星空の彼方から
                           村松俊樹
 はるか星空の彼方から、一隻の宇宙船が地球を目指して飛行していた。
 宇宙船の乗務員は、宇宙連合から特使として派遣された宇宙人二名である。
 
「もうすぐ着くぞ」
「しかし、地球は宇宙連合に加盟するに値する星なんでしょうか?」
「確かにまだ早いかも知れない。しかし、加盟すれば、きっと宇宙連合にも、地球に とっても良い結果を生む筈だ」
 
「キャップ! 宇宙船らしき物体が地球に近づいてきます」
 レーダを見ていたフジ隊員が叫んだ。
「よし。アラシ、イデの両名は、ビートルで調査に向かってくれ」
 ムラマツ隊長が指示した。
 
「しかし、急に行ったりして、地球人はびっくりしませんかね」
「大丈夫だ。科学文明も発達しているようだから、我々を受け入れてくれる筈だ」
 
「キャップ! 宇宙船を発見しました。今から攻撃に移ります」
「了解。相手は宇宙人だ。油断するなよ」
「ミサイル発射!!」
 ビートルから発射されたミサイルは、弧を描きながら宇宙船に命中した。
 
「こ、攻撃してきました!」
「お、落ち着け。い、いきなり宇宙船が現れたんだ。攻撃されても仕方がないだろう」
 
 宇宙船は火を吹きながら落下し、富士山に激突すると、山頂を削り取った。
 
「キャップ! 宇宙船が富士山を破壊しました」
「なんてことをしてくれるんだ。日本の象徴である富士山を破壊するとは」
「よし、全員出動だ!!」
 
「早く、宇宙船の外に出るんだ! 爆発するぞ!」
「見て下さい。地球人ってあんなに小さいですよ」
「本当だ。踏み潰さないように気を付けるんだぞ」
 
「キャップ! 宇宙怪獣ギララです」
 フジ隊員は、時々、さも宇宙人の名前が周知かのように叫ぶときがある。
「よし、一斉攻撃にかかるぞ。みんないいか」
「あら、ハヤタさんがいないわ。こんな時にどこへ行ったのかしら」
 
 宇宙人は、科特隊のレーザ銃の一斉攻撃を受けた。
 
「攻撃してきましたよ!」
「落ち着け。急に自分達の身体の何十倍もある宇宙人が現れたんだ。攻撃されても仕 方がない」
 
 その頃、ハヤタ隊員は、慌てて自分のアパートに飛び込んでいた。
 着替えた上着に変身用カプセルを忘れたままにしていたのだ。
 ハヤタ隊員は、時々、ウルトラマンとしての自覚に欠けるときがある。
 ハヤタ隊員は、カプセルを手にすると「シュワ」と変身し、富士山に向けて飛び立 った。
「向こうから何か飛んで来ましたよ」
「落ち着け。仕方がないよ、攻撃されても」
 
 ウルトラマンは、飛びながら腕を十字にす ると、スペシューム光線を発射した。
 
「こ、攻撃してきましたよ!」
「お、落ち着け……」
 
 
 宇宙人は爆発した。
 
 
 ウルトラマンは誇らしげに空を見上げると、 「シュワ」と青空の彼方へ飛び立った。
 
「ハヤタさん、一体どこへ行っていたのよ。 もうウルトラマンが怪獣をやっつけてしまっ たわよ」
「ごめん、ごめん。ちょっと忘れ物を取りに」
「ワッハッハッハッ」
 科特隊の笑い声が富士山の裾野にこだまし た。
 こうして、地球は、脳天気な科特隊とウル トラマンの活躍により、宇宙連合に加盟する チャンスを逸してしまったのである。
(イラスト 生知由宇)