[目次へ
 
 
 

正しい小説の書き方          各務博之

 
 私のようなものが「正しい小説の書き方」などというタイトルでものを書くなど、
とても厚かましい限りではありますが、私なりの考え方を書いてみたいと思います。
 そもそも、「何故、あなたは小説を書くのか?」という問いかけに対して、私は、
ただ単純に、「書きたいから書く」としか答えることができません。少し人を小馬鹿
にしたような回答ではありますが、実際問題、多くの素人作家の場合、それが真実な
のではないでしょうか。
 小説を書くことを職業としている人を除いて、私たちのような素人作家は、「書き
たくてしょうがない」という欲求に促されて書き始めるのではないでしょうか。それ
は、「私の趣味はスポーツです」というのと同じで、何故とか、理由とか、理屈は抜
きにして、それがやりたいというだけのことなのです。
 ただ、小説というのは、作者に対する存在として、読者がいます。中には、誰にも
読んでもらわなくてもいいんだ、自分の自己満足のためだけに書いているんだ、とい
う人もいるかもしれませんが、それは正しい小説の在り方に反していると私は思いま
す。
 更に、私は、読者を意識しないで書かれた小説も正しい小説の在り方に反している
と思います。はやり小説というのは読者あっての小説だと思います。
 特に私たちのように、インターネットを通して、広く不特定多数の人たちに自分の
作品を公開している以上、読者を常に意識して作品を書くべきと考えます。
 ここで、「読者を意識する」とはどういうことかというと、私は、「読者がその作
品を読んだとき、その作品の痕跡を読者の心に残すような作品とすべく努力を払うこ
と」だと考えます。その痕跡は、ある時は感動であり、またある時は笑いであったり、
悲しみであったりすると思います。
 では、そのためにはどうしたらいいのでしょうか。
 まず、読者にわかる文章を書くことが大切です。
 得てして、私たちのように文章の表現力が乏しい場合、自分の頭の中のイメージが、
文章表現より先走ってしまい、自分のイメージが充分文章上に表現されていなくても、
自分自身は完璧に書き上げた気になってしまうことがあります。そんな文章は、何の
先入観もない人が読むと何のことやら、何をいいたいのかさっぱりわからず、不可解
な文章になってしまいます。
 例えば、主人公の人物像、性格について、自分自身では小説を書く前から主人公が
どんな人物なのか頭にあるのですが、読者は文章の中から主人公の人物像を思い描か
なくてはなりません。従って、小説の導入部分の何気ない文章の中に、主人公の人柄
を現すようなお話を自然に表現する必要があります。
 このように、常にこの文章を読んで、自分の意図することが相手に伝わるだろうか、
と意識しながら、それでいて変に説明っぽい文章にならないように、作品を書かなけ
ればいけません。
 次に、読者に読む気を起こさせるストーリ立てにすることが重要です。
 これは、人それぞれに好き嫌いの問題がありますから、とても難しいことです。し
かしながら、読者の読む気を起こさせる作品というのは、本質的なところは同じなの
ではないでしょうか。
 つまり、読者に常に先を期待させるストーリ展開にさせるということです。即ち、
常に読者の頭に「どうして?」「どうなるの?」といった疑問文を持たせるようなス
トーリ展開にする必要があります。
 これは、作者と読者との駆け引きでもあり、ひとつのテクニックでもあるのですが、
ストーリ展開の上手な作品は、テクニックが悟られないような文章になっていて、知
らず知らずのうちにお話の中にのめり込んでいくような展開になっています。
 ということで、私は、いつも読者を念頭に置いて、創作を行っています。ですから、
読者の反応にとても敏感です。よかったといってくれるか、つまらなかったといわれ
るか。ひどく批判的な感想をくれる人もいますが、それもいい勉強だと思っています。
何も反応がないというのが一番寂しいですね。
 ということで、タイトルに見合った内容になっていたがどうか、ちょっと疑問です
が、これが私の考えです。
 
 
 


                             [目次へ]