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Wiki文学事典 -

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*はじめに

 この文学事典は,参加者によって作成される事典です。領域としては,文学,演劇,マンガ,アニメを含みます。

*日本近代文学
**【あ】
:「アイヌの学校」:小説。長見義三が,昭和17年10月大観堂から刊行した小説。アイヌの家庭を舞台に,和人の前校長・現校長・村会議員との交流を描く。土人学校を廃校にして差別をなくそうとする行政側に反対して,主人公バロオ(戸籍名・蘭毛重太郎)が県庁まで出かけて反対活動を展開し,その願いが聞き入れられる。一見矛盾するかのような,バロオの行動は,差別の解消の中に潜行していく差別を見逃さず,現実的に自分たちの利権を守ろうとする行動であった。また和人の養女ムメの視点を介在させ,アイヌと和人との関係をより重層的に描き出す。『北海道文学全集』11巻所収(木村 功)
:あせごのまん:1962年〜。本名,奈良崎英穂。ホラー小説家,日本近代文学研究者。高知県生まれ。関西学院大学大学院文学研究科博士課程後期課程満期退学。2005年,「余は如何にして服部ヒロシとなりしか」で,第12回日本ホラー小説大賞http://www.kadokawa.co.jp/contest/horror/短編賞を受賞した。大賞は,恒川光太郎「夜市」。長編賞は,大山尚利(なおとし)「チューイングボーン」。(木村 功)
:あせごのまん:1962年〜。本名,奈良崎英穂(なさらき・ひでほ)。ホラー小説家,日本近代文学研究者。高知県生まれ。関西学院大学大学院文学研究科博士課程後期課程満期退学。2005年,「余は如何にして服部ヒロシとなりしか」で,第12回日本ホラー小説大賞http://www.kadokawa.co.jp/contest/horror/短編賞を受賞した。大賞は,恒川光太郎「夜市」。長編賞は,大山尚利(なおとし)「チューイングボーン」。(木村 功)
**【い】
:違星北斗(いぼし・ほくと):1902(明治35)年〜1929(昭和4)年。アイヌ民族の歌人。アイヌ民族としての自覚を抱きながらも,日本人によって与えられた「滅びゆく民族」という価値観を拭えなかった。アイヌの哀しみをうたう歌集「北斗帖」には,「アイヌと云ふ新しくよい概念を内地の人に与へたく思ふ」と詠う。遺稿集に『違星北斗遺稿 コタン』(1984,草風館)がある。(木村 功)
**【お】
:長見義三(おさみ・ぎぞう):1908(明治41)年5月23日〜。小説家。夕張郡長沼町生まれ。札幌の北海道農産物検査所に勤めていた昭和3年,「小樽新聞」懸賞小説に応募した「母胎より塚穴へ」で1位入選を果たす。選者の谷崎精二を頼って上京し,早稲田大学仏文学科に進学した。在学中に「姫鱒」「ほっちゃれ魚族」を発表。昭和13年早稲田大学卒業。昭和14年6月短編集『姫鱒』が第9回芥川賞候補作となる。昭和16年穂別に疎開し,昭和17年10月『アイヌの学校』(大観堂)を出版する。戦後千歳市に定住。千歳市史編纂委員,千歳文芸の会副会長をつとめた。 参考文献;『北海道文学全集』(木村 功)
**【た】
:太刀踊り:「花採り太刀踊り」(10月15日)。高知県に多く見える神楽芸能であり,地域により呼び名を変えているところもある。花採りでは,華やかに着飾り,太刀踊りは鉢巻きに袴の姿である。イリハで入場し,注連を切って躍り込み,二列ないし円形を組む。太刀,ザイ,シデ棒などを使う。」(田中義広編『日本の祭り事典』1991,淡交社)→夏目漱石「坊っちやん」に用例 (木村 功)
**【て】
:天元(てんげん):天元術のこと。算木を用いて高次方程式を表し,これを解く方法。未知数を天元の一という。中国で13世紀頃に始まり,のちわが国に伝わって和算のもととなった。(『広辞苑』第4版より)→用例「余が家に天元の書,一部と竹を黒白にそめわけたる算木」(正岡子規「父」「筆まかせ」)(木村 功)
**【の】
:野口寧斎(のぐち・ねいさい):1867(慶応3)〜1905(明治38年)。漢詩人。長崎県諫早市生まれ。本名弌(いち),通称一太郎。明治4年上京。哲学館に入り,かたわら漢詩を森春涛・槐南父子に学ぶ。早くから『太陽』で文芸評論を発表して名を挙げたが,ハンセン病によって外出が不自由となり,漢詩人として生計をたてることになった。明治36年『百花欄』(明治38年5月まで,29集刊行)を創刊し,当時の漢詩流行に大きな影響を与えた。綱島梁川・横瀬夜雨とともに,三大病詩人と呼ばれる。また正岡子規に匹敵するということで,二大病詩人と称されたこともある。早稲田大付属図書館に寧斎文庫あり。(木村 功)
**【は】
:馳 星周 (はせ・せいしゅう):1965年2月〜。小説家。北海道出身。横浜市立大学文理学部卒業。評論家活動を経て,1996年「不夜城」(角川書店)で小説家デビューを果たした。第18回吉川英治文学新人賞受賞。「不夜城」は,新宿を舞台にしたチャイニーズマフィアの世界を描く。暴力と裏切り・犯罪行動を描き,弱肉強食の世界で人間が生き残っていく姿を詳細に描き出す。90年代後半を代表するピカレスクロマン。「鎮魂歌」は続編。「不夜城」は映画化され,1998年6月公開。監督李志毅(リー・チーガイ),主演金城武,山本未来他。デジタル時代の作家にふさわしく,IBMシンクパッドとWZエディタで原稿を作成する。(木村 功)
**【め】
:目取真俊(めどるま・しゅん):1960(昭和35)年〜。小説家。沖縄県今帰仁村生まれ。琉球大学法文学部国文科卒業。県内の高校に勤務する傍ら,創作活動を行う。1997年「水滴」で第27回九州芸術祭文学賞を受賞。のち同作品で,第117回芥川賞を受賞(文藝春秋,1997)。「水滴」は,沖縄戦の中瀕死の友人を見殺しにした初老の主人公の足が,ある日突然張れあがり,水を出すようになる。それを大勢の死者達が,毎夜飲みにやってくるという体裁をとりながら,依然戦争体験から解放されない沖縄の民衆の罪悪感とそこからの転機を表現しようとしている。『魂込め(まぶいぐみ)』(朝日新聞社,1999)『平和通りと名付けられた街を歩いて』(影書房,2003)『郡蝶の木』(朝日新聞社,2001)『風音』(リトル・モア,2004),評論集に『沖縄/草の声・根の意志』(世織書房,2001)『沖縄「戦後」ゼロ年』(NHK出版,2005)がある。(木村 功) (教職は退いたはず)