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9月
夜中出動率がへる。
信じがたいことかもしれないが、原因は「耳垢」以外に考えられない。
すべての老人医療関係者は一度担当の老人にたいして耳垢とりを実施すべきだ。そしたら膨大な医療費が本当にへるかもしれない。
医療って奥が深いよなぁとつくづく思った。だってクスリより、耳垢なんだよぉ。
取り残しの分を取っていたのだが、ふと祖母が言う。
「ごそごそいわなくなった、ありがとう」
ごそごそって??どうやら、耳垢は耳にびっしりつまっていたのではなく、空間があいた状態で挟まっていた感じだったらしい。
「どうしていままでごそごそするっていってくれなかったの?」ときくと、こんなもんだと思っていた、とのこと。
つまり、年寄りだし、耳鳴りもするし、病気みたいなもんだろう、加えて病院ということばにはなにより敏感なため、不調を訴えるわけにもいかなかった、というのが現状らしい。
もっとはやくいってくれればなぁ。
そして今日もぐっすりと眠っていた。
旅行中、ほとんど家のことなど思い出さなかったのはもちろんだが、場所を変えると、幻覚も幻臭もさっぱりとなくなっていた。
母親にも勧めたい、せめて近場の温泉ででも一泊してくるだけで、だいぶ精神状態が違ってくるに違いない、と思った。
あ、でも今週もダメだし、来週もダメだし、再来週もダメだ。私出かけるから。ごめんなさい。
もう、最近いつも敬老の日みたいなもんだから、特別なことは何もしない。
前日に夜コンビニいったとき、祖母用の透明な曲がるストローを買ったのでそれをあげておわり。
夜は敬老ナントカ金というのが市かなんかから出たみたいなので、それでみんなで寿司とケーキをたべた。ごちそうさまでした。
家に帰って病院にいっただけのはずがそのまま入院となったらしい。
祖母にはどのタイミングで打ち明けるのかが今後の課題で、とりあえずは「まだかえってこないみたい」で通すことにした。
みるとタオルを置いて、ちょっとなみだぐんでいて、まるで思春期の娘さんが悩んでいるような様子。
「どうしたの?」と聞くと、「言えない」という。
さらに聞くと、悲しそうな顔をしながら、「あんたも子供を生んでみないとわからない」と訳のわかんないことを言う。
あぁ、でもこの雰囲気からすると、どこかにまた便でもしたにちがいない、と思いつつ、慰めつつ、あとで母に話を聞くと、母親が外出からもどると、トイレの前の廊下にひきちぎった生理用品が落ちていたらしい。
どうやら祖母が長いこと入っていないはずのトイレに入り込み、棚にあった生理用品を、おむつをむしるのとおなじようにむしったらしいのだ。
その時は気がたっていたから、なんともなかったのだが、時間がたつにつれ、「まずいことをした」という意識が出てきたらしい。
それが子供とどういう関係があるのか??祖母の頭の中はあいかわらず別の世界が存在しているらしい。
しかし、トイレにいって、ドアをあける(つまり立ち上がる)まで体力が回復してくるとは。
あの、耳垢とり以来、目に見えて寝付きがよくなって、それにつづいて、体力も回復してきている。
ポータブルも一人で使えることがふえ、私も腰痛に悩まされなくなってきた。
人間って強い生き物だなぁと思った。でも記憶だの意識だの一番複雑そうな脳の機能の復活っていうのが一番難しそうだ。
このまま徘徊するほどにはならないと思うけど、あまり動き回られると寝たきりのころのほうが楽だった、って介護の側からみれば思えて当然だろう。
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