Personnel Management Office Report

10月号

発行日:平成16年10月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)ストライキと言う言葉が各新聞一面で一斉に大きく扱われたのは、実に久しぶりのことだったのではないでしょうか。もちろん、日本のプロ野球のことです。真の顧客であるファンの大多数がどちらを支持したのかは各種世論調査が明らかにしています。オリックスと近鉄の合併計画から端を発した今回の騒動は、企業経営についての多くの示唆を与えていると感じたのは私だけでしょうか。経営に行き詰まったときに、実は自分の視野の中の手が届く範囲内のみの解決策であるにもかかわらず、それが最高の策である、それ以外に他の方法がないと思い込んでしまうことがあるのではないかと。自分の会社や自分の製品を自分以上に大切に思っていて解決策について色々考えている人間達が実はいた。それが、従業員であったり、顧客であった。「経営に愛を」などと言うと宗教がかって聞こえますが、そのようなことを思い起こさせる今回のプロ野球の騒ぎでした。


 

最近のニュースから

 

昨年度のサービス残業代238億円、1184社に是正指導  

 残業したのに割増賃金を支払わない、いわゆるサービス残業で、2003年度に労働基準監督署の是正指導を受けた企業は全国で1184社となり、残業代の支払総額は238億7466万円に上ることが27日、厚生労働省の調査で分かった。指導された企業の平均支払額は2016万円、1人当たり平均は12万円だった。  調査は労基署が立ち入り指導した際に、1社当たり100万円以上の不払いが見つかったケースが対象。  厚労省は前回、2002年10月―2003年3月の半年間を対象に同様の調査をしており、その期間の支払総額は72億円。今回はこれを大きく上回るペースで、同省は「依然としてサービス残業は広がっている」とみて指導を徹底する。


政府、ベルギーと社会保障協定・週内合意へ  

 日本、ベルギー両政府は14日、社会保障協定の今週内の実質合意へ最終調整に入った。保険料の二重払いを防ぎ、年金加入期間の相互通算を可能にする。ベルギーに拠点を置く日本企業は200社を超えており、協定により年40億円程度の負担減になる。来年初めに署名、それぞれの国内手続きを経て2007年中にも発効する見通し。締結はベルギーで5件目。  現在、日本企業の邦人社員がベルギーに派遣されると両国で保険料を払う。ベルギーでの支払い分は企業が負担する場合が多い。今回の協定で5年以内の駐在者はベルギーで制度適用を免除される。同国の年金、医療保険、労災保険、雇用保険が対象で保険料率は合計38%(雇用主25%、本人13%)。年金制度の加入期間は両国分を合計できるようにする。


日加社会保障協定(仮称)締結に向けた第1回交渉の開催について

平成16年9月3日 日加社会保障協定(仮称)締結に向けた第1回交渉は、10月4日(月)から7日(木)まで、オタワ近郊にて開催される。 この交渉には、わが国から山上信吾外務省北米局北米第二課長、西村淳厚生労働省年金局総務課国際年金企画室長ほか外務省、厚生労働省、社会保険庁の関係者が、カナダからタマーニョ社会開発省次官室特別顧問ほか関係者がそれぞれ出席する。 現在、日加両国からそれぞれ相手国に派遣される被用者等に対し、日加双方の社会保障制度への加入が義務付けられることによる社会保険料の二重払い等の問題が生じており、個人および企業に大きな経済的負担となっている。  日加社会保障協定は、この社会保険料の二重払いの問題等を解決することを目的としている。

今月の判例


セクハラ予防せず賠償命令 二審も会社敗訴、広島高裁  

 共同通信によると、上司2人によるセクハラ(性的嫌がらせ)を防止する義務を怠ったとして、山口県の女性(47)が当時勤務していた大分県の会社に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁の草野芳郎裁判長は2日、会社に慰謝料など55万円の支払いを命じた一審・山口地裁下関支部判決を支持、会社側の控訴を棄却した。  草野裁判長は「会社は公的機関から指摘されるまでセクハラ防止の具体的措置を講じなかった」と認定。その後の対策についても「総務部長が会議で注意した後、出席者の管理職2人がセクハラをしており、会社の措置は予防効果がなかった」と指摘した。  判決によると、女性は山口営業所に勤務していた2000年10月ごろから、上司から性的中傷を受け、別の上司からもわいせつなメールを10数回送信されたり、勤務中に抱きつかれるなどした。  会社は同年9月、公的機関から「支店や営業所でセクハラがあるようだ」と指摘され、翌月の社内会議で注意喚起。上司2人は会議に出席していたが、セクハラをした。  会社側は「セクハラ禁止は公知の事実。会社が指摘するまでもなく、個人の責任問題であり会社に責任を帰するのは不当だ」と主張していた。 (9月2日)    


採用50日、過労死と認定 雑誌制作会社に賠償命令

 
同通信によると、雑誌の制作会社でアルバイトを始め約50日で急死した大阪府枚方市の廣瀬勝さん=当時(21)=の母親らが、勤務していた「ジェイ・シー・エム」(東京)に計約1億1,500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は30日、計約4,700万円の支払いを命じた。  二本松利忠裁判長は判決理由で「長時間の時間外労働で十分な睡眠をとれず疲労が蓄積していた。会社は適正な労働条件を確保する注意義務を怠った」と指摘し、廣瀬さんの過労死を認めた。  判決によると、廣瀬さんは1996年4月、中古車情報誌を制作する同社大阪支店に編集のアルバイトとして採用され、記事と写真の照合作業などを担当。1カ月の残業が約90時間になるなど長時間労働が続き、採用から約50日後の同年6月に自宅で死亡した。死因は虚血性心疾患と推定された。  ジェイ・シー・エムは「判決を厳粛に受け止めている。判決の詳細を検討中で、今後のことについて申し上げることはできない」としている。


(あとがき) アテネで開催されていたパラリンピックも閉会となり、オリンピッと同様、日本の獲得メダル数が過去最高となったようです。パラリンピックの選手のほとんどは、実は、一般の健常者の大部分の者よりも速く走ったり、泳いだり、俊敏であったり力があります。自分の経営が思いどうりに行かない時には、とかく言い訳を考えやすくなります。後発だったから、役所との繋がりがないから、場所がよくないから等々。パラリンピックは、経営の上で本当のハンディーとは一体何なのかを考えさせるイベントでもあります。