2004.02.19 朝日新聞夕刊芸能欄
イエローモンキー吉井和哉 改め YOSHII LOVINSON
暗闇から生まれたデビュー作
「やっと成人した感じです」
活動休止中のイエローモンキーのボーカル、吉井和哉が、YOSHII LOVINSONとして活動を始めた。
シングル2作に続き11日に出たデビューアルバム「at the BLACK HOLE」は、バンド休止後、「暗闇」にいたという自らが投影された作品だ。
YOSHIIはこの間何を考え、どう変わったのだろうか。
88年の結成以来、疾走し続けたイエローモンキーは、メンバー各自の方向性の見直しの意味も込め、01年1月に休止。YOSHIIは34歳だった。ソロで活動しようとは決めていた。
「どういう音楽をやるか。みんなが喜ぶからこれまで通りというのもあるけれど、痛々しいのは嫌だった。次のステージを目指そう、と」
区役所に行ったり、銀行に行ったり。穏やかな日々の中で考え続けた。が、
「2年目は途方に暮れていました。今オレはブラックホールにいる。でも自分だけでなく、世の中もブラックホールでした」。
9・11事件に端を発する不穏な世界情勢、陰惨な事件に不況……。
昔は気にならなかったことが気になり出した。
「大人には成りたくなかった。でも年も年だし、そんなことを言っている場合じゃなかった」
自己の内面と世の中とに向き合う自分がいた。
バンド休止前は詩は浮かばず、曲も搾り出すような状態だった。約2年の充電を経て、昨年初めから、湯水のように言葉や曲が出てきたという。
「自分の抱えた暗闇を押しつけたり、ただ平和を求めたり、という歌は作りたくなかった。エンターテインメントですから」
サウンドは力強く、シンプルだ。詩は「日記みたいなもんです」というように、自分を支えた人や身の回りのことが多くなった。
「一音でも多く僕の音を聞いて欲しかったから」。
ドラム以外の演奏と、全10曲中7曲のミックスダウンを一人で手がけた。
「うまいミュージシャンに来てもらうわけには行かなかった。僕が作ったバンドへの敬意もあるし」。
イエローモンキーへの思いがのぞいた。
1曲目の「20GO」は20歳になり大人の世界に踏み出す少女の姿を描いた。
「自分の心理状態が少女の体を使って表現されたのかもしれません。僕もやっと成人したんでしょう。」
休み中にかっこいい「おじさん」たちと出会ったことも影響しているという。
「そういう世界の新人としてやっていくのもいいな、と思いましたね」
現在37歳。「今は早くジジイになりたいですね。中年を飛び越えて。中年はギトギトして嫌なんで」。
そういって笑った。
<補足>
写真の下に
「3年で30曲ほど書きためた」というYOHII LOVINSON=東京・赤坂の東芝EMIで
とありました。
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