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11月
夜泣き、妙な徘徊が減る。
祖父が退院、話し相手復活により、平日、私が顔を合わせるのは夜中の12時前後のトイレコールがあった場合だけとなった。
とりあえず、夜中に起こしたりしないよう、ふすまを隔てた隣の部屋をあたらしく老人部屋として解放することで、健康維持をはかるしかないだろう。
幸いにして祖父の耳は遠い。
夜中にめざめて、ふがふがいっていたりする。
テレビでみるような老人の顔なのでびっくりしてしまった。
しかし、廊下に靴下がみえる、近寄ると、ただの靴下じゃなくて、足、すこし話かけてから思い切って、部屋を覗くと、やっと部屋にたどり着いて、そのまま倒れ込んだ様子の祖父の真横で、どうして近寄ってきたのか、祖母がこちょんと座っていた。
なんか、映画のワンシーンのような、こわい光景だ。
数百メートル先まで散歩してきたところ、気分がわるくなって、もう横になっているよりほかなくなってしまったらしい。
いままでも、なんか祖父の病気のきっかけは「冬の散歩」(寒いのに無理矢理出かけて体調くずす→そのままカゼ→体力低下で倒れる、というパターン)だったので、本当に注意してもらわないと。
ところで、「なんか欲しいモノある?お茶でも飲む?」と聞いたところ、「じゃ、水を1杯」と言われて祖父に水を持っていったのだが、ついでなので、祖母にもなんか希望は?と聞いたところ、「ある」と楽しそうに笑いながらこたえ、何かと思ったら、「ベッドの上に上がりたい」とのことだった。
自分で上がってくれ、と思いつつ、手を貸したのだけど、本当に、老人2人きりにしておくのって、こわい。
ものすごく調子がよいらしく、入るなり自分で洗面器にお湯をくんで、せっせと顔を洗っている。
前だと、湯船のお湯をすくいとる腕力もなかったのに。
母だと甘えてしまうが、私だと、かなり勢いよくお湯をかけたりしても、黙っている。
8年前に目の手術をして以来、母が髪をあらっていて、それが当然になっていたらしいのだが、私がシャンプーをし始めると、1月まえぐらいに「手の届くところは自分で洗ってね」と言ったのをおもいだしたのか?(まさか。。)前髪のあたりを洗っている。
その後も体の手の届かないところをあらってから、スポンジを祖母に渡すとちゃんとこすっている。
そして、自分で湯船に入ろうと立ち上がったのには本当に驚いてしまった。
おもわず風呂の外にいた母に「冬に向かって枯れるだけかとおもってたのに、とんでもないことになってるよ〜〜」と話しかけてしまった。
そしてちゃんと自分の力で出ようとするのにもびっくりしてしまった。
本当に、ひどい時には2人がかりで人間クレーンみたいにしていれてたのに、すっかり回復している。
いま、介護保険とかいって、保健婦さんがリサーチしてたりするけど、たった数ヶ月でもこんなにちがうし、もちろん日によって、時間によってこんなにちがうのに、一体何を基準にできるんだろう???
現場の人間ほど不思議に思っているんだろうなぁ、としみじみ思った。
とはいっても、どちらにしても、歩けない訳だから、要介護には違いないんだけど。
そんなにディケア行きたくないのか。気持ちはわかる。でも。
そして、今度はベッドに座って、足をばたばたさせながら、「昔は学校で一番ちいさいのによくあるいてるって言われて」とずっと続けていた仕事の話をした。
定年直前まで、学校のいわゆる「小使いさん」をやっていた職業婦人の祖母は、男の人が会社の話をするのと同様、よく仕事のことを思い出して話をする。
本当の小さい頃の実家の話か、仕事の話が話題のほとんどになる。
昔のことほど、正確におぼえているから、不思議なもんだなぁと思う。
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