Personnel Management Office Report

5月号

発行日:平成18年5月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)5月から、新会社法が施行されました。最低資本金制度の撤廃、有限会社がなくなり、取締役1人でも株式会社を設立することが出来るようになりました。今まで、会社法(商法)の改正と言うと、とかく大会社を対象にしたものが多かった感がありますが、今回は、中小企業にも大きく影響を与えるものになりそうです。

 

最近のニュースから

 

時間外賃金の精算、1億5千2百万円 東邦ガス  

東邦ガス(梶jでは、昨年12月に、名古屋東労働基準監督署から労働時間管理について是正勧告を受けたことをふまえ、全社において時間外勤務の状況について調査を進めた。  その結果、860名に対して賃金未払い残業が確認され、 一人当たり精算時間は、平均 50時間、 一人当たり精算金額は、177千円 (精算総額 152百万円)となった。 精算は、平成18年4月分の給与支給時に行うと言う。今後の対応として、以下のような措置を上げとぃる。
(1)労働時間管理ルールの再徹底  
  @ 時間外労働(深夜・休日を含む)を行う場合は、「時間外労働指示/申請書」にて予め管理者と社員が内容と必要性を確認のうえ実施する。
  A 終業時間後、管理者による見回り、時間外労働従事者の現認を実施する。
(2)客観的な労働時間管理手法の導入  社員のパソコン稼働時間と申告された勤務時間を照合・確認する運用を本年1月より実施。4月からは、自動的に照合する機能を勤務管理システムに追加して、社員の自己申告と現認のみに頼らない客観的な労働時間管理を強化する。
(3)労働時間専用の相談窓口の設置  労働時間に関する専用の相談窓口を人事部と労働組合にそれぞれ設置し、社員の疑問や相談に対し速やかな対応を図る。(本年2月より実施)



仏若者雇用策を撤回 大規模抗議に敗北 政権に痛手、政局混迷へ


共同通信によると、フランスのドビルパン首相は 10 日、国民向けにテレビ演説し、採用から2年間は理由なしに解雇できるとする若者雇用策「初期雇用契約」(CPE)を撤回、別の若者雇用促進策の導入を目指すことを明らかにした。大規模な抗議行動を展開した学生や労組の圧力に折れた。CPE撤回で街頭行動は収拾に向かうとみられるが、シラク大統領と首相の権威は失墜、フランスの政局混迷は当分続きそうだ。 大統領が 10 日朝、首相や与党、国民運動連合(UMP)党首のサルコジ内相ら政府、与党の幹部を招集、最終決定した。労組や学生側は「目的は達成された」(フランス民主労働連盟)と勝利宣言した。 新たな雇用策は、低学歴の若者を正社員として採用する会社への助成金拡充などを盛り込んだ。痛みを伴うCPEとは対照的に、財政措置で雇用を促す内容。たばこ税の増税で財源を確保する。与党側は 10 日、議会に法案を提出した。 来春の大統領選を控え、首相は若年層の雇用改善をてこに出馬に道筋をつけたい思惑があるとみられていたが、与党の候補者選びはサルコジ氏が優位に立った。 首相は会見で「CPE適用に必要な信頼と冷静さが得られなかった。残念だ」と撤回理由を説明。フランス学生連合のジュリアール代表はフランス公共ラジオに対し「(撤回は)初めての決定的勝利だ。(法律からCPEを削除する)議会の投票まで圧力をかけ続ける」と強調した。 首相はCPEを含む雇用法案について採決なしで国民議会(下院)を通過させるなど強引な政治手法が目立った。3月 28 日と4月4日のデモには警察発表で 100 万人以上が参加、反発が全土に広がっていた。 4 月 10 日  

今月の統計


国民負担率及び租税負担率の国際比較(対国民所得比)

日本と米国とを比較すると、国民負担率は同じ程度であるが日本では、社会保障負担が高く、米国では、租税負担率が高いことがわかる。一方、国民負担率が日米よりも明らかに高いイギリス、フランス、ドイツを見てみると、イギリスは、租税負担率が、ドイツは社会保障負担率が、フランスでは、そのどちらもが高いことがわかる。

(単位:%

日本 米国 イギリス フランス ドイツ
国民負担率 35.5 35.2 50.2 63.9 55.3
租税負担率 21.1 26.4 40.3 39.1 30.1
社会保障負担率 14.4 8.8 9.9 24.8 25.1
個人所得課税 6.1 14.8 14.6 10.9 13.6
法人所得課税 4.3 2.3 4.6 4.7 0.8
消費課税 7.0 5.6 15.4 15.6 14.6

・米、イギリス、フランス、ドイツは、2001年、日本は、2004年のデータ。

今月の司法・行政

介護理由の転勤拒否認める ネスレ従業員、二審も勝訴

共同通信によると、大手食品メーカー「ネスレ日本」の男性従業員二人が「家族の介護ができなくなる」として遠隔地への転勤命令の無効確認などを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は 14日、原告勝訴の一審神戸地裁姫路支部判決を支持し、ネスレ側の控訴を棄却した。 小田耕治裁判長は判決理由で「転勤で家庭崩壊も考えられる。甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるもので、配転命令権の乱用に当たり無効」と指摘した。 判決によると、二人は同社姫路工場(兵庫県)にいた 2003年5月、所属部署の廃止に伴い霞ケ浦工場(茨城県)に転勤するか、退職するかを迫られた。介護を理由に姫路工場の別部署への異動を求めたが受け入れられなかった。 判決は、56歳の従業員は妻が病気で、50歳の従業員は母親(82)の認知症が進んだため、介護が必要だったと認定。いずれも「単身赴任は事実上不可能で、転勤先に同行させれば知らない土地に住むことで病状が悪化する可能性がある」と、転勤命令が不当と判断した。 二人は判決後に記者会見。現在は会社側から出社を拒否されているといい「ほっとした。介護をしている人に希望を与える判決だ」と話した。 4 月 14 日


社員遺族の敗訴確定 最高裁、団体保険で初判決 「目的逸脱」と企業批判 住軽金訴訟、無効指摘も

共同通信によると、企業が全社員対象に一括契約し、生命保険金を受け取る「団体定期保険Aグループ」(廃止)をめぐり、住友軽金属工業(東京)在職中に死亡した社員計4人の遺族が会社側に保険金引き渡しを求めた訴訟2件の上告審判決が 11 日、最高裁第3小法廷であった。 藤田宙靖裁判長は「会社側が遺族に保険金の全部または一部を支払う約束はない」として、請求を全面的に退けた。遺族側の敗訴が確定した。 団体保険をめぐる最高裁判決は初めて。2件のニ審判決はともに名古屋高裁で、遺族側一部勝訴と敗訴に分かれていた。 判決理由で藤田裁判長は商法の「他人の生命保険で保険金を受け取る契約には被保険者の同意が必要」との規定により、同意がない場合、契約自体が無効と強調。 その上で会社側の対応を検討し(1)保険会社との良好な関係を保つため漫然と契約を繰り返した(2)一人当たり 6,000 万円を超える保険金を受け取り、遺族には 1,000 万円前後しか支払わなかった―などの点について「社員の福利厚生という保険の目的を逸脱していたのは明らかだ」と強く批判した。 さらに4裁判官のうち2人が補足意見で「住軽金は労働組合の同意しか得ていない」として、保険契約そのものの無効を指摘した。 しかし両訴訟は原告、被告双方が本人の同意を前提に保険金の帰属を争ったため、判決は保険金の引き渡し義務に限定して判断。結論は「同意を前提としている以上、社内規定額以上の補償金を支払う義務はない」として会社側勝訴となった。 社員4人は名古屋製造所に勤務していた 1994 〜 96 年に死亡。遺族3人が原告の訴訟で一、二審は一人当たり約 1,700万〜約 2,100万円の引き渡しを同社に命じたが、もう一人の遺族の訴訟は二審が一審の一部勝訴判決を取り消した。 団体定期保険Aグループは社員の個別同意なしに契約し、企業が保険金を事実上独占することが多く、社会的批判を浴びた。このため保険各社は 1996 年以降、遺族補償を主契約とする「総合福祉団体定期保険」に切り替えている。 4 月 11 日


7600万円支払い和解 住友金属の男女差別訴訟 一審賠償額上回る

共同通信によると、昇進や賃金で女性差別を受けたとして、鉄鋼大手「住友金属工業」(大阪市)の女性社員ら4人が計約3億 4,000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審は 25日、住金側が一審判決が命じた賠償額を上回る計約 7,600万円を支払うことで大阪高裁で和解した。 井垣敏生裁判長は和解勧告で「真の男女平等を目指す精神が社会、企業に根付いているとは楽観できない。住友金属のような大企業で改革が進展すれば、社会の意識改革を進める上で極めて有益だ」と指摘。和解条項に住金側が「女性労働者の処遇に今後も十分な配慮をする」ことが盛り込まれた。 原告側代理人は「男女差別を認定した一審判決を会社側も受け入れたものと考えている。勝利和解だ」としている。 昨年3月の一審大阪地裁判決は、同社が従業員の知らない人事制度を設け、女性を五段階の査定区分の最低ランクに位置付けていたと認定。「男女間で昇進や賃金の差別をしており、公序良俗に反し違法」として、男性社員との差額賃金や慰謝料など計約 6,300万円の支払いを命じた。 訴えていたのは定年退社した北川清子さん(66)と在職中の3人で、高校卒業後、事務職として 1959〜75年に入社。95年に提訴した。 住友グループをめぐっては、住金のほかに住友電気工業と住友化学工業についても男女差別訴訟が提起されたが、2003〜04年に、いずれも会社側が解決金を支払うことなどで大阪高裁で和解している。 4 月 25 日


(あとがき) 民主党の代表が小沢氏となり、衆議院千葉補選では、民主党が久々に自民党を破りました。ポスト小泉は、安倍晋三官房長官や福田康夫元官房長官が有力のようですが、やはり日本でも政権交替が何年かおきに行われる方が、行政の上層部に緊張感が生まれ好ましいのではないかと思います。企業でも、経理や財務の責任者が同じ職務に継続して長年間もやり続けることは、必ずしも好ましくないようです。