Personnel Management Office Report

8月号


発行日:平成17年8月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)マクドナルドのような規模も大きく日本国内での歴史も古い企業が単純な労働基準法違反をしていて労働基準監督署に指摘をされていたというニュースが流れてきました(「最近のニュースから」参照)。労務については、内部・外部ともに専門家を抱えているはずであるのに誰も気が付かなかったということはないでしょう。「今までやってきて何も問題が起きなかったから大丈夫だろう。」と考えてきたものと思います。労務の担当者にとって、問題が起きる前に是正することはある意味非常に労力のいることです。しかし、その労力は大きな意味があるということを今回のニュースでは気が付かせてくれます。

 

最近のニュースから

 

<マック>勤務30分未満切り捨て 2年間の未払い分返還  

日本マクドナルドホールディングス(HD)は1日、アルバイトの勤務時間と社員の時間外勤務について、これまで30分未満の部分を切り捨てて計算し、その分の賃金を支払っていなかったと発表した。厚生労働省は月間の総労働時間全体から30分未満の部分の切り捨ては認めているが、同社は毎日の労働時間から30分未満の分を切り捨てていた。同社はアルバイトや社員約10万人に、過去2年間分の未払い分を返還する。  同社によると、5月下旬に兵庫県内の労働基準監督署から「社員の超過勤務手当の計算方法が不適切だ」と改善を求められた。全国3771店で同様の方法で労働時間を集計していたため、同社はとりあえず直営店で1日から労働時間を1分単位で計算することに改めた。30分未満の部分の切り捨てについて、同社は「時期は不明だが、以前から行われていた」(広報)と説明している。  直営2725店で働くアルバイト約9万1000人、社員約4600人に対して、労働基準法の規定に基づき、過去2年間の未払い分を支払う。 (毎日新聞) - 8月1日


トヨタ、再雇用65歳に拡大 06年度から全社員対象に 
定年人材活用へ基準明確化 高齢化社会到来に対応  

共同通信によると、 トヨタ自動車は 16 日、厚生年金の支給開始年齢引き上げに合わせ、 60 歳の定年退職後の再雇用制度で働ける年齢を 2006 年度以降、現在の「 63 歳まで」から段階的に「 65 歳まで」に引き上げる方針を明らかにした。   同時に、工場で働く技能職に限定している定年退職者の再雇用制度を 2006 年度から全社員に拡大して適用。健康状態や、最近数年間の勤務状況といった再雇用の基準となる条件も明確化させ、グループ企業での再就職も含め、希望者のほとんどの就労を確保する。   産業界は、 2007 年から始まる団塊の世代の大量退職に伴い、企業に伝わる技術やノウハウの伝承に支障が出かねない「 2007 年問題」に直面している。日本経団連会長会社のトヨタが定年を迎えた社員の積極活用に動くことで、高齢化社会の本格到来に向け、他の企業でも高齢者の職場確保への取り組みに拍車が掛かりそうだ。 7月16日

今月の統計

精神障害等の労災補償状況

厚生労働省は、このほど、「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況(平成16年度)について」を発表した。
その中で、鬱病などの精神障害に係るものの統計は以下の表のように請求件数、認定件数ともに増加した。

(件)

年度 平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度 平成16年度
区分
精神障害等 請求件数 212 265 341 447 524
認定件数 36 70 100 108 130
うち自殺 (未遂を含む。) 請求件数 100 92 112 122 121
認定件数 19 31 43 40 45


 注) 1  認定件数は当該年度に請求されたものに限るものではない。     2  平成11年9月に精神障害等の判断指針が策定されている。

上記の統計については詳細は、以下のURLにて見ることが出来る。

"http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/06/h0617-1.html"

今月の判例

成果主義で手取り2万円、これでは家族を養えない 

 
52歳会社員が仮処分申請  営業成績によって増減する給与制度で、六月の手取り額が約二万二千円となった富士火災海上保険(東京)の男性社員(52)が十五日、生存権を定めた憲法に違反するなどとして、三−五月の平均給与約二十一万九千円などの支払いを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。  申立書によると、男性は勤続二十三年の営業担当。成績が悪いと給与が一定割合で差し引かれる同社の制度で、六月の給与は額面十一万五千円となった。所得税や社会保険料などが控除され、約二万二千円しか支給されなかった。  富士火災海上保険は平成十二年から、成果主義の「増加精算金制度」を導入。昨年には住宅手当なども廃止したという。男性は「給料の振込額を見た妻から『間違いではないか』と言われ、ショックだった。これでは家族を養えない」と話した。 (産経新聞) - 7月16日

 

(あとがき) アスベストによる被害についての報道がここのところ後を絶ちません。労働安全衛生上有害であるとしてその使用には数十年前から色々と制限がありましたが、今までは、労働者・労災の問題としてだけ取り上げられ、今になってやっと国民全体の問題であることが認識された形になりました。「水俣」、「薬害エイズ」、「狂牛病」等々と行政、産業界、学会、政界とが絡み合った問題を日本は幾たびとなく経験してきています。このようなことが繰り返されるのは、日本の国の基本的制度上の問題があるのではないかと思われます。