Personnel Management Office Report

12月号

発行日:平成16年12月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)厚生年金の保険料率が、11月支払い分(10月分保険料)から上がりしました。皆様の事業所では間違いのない処理が出来たものと思います。今開かれている国会で、ADR法案が可決成立しました。これは、裁判外での紛争解決処理を法務省が認証を与えた民間機関でも可能にする法律です。各都道府県社会保険労務士会は、労使紛争解決の民間認証機関としての申請をする予定です。また、まだ、確定していませんが、社会保険労務士が、民間認証機関における紛争解決のための斡旋代理権を取得出来る見込みです。同法の施行は、2007年の前半になりそうです。

 

最近のニュースから

 

東電で2800人がサービス残業、14億円超を精算へ  

東京電力(本店・東京都千代田区)が、本店の社員約2800人に賃金不払い残業(サービス残業)を行わせていたとして、中央労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが18日、分かった。同社によると、未払い賃金の総額は今年6月までの2年間で約14億4100万円に上り、社員1人当たりでは約51万円(約147時間分)になる計算。同社は今月22日に全額を支給する。  東電によると、同労基署から勧告を受けたのは今月16日。社員はパソコンを使って時間外勤務を自己申告しており、営業部門や原子力担当部門を中心に、実際より短い時間が申告されていたという。同社広報部は「勧告を厳粛に受け止め、労働時間の適正管理を徹底したい」としている。  労基署の指導により、サービス残業分の巨額精算が行われたケースとしては、中部電力の約64億円、武富士の約35億円(いずれも昨年)などがある。 (読売新聞) - 11月18日


日本の生産性 OECD30ヵ国中第18位 製造業は、22ヵ国中第3位
2002年の労働生産性の国際比較 

社会経済生産性本部は、2004年版の労働生産性の国際比較をまとめた。主な結果は、以下の通り。
1.2002年の日本の労働生産性(就業者1人あたりの付加価値)は、54,264ドル(792万円)でOECD30ヵ国中第18位、主要先進国では最下位であった。新データで計算しなおしたものによれば日本は昨年と同順位であった。
2.OECD加盟国中、上位は、ルクセンブルク(1位)、米国(2位)、アイルランド(3位)、ベルギー(4位)
であり、最下位は、トルコであった。

法改正情報

高年齢者雇用安定法(平成16年12月1日施行)


 
高年齢者雇用安定法の一部(中高年齢者の再就職の促進)が、12月より施行されました。その内容は、以下のようです。

 @ 労働者の募集・採用について、やむを得ない理由により事業主が上限年齢を設定する場合には、求職者に対して、募集及び採用の際に使用する書面又は電磁的記録(求人者が職業紹介事業者等を利用する場合に提出する求人申込書等を含む。)により、その理由の提示しなければならない。
 A 事業主都合で離職を余儀なくされる高年齢者等に対して、事業主がその職務経歴や能力等を記載しいた書面を交付することを求める。
 B シルバー人材センターが臨時的かつ短期的な又は軽易な業務に係わる労働者派遣事業を行う場合について、特例(許可を届出とする)を設ける。
 
定年の引き上げ、継続雇用制度の導入については、18年4月1日施行です
詳細については、最寄のハロー・ワーク(公共職業安定所)にお尋ねください。

今月の判例


「笑顔ない」と解雇は無効 女性介護員勝訴、札幌地裁  

 共同通信によると、笑顔がないことを理由に契約更新しなかったのは違法として、札幌市中央区の「宮の森病院」の女性介護員(27)が、病院を経営する医療法人「恵和会(けいわかい)」(山田惟好理事長)に地位確認などを求めた訴訟の判決で、札幌地裁は10日、解雇を無効として恵和会に慰謝料など25万円と、未払い賃金の支払いを命じた。   小川雅敏裁判官は「恵和会は女性に笑顔がないことを問題にしているが、主観的な事柄で契約更新を拒絶する理由としては合理性に疑問がある」と述べた。   判決によると、恵和会は1998年に女性を1年の雇用期間で採用。毎年契約を更新していたが、「笑顔がない」「患者や他の部署から苦情が出ている」などとして契約を更新せず、2002年8月に退職扱いにした。   女性側は訴訟で「合理性のない解雇は権利の乱用」と主張。恵和会側は「定められた手続きを経ており問題ない」などとしていた。 11月10日


1億 5,000 万円支払いで和解 味の素が発明の元社員と 
確定特許権訴訟で最高額 人工甘味料めぐり東京高裁

 共同通信によると、清涼飲料水などに広く使われる人工甘味料「アスパルテーム」の製造法を発明した「味の素」(東京)の元中央研究所プロセス開発研究所長、成瀬昌芳さん(63)が、会社に特許権譲渡の対価の一部として約6億 9,000 万円の支払いを求めた訴訟は 19 日、味の素が和解金1億5,000万円を支払うことを条件に、東京高裁(北山元章裁判長)で和解した。   成瀬さん側の弁護士によると、特許権対価をめぐる大型訴訟で和解は初めて。特許権訴訟で確定した支払額としては過去最高となった。  1月には青色発光ダイオード(LED)の特許権対価をめぐる訴訟の判決で、東京地裁が会社側に 200 億円の支払いを命じており(会社側が控訴)、社員の発明に対する企業側の対応に大きな影響を与えそうだ。   一審東京地裁は2月、発明で味の素が得た利益を約 79 億7 ,000 万円と算定。成瀬さんの貢献度は2.5 %と評価し、受け取り済みの報償金を差し引いた約1億8,900万円の支払いを味の素に命じた。   味の素と成瀬さんの双方が控訴したが、東京高裁が 10 月「1億 5,000 万円を支払う」とする和解案を提示したのを受け、4回の協議を重ねていた。   和解の理由について、成瀬さん側の弁護士は「味の素の主張よりも貢献度が認められ、大きな成果があったほか、健康上の不安から訴訟の継続が難しいため」と説明。味の素は「一審判決で主張がほぼ認められているほか、同種訴訟では控訴審で減額された例がないため」としている。   成瀬さんは 1982 年、良質なアスパルテームの効率的な製造法を同僚と発明。味の素は 2001 年までに成瀬さんらに報償金計 1,200 万円を支給し、成瀬さんがうち1,000万円を受け取った。   アスパルテームは砂糖の約 200 倍の甘みがある低カロリー甘味料で、味の素は「パルスイート」の商品名で小売りしたり、他メーカーとのライセンス契約などで高収益を上げている。 11月19日


(あとがき) 米国大統領にブッシュ氏が再選されました。米国のイラク政策にしばらくは大きな変化はないと思われます。一方、米国の拡大するいわゆる双子の赤字(財政、貿易)により、最近、円高・ドル安傾向に振れています。一方、ユーロ高も進んでいます。これらが、一時的な現象か、新たな段階に入るのか専門家の間でも意見の分かれているところです。