だ。  このため技術系社員の派遣などで取引のある人材派遣会社約10社の中から3−4社を選び、まず3カ月契約で計500人を高岡工場(愛知県豊田市)などの主力工場に配置する。業務は短期にノウハウを習得できる製造ラインの補助作業などが中心。成果を見ながら採用拡大を検討する。 [4月1日 日本経済新聞]  



日立、裁量労働制を事務・営業職に拡大

 日立製作所は4月1日から事務・営業職に裁量労働制を導入する。これまで裁量労働制は研究者など専門性が高い職種に適用する例が多かった。日立は若手を除く社員1万2000人に適用し、管理職を含めると全社員の5割強にあたる2万人が対象になる。社員が勤務スタイルを自由に選べるようにして組織を活性化する狙い。産業界でこれだけ大規模に裁量労働制を導入するのは初めてとみられる。  裁量労働制は実際の勤務時間と関係なく、あらかじめ決めた時間を働いたと見なし、給与を支払う仕組み。今回対象となるのは3万7000人の国内社員のうち、「主任」相当(8階級ある資格の上から6番目、大卒5―6年目程度)以上の総合職の組合員すべて。一律に35時間の残業をしたと見なして給与を払う。本人の了解を得て適用する。工場で働く技能職や庶務担当者は含まない。 (3月31日 日本経済新聞)

国会の動向
第159回国会(常会)における雇用・労働関係法の状況 
この3月で、今国会に提出予定の雇用・労務関係の法案(条約)がほとんど出揃いました。以下に、提出済みの各法案、その内容及び現在の状況を示します。年金改革を除き今のところどの法案に対しても大きな反対の動きはなく、ほぼ法案のまま可決される見込み大です。詳細については、可決成立後順次、ここで解説していく予定です。
 
法(条約)案 内容 状況(4/1現在)
日米社会保障協定 (二重払いの防止) 日本又はアメリカ合衆国で就労する者であって、協定の規定によ り合衆国年金及びメディケアの保険料を支払う者は、厚生年金保険 及び健康保険等の保険料の支払を免除する。
(年金加入期間の通算) 年金受給のために必要な最低加入期間を満たしているかどうか判 断する際に、日本及びアメリカ合衆国の加入期間を通算し、保険料 の掛け捨てを防止する。
参議院審議中
日韓社保障協定 (二重払いの防止) 日本又は大韓民国で就労する者であって、協定の規定により大韓 民国年金の保険料を支払う者は、厚生年金保険等の保険料の支払を 免除する。 参議院審議中
年金改正 給付と負担の見直し(国庫負担の引き上げ、保険料の上限の設定、給付水準の下限の設定等)、多様な生き方に対応した制度の導入(離婚時の厚生年金の分割、在職老齢年金制度の見直し、次世代育成支援の拡充等)、確定拠出年金の引き上げ、企業年金のポータビリティーの向上 衆議院審議中
労働審判法 個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下「個別労働関係民事紛争」という。)に関し、裁判所において、裁判官及び労働関係に関する専門的な知識経験を有する者で組織する委員会が、当事者の申立てにより、事件を審理し、調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み、その解決に至らない場合には、労働審判(個別労働関係民事紛争について当事者間の権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするために必要な審判をいう。以下同じ。)を行う手続(以下「労働審判手続」という。)を設けることにより、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的とする。 参議院審議中
高齢者雇用安定法
少子高齢化の急速な進展等を踏まえ、少なくとも年金支給開始年齢までは働き続ける ことができるようにするため、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による65 歳まで の雇用機会の確保、高年齢者等の再就職援助の強化等所要の措置を講ずる。 衆議院審議中
育児介護休業法 (育児休業・介護休業の対象労働者の拡大) 期間を定めて雇用される者のうち、以下のいずれにも該当する者に ついて、育児休業及び介護休業の対象に加える。
 イ 同一の事業主に引き続き雇用された期間が1 年以上あること
  ロ 子が1 歳に達する日を超えて雇用が継続することが見込まれるこ と
(育児休業期間の延長) 子が1 歳を超えても休業が必要と認められる一定の場合にあって は、子が1 歳6 か月に達するまでの休業を可能とする。
衆議院審議中
労働組合法 労働委員会の不当労働行為審査制度は、使用者による不当労働行為が行わ れた場合に、その迅速な救済を図ることにより長期的に安定した労使関係を 維持、確保するための制度であるが、審査の長期化が著しいこと、命令に対 する取消率が高いこと等の問題が生じている。 このため、審査の迅速化、的確化を図る必要があることから、審査手続及 び審査体制を整備する等の労働組合法の改正を行うこととするものである。 衆議院審議中
     

今月の判例

年金障害者に国家賠償命じる 東京地裁「放置は違憲」

 学生時代に事故や病気で重い障害を負った首都圏の元大学生4人が、当時任意加入だった国民年金の保険料を支払っていなかったことを理由に障害基礎年金を不支給とされた処分の取り消しと、一人当たり2000万円の賠償を国側に求めた訴訟の判決が24日、東京地裁であった。藤山雅行裁判長は「障害を負った学生が保険給付を受けられるよう立法的手当てをしないまま放置したことは法の下の平等を定めた憲法に違反する」と述べて国に計1500万円の賠償を命じた。  同様の訴訟は、この訴訟も含め計30人が札幌や福岡など全国9地裁に起こしており、この日の判決が初の判断となった。  判決によると、学生は、89年に国民年金法が改正されて強制加入の対象になるまでは任意加入だった。このため、当時、学生の加入率は1〜2%に過ぎず、学生時代に国民年金に任意加入しないまま、成人になってから重い障害を負った場合は、障害基礎年金の支給を受けられなかった。  判決は、障害基礎年金制度が創設された85年の同法改正に着目。当時は大学進学率が高まっており、障害を負った時期が20歳の前か後かで支給の可否が分かれる学生の人数も急拡大していた事情を踏まえずに、「国が何らの措置も講じなかったことは憲法違反だ」と結論づけた。  4人はいずれも障害1級で、年金の支給対象になれば月額約8万4000円を受け取れるが、現在はほぼ無収入の状態。4人のうち、脳腫瘍(しゅよう)の障害を抱える岡村佳明さん(39)については、診断日が22歳だったが、発症は20歳以前だったと判断し、不支給処分そのものを取り消した。ほかの3人に対しては、各500万円を支払うよう国に命じた。  厚生労働省の推定(02年7月時点)では、4人と同じように障害基礎年金の支給を受けていない人が全国で約4000人もいるという。 (03/24 朝日新聞)


 

(あとがき) 若干もたついていた今年の税制改正もやっと国会で可決・成立しました。住宅ローン減税の延長、長期譲渡所得の税率の引き下げ、公的年金課税の強化など内容は盛りだくさんです。改正内容の詳細につきましては、財務省のホームページに掲載されています。