Personnel Management Office Report

10月号

発行日:平成18年10月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)安倍晋三内閣が発足しました。安倍氏の著「美しい国は」によると、憲法改正に並々ならぬ熱意があるようですが、所信表明演説では、教育改革、再チャレンジ社会などと言うことが強調されています。一つ確かなことは、来年4月の税制改正での消費税の値上げはなさそうだということです。

 

最近のニュースから

 

労働市場、初の開放 比と協定 看護師など受け入れ

 フィンランド訪問中の小泉純一郎首相は9日夕(日本時間同夜)、フィリピンのアロヨ大統領と経済連携協定(EPA)に署名、共同声明を発表した。日本がEPAを締結するのはシンガポール、メキシコ、マレーシアに続き4カ国目だが、労働市場の一部開放を盛り込むのは初めて。国会の承認を経て来春にも発効する予定で、日本は初めて外国人の看護師や介護福祉士を受け入れることになる。
 日比EPAは、両国間の物品やサービス、投資の自由化を促進し、2国間の経済関係強化を図るもの。日本にとっては(1)両国間の経済実態に法的基盤を与える(2)フィリピン市場へのアクセスの拡大(3)東アジアの経済連携強化への推進力となる−などの意義がある。
 EPA締結によって、日比両国間で貿易総額の94%を無税化▽税関当局間の協力・情報交換の推進▽貿易関連書類の電子化(ペーパーレス貿易)▽看護師、介護福祉士や高度の水準の技術・知識を持つ者らの入国・一時滞在の認定−などが実現する。
 また、共同声明は、フィリピンにおける初等・中等教育の一層の普及と質の改善、日本語教育その他における日本の協力などを盛り込むなど、人材の養成と交流を強く打ち出した。
(産経新聞) - 9月10日

三重銀が8億7千万不払い 2年間の残業代を精算へ

共同通信によると、三重銀行(三重県四日市市)は 15 日、 2004 年 2 月から 06 年 2 月までの間、行員約 1,200 人に対し、計約 8 億 7,000 万円の時間外手当の不払いがあったと発表した。近く全額を精算するとしている。
四日市労働基準監督署は今年 2 月、三重銀に対し、行員の時間外労働の実態を調査するように勧告していた。これを受けて三重銀は、 04 年 2 月から今年 2 月までに在籍した支払い対象行員約 1,450 人を対象に、パソコンの使用履歴や金庫の開閉記録などを基にした実態調査を実施。このうち約 1,200人への不払いが判明した。
不払い金の平均は一人あたり約 70 万円。最高額は 30 代後半の総合職の男性で、約 550 万円という。三重銀は労基署の指導を受けるまで、行員の自己申告だけを基に時間外手当を支給しており「適正な申請さえあればきちんと支払っていた」と釈明している。
現職行員に対しては今月 28 日に全額を支給、退職者についても来月以降支給する予定。
同行の加藤幹博専務は「法令順守の観点から誠に遺憾。労働時間の厳正化を行いたい」としている。 9 月 15 日


今月の司法・行政

退職後過労自殺も労災 不認定取り消し国敗訴 「業務で発病、治らず」

 共同通信によると、過重な労働でうつ状態となり、兵庫県加古川市の無認可保育所を退職後に自殺した保育士岡村牧子さん=当時( 21 )=の父昭さん( 70 )が死亡を労災と認めなかった国の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は4日、請求を認め、処分を取り消した。
難波孝一裁判長は「業務によって発病し、うつ状態が治らずに自殺したと認められる。自殺の原因が業務ではないとした労働基準監督署の処分は違法」と判断した。
退職後の過労自殺で労災が認められたケースについて、厚生労働省労働基準局補償課は「把握している限りない」と話している。判決によると、牧子さんは 1992 年9月に保母(現在は保育士)の資格を取得。翌 93 年1月から無認可保育所に勤務し、月曜から土曜まで 12 時間勤務が続いた。
3月末には、同僚の保育士6人全員が退職し、4月から責任者として新人5人を指導することになった。3月 31 日に病院で適応障害と診断され、入院のため退職。翌日退院したが、うつ状態が続き、4月 29 日に自宅で自殺した。
昭さんは同 12 月、加古川労働基準監督署に労災申請したが、同労基署は「退職、退院で障害は治っていた」として認めなかった。労働保険審査会への再審査請求も昨年3月に棄却され、同6月に提訴した。
昭さん夫妻は保育所の経営会社に損害賠償請求訴訟も起こし、 98 年8月の大阪高裁判決は業務と自殺との因果関係を認め、経営会社に約 570 万円の支払いを命令。 2000 年に最高裁で確定している。9 月 4 日

セクハラ相談漏らされ苦痛 名城大に80万支払い命令

共同通信によると、名城大学(名古屋市)在学中に教員から受けたセクハラ(性的嫌がらせ)の内容を相談員に漏らされ精神的苦痛を受けたとして、愛知県の男性会社員が大学に 500 万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁の満田明彦裁判長は8日、請求を棄却した一審判決を変更し 80 万円の支払いを命じた。
判決理由で満田裁判長は「相談員が男性の同意を得ずに内容を上司に伝えたのは守秘義務違反」と指摘した。判決によると、男性は 2001 年 12 月、教員や先輩の学生から性的プライバシーについてからかわれたため、 02 年1月、非常勤の相談員に相談。相談員は無断で上司に漏らした。
一審名古屋地裁は昨年 12 月、請求を棄却した。9 月 8 日


残業1時間で死亡も労災 作業条件厳しく逆転勝訴

共同通信によると、船舶の荷物積み降ろし作業後に心臓病で死亡した港湾労働者の男性=当時(48)=の遺族が、大阪西労働基準監督署長に遺族補償給付などの不支給処分取り消しを求めた訴訟の控訴審で、大阪高裁は 28 日、作業条件の厳しさなどから労災と認め、遺族の逆転勝訴とする判決を言い渡した。
男性は心臓に持病があったものの、死亡前 1 週間の残業時間は 1 時間程度で、原告側弁護士は「従来の基準では認められなかったケース。労災を幅広く認めた判決だ」と評価している。
横田勝年裁判長は判決理由で、不整脈など男性の持病について「心臓病発症寸前までは悪化していなかった」とした上で、死亡までの勤務状況を検討。1 週間の残業時間が約 1 時間で、直前の 2 日間が休日だったため「負担が重いと断定するのはためらう」としたが、死亡時が夏で直射日光を浴びて作業していたことから「前の週に比べ厳しい業務となった」と判断。業務により心臓病が発症したと認定し、不支給処分を取り消した。
判決によると、男性は 1995 年 7 月、大阪市住之江区で早朝から貨物船に鋼材を積み込む作業をしていたが、午後八時ごろ倒れているのが見つかり間もなく死亡した。作業現場に日よけはなく、最高気温は 30 度を超えていた。 9 月 28 日


(あとがき) 経営再建中の米自動車大手フォード・モーターは、北米のホワイトカラー(事務職)の 3 分の 1 に当たる約1万 4,000 人の削減を柱とした追加リストラ策を発表しました。GMも、経営再建のため、株主の強い意向から日産・ルノーとの提携交渉をしています。原油が高騰すると、燃費のいい日本車に人気が出ると言う構造は、30年前のオイルショックのときと変わらないようです。