Personnel Management Office Report

11月号


発行日:平成17年11月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)11月は、全国各都道府県の労働局で、「賃金不払残業解消キャンペーン月間」と称して残業代不払い撲滅の活動をさらに進めていくようです。労働基準監督署による各企業への立ち入り検査もさらに増加すると思われます。これを機会に、賃金制度の見直し、裁量労働制の導入などを検討していくのもよいかもしれません。

 

最近のニュースから

 

<残業代未払い>マック店長が支払い求め提訴へ  

日本マクドナルドホールディングスが従業員に対し、30分未満のアルバイト料や残業代を支払っていなかった問題に絡み、群馬県新町在住の店長、高野広志さん(44)が4日、東京都内で記者会見した。「実態は管理職ではないのに管理職とされ、残業代が支払われないのは労働基準法違反」などとして、同社を相手に2年間の未払い分計五百数十万円の支払いを求め、来月にも提訴することを明らかにした。  高野さんや東京管理職ユニオンなどによると、高野さんは00年12月から店長となり、今年2月からは埼玉県北部の直営店に勤務。月70〜100時間の残業があるにもかかわらず、時間外手当が支払われていないといい、店長に昇格する前に比べ、年収が約300万円も減ったという。  労働基準法は時間外勤務に対する割増手当の支払いを企業側に義務付けているが、管理監督者は適用除外。同社は高野さんら店長について、(1)出・退勤時間の自由裁量がある(2)人事権がある(3)報酬が高額――を理由に管理監督者として扱っているという。  高野さんは「残業が月100時間にも及ぶ実態は、勤務時間に裁量がない事実を示している。人事権はアルバイトの採用のみで、年収は約600万円に過ぎない」と反論している。 (毎日新聞) - 10月4日


古河電工、賃金14億円未払い・1700人がサービス残業  

古河電気工業は28日、2003年10月からの2年間、当時、間接部門に勤務していた約1700人が時間外賃金なしのサービス残業をしていたとして、未払い賃金計約14億2000万円を支払うと発表した。  労働基準監督署から今年7月ごろ、本社(東京・千代田)と千葉工場(千葉県市原市)、平塚工場(神奈川県平塚市)の各事業所が個別指導を受けて判明した。現時点で分かっているサービス残業時間は合計で68万7000時間。1人あたりの平均未払い額は約80万円強になる。  現在、約3900人の調査対象者のうち、出向者や既に退職した社員900人分を調査・集計しており、最終的な未払い額の合計は17億円程度になる見通し。今回の事態を受けて、執行役員を含む社内役員が11月分の報酬を10%返上する。  古河電工の奥田志郎副社長は会見で、サービス残業が発生した理由について「残業時間を一定時間内に収めるための社内目標を設定をしていたのが原因の1つかもしれない」と説明。ただ、「会社側が社員に過少申告を強制していたわけではない」と強調した。 (日本経済新聞) 10/29

今月の判例


時間外手当、基本給に含む場合も 東京地裁が判断示す

 モルガン・スタンレー証券会社(東京)に勤めていた男性が、時間外手当を支払うよう同社に求めた訴訟で、東京地裁は19日、「一定の条件下では、時間外労働の対価は基本給に含まれて支払われたと言える」との判断を示し、請求を棄却する判決を言い渡した。労働実務では、88年に最高裁判決が認めた「基本給に含まれると言うには、基本給のうちいくらが時間外手当かがはっきりしていなければダメ」との考え方が支配的だったが、その実質的な例外を初めて明示したとみられる。  判決によると、原告は40代で、98年に入社。就業規則上の労働時間は平日の午前9時〜午後5時半だったが、02〜04年には毎日、午前7時半ごろからミーティングに参加していた。原告は解雇された後の04年、時間外手当計約800万円の支払いを求めて提訴した。  判決理由で難波孝一裁判官は(1)原告の給与は労働時間数によってではなく、会社に与えた利益などによって決まっていた(2)同社は原告の勤務時間を管理しておらず、原告は自分の判断で働き方を決めていた(3)基本給だけで月額183万円を超えており、時間外手当を基本給に含める合意をしても今回のケースでは労働者の保護に欠ける点はない――と指摘。こうした場合は、基本給の中に時間外手当が含まれているとしても、サービス残業を助長するようなおそれはなく、時間外労働に対して割増賃金を支払う義務を定めた労働基準法に違反しないと述べた。  経済界などからは、労働時間についての厳格な考え方に異議を唱え、原則1日8時間労働の規制をホワイトカラーの一部には適用しないようにする制度を導入すべきだとの議論も出ている。判決はこうした議論に影響を与える可能性もある。 朝日新聞 10・20 


米州政府の裁判免除認めず 東京地裁「商業は対象外」  

共同通信によると、米国ジョージア州港湾局日本代表部(東京)の日本人元職員が「契約職員になることを拒否したことを理由に解雇したのは違法」として、州政府側に解雇無効と未払い賃金の支払いを求めた訴訟で、東京地裁は 29 日、日本での裁判免除を求めた州政府の主張を退ける中間判決を言い渡した。   今後は解雇の当否などについて審理し、終局判決が言い渡される。原告代理人の弁護士は「外国の政府相手の雇用訴訟で裁判免除を退けたのは初めて」としている。   訴えていたのは 2000 年秋に同代表部を解雇された小原澄江さん(51)。   判決理由で中西茂裁判長は、商業活動などは国家の行為でも裁判免除にはならないとする「制限的主権免除」の考えを採用。「原告の職務内容は商業に関連するもので、雇用目的も日本での商業活動拡大にある。解雇は(裁判が免除される)主権的行為ではない」とした。   判決によると、同代表部は商取引振興を目的とした港湾局の出先機関。小原さんは 1995 年、正職員として採用されたが、ジョージア州政府は財政難を理由に事務所の縮小を通知。小原さんに契約職員となるよう申し入れたが拒否されたため解雇通告した。 9月 29


うつ病で自殺、労災と認定 会社が厳しいしっ責で圧迫

共同通信によると、道路舗装大手、前田道路の東予営業所(愛媛県)の所長だった男性=当時(43)=がうつ病で自殺したのは、過大な売り上げ目標を達成できず上司からどう喝的なしっ責を受けた心理的な圧迫が原因などとして、新居浜労働基準監督署は 27 日までに労災と認定した。 代理人の弁護士によると、男性は 2003 年4月、営業成績の著しく悪い東予営業所の所長になった。営業所を統括する四国支店(高松市)の上司は毎日早朝に「その日の工事出来高予定」を報告させ、厳しいしっ責を続けた。 さらに自殺直前の会議では、支店の上司らから「能力がない」「会社を辞めろ」「会社を辞めても楽にはならないぞ」などと約2時間にわたり、ののしられた。男性は 2004 年8月にうつ病を発症。翌月、営業所敷地内で首つり自殺した。 男性は 2004 年8月以降、午前6時半ごろ出勤し、午後8時半ごろ退社する長時間労働が続いたが、出勤簿には午前8時出勤、午後6時退社と記載することを強制されていた。また会社と下請け業者との間で板挟みになり、業者への工事代金 150万円の支払いを個人の預金から立て替え払いしていた。 男性の妻岩崎洋子さん(43)が 2004 年 12 月に労災申請。洋子さんは 27 日記者会見し、損害賠償請求訴訟を前田道路相手に起こすことを検討していることを明らかにした。 10 月 28日  


(あとがき) 郵政民営化法案の影で目立ちませんが、今回の臨時国会で、労働安全衛生法が改正されました。変更点はいくつかありますが、@事業者は、一定以上の時間外労働等を行った労働者を対象とした医師による面接指導等を行うこと A単身赴任者の赴任先住居・帰省先住居間の移動、複数就業者の事業場間の移動を、通勤災害保護制度の対象とすること、の2点があったと言うことをここではお伝えしておきましょう。