Personnel Management Office Report 3月号 発行日:平成17年3月1日 |
永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信 |
(前書き)新卒社員を予定している企業の人事部本では、4月から新入社員の受け入れのために色々とあわただしいことと思いますがいかがでしょうか。又、来月より雇用保険率が変更(一般の事業所では、17.5/1000
から 19.5/1000)されます。また、介護保険料率も3月分(通常は、4月徴収分)から変更(5.55/1000
から 6.25/1000)になります。気をつけて下さい。
一方、今回の記事にも載せておきましたが、最近の労働基準監督所の調査がかなり活発に行われています。主なねらいは、未払い残業の摘発です。年俸制の名のもとに、管理監督者でない従業員にも残業代を未適用としている事業所は特に注意が必要ですね。
行政 |
日・仏社会保障協定の署名について
「社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定」(日仏社会保障協定)の署名が、2月25日(金)、パリ(フランス外務省)において、平林博駐フランス大使とジャン=ピエール・ラフォン(Jean-Pierre
Lafon)外務次官との間で行われた。 現在、わが国の企業等からフランスに一時派遣される被用者等について、日仏双方の社会保険制度への加入が義務付けられることによる社会保険料の二重払い等の問題が生じており、企業および被用者等に大きな経済的負担となっている。
日・仏社会保障協定は、これらの問題を解決することを目的として、日本とフランスの社会保険制度の適用の調整を行うものであり、派遣期間が5年以内の一時派遣被用者は、原則として、派遣元国の社会保険制度にのみ加入することとなる。
この協定の締結により、企業および被用者等の負担が軽減され、両国間の人的交流・経済交流が一層促進されることが期待される。
同様の協定の署名が、2月23日に、ベルギーとの間でもなされている。
実際の施行は、両協定とも来年中になる見通し。
サービス残業代30億支払い 人材派遣スタッフサービス 幹部ら数人、書類送検へ 大阪労働局
共同通信によると、人材派遣会社最大手「スタッフサービス」(グループ本部・東京)が、サービス残業をさせた全国の社員と退職者計約4,000人に対し、過去2年間にさかのぼって総額約
30億円の未払い残業代の支払いを始めたことが
24日、分かった。 大阪労働局は同日、同社が組織的にサービス残業をさせた疑いが強まったとして、労働基準法違反(割増賃金不払いなど)の疑いで、持ち株会社「スタッフサービス・ホールディングス」(東京)を家宅捜索。既に岡野保次郎会長と中山堯社長から数回にわたり事情を聴いており、近く同容疑で法人としてのスタッフサービスと幹部数人を書類送検する。
関係者によると、スタッフサービスの就業規則では労働時間は午前9時から午後5時半までと定められているが、大阪本社で労働時間が実質的に
13時間を超え、土曜、日曜の出勤も恒常化するなど全国で長時間労働とサービス残業が行われていたという。
大阪本社は既に2002年4月から2004年3月までの未払い残業代として、退職者約
230人を含む約 400人に計約3億円を支給。スタッフサービスは今後、全国の事業所でサービス残業の実態を調査し、確認できた分から支払うという。
2003年に自殺した大阪本社の元副支店長の男性=当時(32)=の遺族が
2004年4月、「自殺は長時間労働を強いられたため」として、労基法違反の疑いで、スタッフサービスとスタッフサービス・ホールディングスを天満労働基準監督署(大阪市)に告発。大阪労働局が同年5月に東京のグループ本部など3カ所を家宅捜索するなどして勤務実態を調べている。
2月25
ビックカメラを書類送検 残業代不払い1億2千万円
共同通信によると、社員に不払い残業を続けさせていたなどとして、東京労働局は
25日、労働基準法違反(割増賃金不払いなど)の疑いで家電量販店大手ビックカメラ(本部・東京都豊島区)と新井隆司社長(58)ら役員八人を東京地検に書類送検した。
労働局はこれまでの捜査で、不払い額は1億2,000万円あまりに上り、新井社長ら役員が不払いを指示していたと認定した。著名企業の社長が同容疑で立件されるのは異例という。
調べによると、ビックカメラは2003年 12月〜2004年
11月に東京の池袋本店や新宿西口店で、フロア責任者ら主任職計
110人に対し総額1億2,700万円の残業代を期日までに支払わなかった疑い。
また 2004年4月〜 11月には、約 280人の社員らに労使協定で定めた残業限度時間(
80〜 110時間)を超えて残業させたという。
東京労働局はビックカメラ元社員からの告発を受け調査。昨年
11月 25日、この元社員に計 185万円の残業代を支払っていなかった疑いで家宅捜索し、実態の解明を進めていた。
2月25日
今月の統計 |
企業負担の福利厚生費、4.5%増加/日本経団連調査
日本経団連は1月28日、2003年度の福利厚生費調査の結果を発表した。
企業が負担した従業員1人あたりの福利厚生費は月平均10万811円。前年度に比べて4.5%増え、初めて10万円台に乗った。このうち社会保険料などの企業拠出分である「法定福利費」は7万2,853円(6.3%増)、企業が任意に行う福祉施策に要する「法定外福利費」は2万7,958円(0.9%減)。
第1表 現金給与総額と福利厚生費(全産業平均)
2003年度 | 2002年度 | |
現金給与総額 | 565,935 円(1.3%) | 558,494 円(▲0.6%) |
福利厚生費 | 100,811 円(4.2%) | 96,755 円(0.9%) |
法定福利費 | 72,853 円(6.3%) | 68,552 円(0.1%) |
法定外福利費 | 27,958 円(▲0.9%) | 28,203 円(2.9%) |
退職金 | 92,037 円(5.4%) | 87,283 円(8.4%) |
福利厚生費+退職金 | 192,848 円(4.8%) | 184,038 円(4.3%) |
福利厚生費/ 現金給与総額 | 17.8% | 17.3% |
法定福利費/ 現金給与総額 | 12.9% | 12.3% |
法定外福利費/ 現金給与総額 | 4.9% | 5.0% |
退職金/ 現金給与総額 | 16.3% | 15.6% |
(福利厚生費+退職金)/ 現金給与総額 | 34.1% | 33.0% |
法定福利費/ 福利厚生費 | 72.3% | 70.9% |
法定外福利費/福利厚生費 | 27.7% | 29.1% |
今月の判例 |
閑職30年、報復人事と認定 「正当な告発に法的保護」 トナミ運輸内部告発訴訟
共同通信によると、トラック運輸業界の不正を内部告発したため約
30年間、閑職に追いやられているとして大手運輸会社「トナミ運輸」(富山県高岡市)の会社員串岡弘昭さん(58)=同市=が同社に謝罪と約
5,400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、富山地裁は
23日、「処遇は報復であり、人事権の裁量を逸脱する」と串岡さんの主張を大筋で認め、同社に約1,360万円の支払いを命じた。原告が請求した謝罪文は認められなかった。原告は控訴する方針。
内部告発をめぐっては通報者の不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法が成立。2006年4月の施行を控え、司法が救済の場となることを示した。
判決理由で永野圧彦裁判長は、串岡さんが業界の運賃水増しなどの闇カルテルがあるとして行った内部告発は公益性があると指摘。「正当な内部告発は法的保護に値し、不利益な取り扱いをするのは違法」と同社を批判した。
損害賠償については、会社は適切な人事権を行使する義務を怠り雇用契約に違反していると判断したが、提訴した
2002年1月より過去 10年を超える請求については損害賠償請求権の時効が成立しているとして退けた。
串岡さんは 1973年、運賃水増しなどの闇カルテルをやめるよう会社幹部に直訴。無視されたため
1974年7月、新聞社に情報提供した後、公正取引委員会などにも告発。
判決は、会社が 1975年10月に串岡さんを同県南砺市の教育研修所に異動させてからの約30年間の処遇を、基本的には会社による不利益な取り扱いと認定した。しかし、1992年6月に同県大門町の新教育研修所に移ってからは「原告に不利益な処遇は内部告発が理由だが、原告に対する正当な評価も含まれている」とした。
会社側は、処遇は内部告発に対する報復ではなく、人事権の裁量の範囲内として請求棄却を求めていた。
2月23日
(あとがき) 前回の国会で成立したADR促進法に伴い、改正社会保険労務士法案が今月中に国会に提案される予定です。個別、団体における労使紛争のいずれにおいても裁判外での紛争解決の代理人としての役割が期待されています。これにより、事業主、労働者ともに、法律に則って労使紛争を妥当な形で解決していくことがぐっと身近になるものと思います。