Personnel Management Office Report

10月号

発行日:平成15年10月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)もうお気付きの方も多いと思いますが、生産現場での事故がここのところ増えています。企業業績が伸び悩む中、経費や人員の削減は止むを得ないでしょう。しかし、危機管理上、最低限維持しなければならないことが有ります。削減した経費から出てくる利益の額と削減した経費によって増加した危機の可能性とをよく考えた上で組織改革は進めるべきものと思います。

 

最近のニュースから

 

工場火災が浮かび上がらせた課題  

9月になって連続した新日鉄とブリヂストンの工場火災。今年に入ってからこの他、宮崎の旭化成、北九州の新日鉄、名古屋のエクソンモービルなどでも工場火災が起きた。多くの死傷者の出たケースもある。  新聞は、バブルが弾けて以降の投資抑制による生産設備の老朽化と人員削減の流れの中で、安全が置き去りにされてきたことが背景にある、と問題点を指摘している。  日本の製造業の生産設備の平均年齢は、昨年時点で12.0年だそうである。これに対しアメリカのそれは7.9年。バブル前の1991年では、日本7.3年、アメリカ9.3年だった。日本の圧倒的な若さはいまや地に落ち、逆転されてしまった。バブル崩壊後の“過剰削減”のムードの中で、やるべき設備更新まで怠っているうちに、安全レベルが危険マークを超えてしまっているように見える。徹底して原因を究明、適切な対応策を出さねばならない。   製造業の最近の収益力回復は、人件費を中心にした固定費削減が効いたことが大きいといわれている。その過程で、リストラの対象がもっぱら中高年社員だったことに、果たして落し穴はなかっただろうか。リストラと一緒に、ベテラン社員が頭やからだに詰め込んでいた、設備や機器のクセ、安全へのノウハウなど、貴重な財産まで流し去ってはいなかったか。知恵袋の中身が、若い人たちにしっかり引き継がれていればいいのだが、それが出来ていたのだろうか。そうした分析も、ここできちんとしておく必要があろう。  
新日鉄とブリヂストンの火災は、日本が誇る自動車生産ラインを不安定に陥れ、日本の製造業の意外なもろさを露呈した。安全が生産の品質や効率に直結する、経営の危機管理の重要な柱であることも、改めて思い知らせた。  いずれにしても、相次ぐ工場火災は日本の製造業に巣食い始めた生活習慣病の根を徹底して洗い出し、適切・的確な対策を立てることを求めている。  
日本労働研究機構:要約

今月の統計

65歳以上人口は過去最高の2431万人
  −「敬老の日」にちなんで−  
推計人口、労働力調査、就業構造基本調査、家計調査の結果から
  総務省統計局では、「敬老の日」(9月15日)を迎えるに当たり、統計からみた我が国 の高齢者のすがたについて取りまとめた。
65歳以上人口の割合の推移をみると、昭和25年(1950年)以降年を追って上昇   し、60年(1985年)には10.3%と初めて10%を超えた。その後、毎年0.5ポイント   程度ずつ上昇し、平成15年には19.0%と、総人口のおよそ5人に1人の割合と   なっている。    65歳以上人口の割合は今後も上昇を続け、平成27年(2015年)には総人口の   26.0%(3277万人)と、およそ4人に1人が65歳以上になると見込まれている。


総務省発表より
 
     

今月の判例

解雇無効と給与支払い命令/弁護士への情報提供適法

 企業秘密を外部の弁護士に漏らしたとして外資系投資会社「メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズ」(東京)を解雇された元部長(50)が、未払い給与の支払いなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁は17日、解雇は無効と判断し、計約五千万円の支払いを命じた。  判決理由で山口幸雄裁判長は「弁護士に内部資料を渡したのは差別的待遇などについて相談するためだった」とした上で「弁護士には守秘義務があり、必要なら企業秘密を含む情報を開示してもよい」と指摘。「懲戒解雇は不当で、解雇権の乱用にあたる」と認めた。  判決によると、元部長は2000年9月、上司の嫌がらせなどに対し、人事部門に救済手続きを申し立てるため、弁護士に相談。営業日報などの資料を渡した。同社は翌月、職務に反して企業秘密を漏らしたとして懲戒解雇とした。 9月17日(共同通信)


出張先での急死を労災認定/福岡、年金不支給取り消し  

通信工事大手日本コムシス社員の夫=当時(53)=が出張先で急死したのは過労が原因だとして、妻(57)=福岡県久留米市=が遺族補償年金を支給しないとした福岡中央労働基準監督署長の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、福岡地裁の亀川清長裁判長は10日、死亡を労災と認定し処分を取り消した。  判決によると、男性は関連会社に出向中の1995年、急激に普及していた携帯電話の中継所で保守点検作業などをする実質的な責任者として、九州・沖縄の約200カ所を一手に担当。大分市内に出張していた同年10月12日早朝、急性虚血性心疾患で死亡した。  判決理由で亀川裁判長は「頻発するトラブルや電話会社からの厳しい苦情処理に追われており、多数の出張を含む一連の業務が疲労を蓄積させ死に至らしめた」と判断。  「死亡直前は総労働時間が200時間を超える月もあり、まじめで頑張り屋の男性は精神的、肉体的に相当に参っていた」と述べた。  福岡労働局は「判決は残念。控訴するかどうか検討したい」としている。 9月10日(共同通信)

 

(あとがき)小泉純一郎が、自民党総裁に再選され、内閣改造、臨時国会の開催と政治がまためまぐるしく動き始めました。そして、「テロ特措法」の延長が可決されたところで、衆議院の解散があるというのがほぼ間違いない見通しとなって来ました。輸出を中心とした大企業における業績の回復が、中小企業や地方に、さらには、雇用に波及してくるのはいつのことになるでしょうか。