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ウサギ博士の冒険     橘  恭子
 
 ウサギ博士は旅にでることにしました。それは、ウサギの国の周りの正確な地図を
作るためです。そのためには、誰も旅したことの無い所にいかなければなりません。
 出発の日は良いお天気でした。行く先は太陽の明るい南の方に決めました。ウサギ
博士のくせは絶えず考え事をしていることです。しかし、今日ばかりはどんな危険が
待ち受けているか予想がつかないので緊張しています。歩いても歩いても果てしない
草原が続いているのです。お腹がすいたのでこの辺りで野宿することにしました。ウ
サギ博士の開発した人参の種を地面にまきます。すると数分で芽が出て三本の人参が
実りました。望遠鏡で北のウサギの国の方を見ると、月明かりで地面と空の境目が黒
いシルエットを描いています。
 
 翌朝、ウサギ博士は鳥の声で目をさましました。
「ウサギさん。こんなところで眠っていてはいけないよ。ライオンの国からやってき
たライオンの群れが、このあたりを縄張りにしているんだ」
 ウサギ博士は親切な鳥にお礼を言って、小さく折りたんだ布を広げました。ライオ
ンの形をしています。身にまとうと、どこから見てもライオンの子供のようです。さ
らに南の方へ向かって進みました。しばらく行くと樹の根元の穴から二匹のネズミが
泣く声がしました。穴をのぞくと兄の黒いネズミと妹の白いネズミでした。
 ウサギ博士はライオンの皮から顔を出して話しかけました。
「どうして、泣いているの」
 白いネズミが答えました。
「ライオンの開く催しで、上手に芸をしないと食べられてしまいます。しかし、わた
しの兄は何をしようか思い付かないのです。私は前回の催しで踊りました。逃げたく
ても私たちの足では遠くへいけません」
 それを聞いて、ウサギ博士はライオンの皮を黒いネズミに着せて詰め物をして、催
しが終わるまで黒いネズミをかばうことにしました。
 この近くいる動物たちはライオンの手下のハイエナに、逃げないように見張られて
います。そこにハイエナがやってきました。ハイエナは子供のライオンにびくびくし
ながら、
「始めまして、縄張りに入ってきた来たならボスに挨拶にきてください」
と言いました。ライオンはうなづきました。
「それとそこのウサギおまえも催しで芸をするんだ。わかったな」
 ハイエナは台帳にウサギを記入しました。
「旅で通りすがりのものでご勘弁を」
「だめだだめだ」
「つまらないものを見せたら食ってしまうからな」
 そしてハイエナは黒いネズミがいないことに気づきました。
 ハイエナは、
「おまえを捕まえれば、逃げたネズミを捕まえられるだろう。こなかったら代りにお
まえを食べてやる」
 と言って、白いネズミを連れて行ってしまいました。
「はなしてよ、はなしてよ」
 必死の抵抗もききません。
 
 ウサギ博士はしばらく考えてから、人参の種をたくさんまいて、すぐに伸びた人参
を収穫しました。黒いネズミに手伝ってもらって、人参をすりおろして、小麦粉と小
さなこびんに入った白い粉を混ぜました。それから焼いて人参のクッキーを作りまし
た。
「これで大丈夫だぞ」
 そして、二人はいっしょに催しの開かれる広場に向かいました。
 
 広場にはライオンがたくさん集まっています。舞台の後ろには出場する動物たちが
控えています。皆命がけで青ざめて震えている者もいます。
 やがて催しが始まりました。最初はカバの親子でした。カバの芸は長い長い逆立ち
で拍手がおきました。次はブタで近くの高い樹の上のてっぺんまでみるみうちに昇っ
ていきました。また、拍手がおこりました。キリンは首を蝶結びです。
「いいぞう」
「もっとやれ」
 しかし、可哀相に。白いネズミはずっと。泣き続けていました。
 
 そこへ、子ライオンにばけた黒いネズミが、
「はじめまして。旅の途中ですが挨拶がおくれました」
 と言って、かごに入った人参のクッキーを配り始めました。正体がばれるのではな
いかと冷や汗が出ます。
「お近づきのしるし、どうぞお食べください」
 クッキーはまたたく間になくなりました。ウサギ博士は満足そうにうなづきました。
「次はおまえの番だ」
 とうとう、ウサギ博士の番が来ました。とりあえず歌を歌ってみましたが、会場は
しんとなってしまいました。
「ひっこめー!」
「へたくそ」
 他の動物たちも心配してみています。しかし、終わってシルクハットをとり一振す
ると、不思議なことにたくさんのハトたちが舞い上がり飛んでいきました。とても奇
麗です。
「今のはハトは良かったが歌がかなり耳障りだったな」
「食ってしまおうか」
 ライオンたちは悩み始めました。
 
 あれれ、突然にライオンたちが急に笑い始めました。笑いがとまりません。
「ぎゃはははははは」
「ひゃっひゃっひゃっ」
 お腹がかゆくてかゆくてたまりません。それを見て捕まっていた動物たちはウサギ
博士といっしょに残らず逃げ出しました。
「こら待て。アハハ、アハハ」
 と笑い続けます。
 黒いネズミと白いネズミはお礼に樫の木で出来た、堅くて底のへらない靴をくれま
した。はき心地もとても良くこれからの旅に大いに役立ちそうです。その他の動物た
ちは自分の国の地図を書いてくれました。
「ウサギ博士ありがとうございます♪」
「 気をつけて旅を続けてください」
「近くに来たら寄ってください」
 みんなでお別れを交わして、さあ新しい旅の出発です。今度はどんなことが起るの
でしょうね。この続きはまたゆっくりとお話していきます。
「ウサギ博士行ってらっしゃ〜い」
 
 
 

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