Personnel Management Office Report

11月号

発行日:平成15年11月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)衆議院選挙の選挙戦が始まりました。イラク派兵、北朝鮮問題、道路公団の民営化、憲法改正等、政治課題は多々ある中で、やはり、今回の選挙の最大の争点となっているのが「年金」です。「年金」不信と言われる今、どの政党が、どの候補者が、国民を最も納得させることの出来る政策を打ち出せるかが大きなポイントのようです。

 

最近のニュースから

 

解雇権濫用法理の周知徹底など示す−厚労省、改正労基法の政省令を通達    
厚生労働省は22日、来年1月1日に施行される改正労働基準法に伴う政省令などの内容について、各都道府県労働局長宛てに通達した。通達は、今改正で明記された解雇権濫用法理や整理解雇の四要件を周知すべきこと、就業規則の絶対的必要記載事項である「退職に関する事項」に「解雇の事由」が含まれることによる受理時の相談・援助体制などについて示している。 また、有期労働契約の締結、更新・雇止めに関する基準を定める告示や契約期間を5年に延長できる労働者の範囲、対象事業場要件が緩和されたことによる企画業務型裁量労働制の対象事業場の該当例――などの内容も盛り込んでいる


(雇用統計)

●完全失業率5.1%、前月に比べ0.2ポイント低下−8月    

総務省統計局が9月30日に発表した労働力調査(速報)によると、8月の完全失業率(季節調整値)は前月に比べ0.2ポイント低下の5.1%だった。 男性は5.3%で前月に比べ0.2ポイント低下、女性は4.8%で0.1ポイント低下している。完全失業者数は333万人で前年同月比28万人の減少。しかし、 就業者は6361万人で前年同月に比べ10万人減少し、4カ月ぶりのダウンとなった。

●有効求人倍率0.63倍、前月比0.01ポイント上昇−8月

厚生労働省が9月30日発表した8月の一般職業紹介状況によると、有効求人倍率(季節調整値)は0.63倍で、前月を0.01ポイント上回った。有効   求人は1.3%の減少、有効求職者は2.2%の減少だった。新規求人は前年同月に比べ9.0%増。産業別にみるとサービス業(13.4%増)をはじめ運輸・通信業(6.0%増)などでも増加している。   

●現金給与総額が2.0%減−8月の毎月勤労統計調査    

厚生労働省が1日発表した8月の毎月勤労統計調査結果(速報)によると、現金給与総額は29万4,350円で前年同月比2.0%の減少となった。所定内給与は0.3%減の25万9,557円、所定外給与は3.2%増の1万8,027円。実質賃金は1.5%の減となっている。

     

今月の判例

就業規則の効力は周知必要/懲戒解雇で最高裁が初判断  

共同通信によると、大阪市の化学プラント会社(破産)を懲戒解雇された男性が地位確認などを求め、懲戒を規定する就業規則の効力を争った訴訟の判決で、最高裁第二小法廷(福田博裁判長)は10日、「就業規則が拘束力を生ずるためには、内容を周知させる手続きがとられていることが必要」とする最高裁としての初判断を示した。  その上で「手続きがとられていたかどうかを認定せずに懲戒解雇を有効と判断している」として、二審大阪高裁判決を破棄、審理を高裁に差し戻した。  判決によると、男性は本社ではなく、別の場所にあるエンジニアリングセンターに勤務。会社は就業規則を労働基準監督署に届け出ていたが、センターには備え付けていなかった。  厚生労働省によると、労働基準法では、使用者には就業規則を常時掲載したり、書面で従業員に交付したりするなどの周知義務がある。  労働法に詳しい古川景一弁護士は「周知されていなければ、就業規則に効力がないのは下級審や学説では通例となっている」と話している。 (10月10日)  


東京海上社員に過労死認定/労基署の処分取り消す判決  

共同通信によると、業務時間外に心臓病の発作で倒れ、死亡した東京海上火災保険の男性社員=当時(26)=の両親が、労災を認めなかった立川労働基準監督署(東京)の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は21日、請求を認めた。  三代川三千代裁判長は判決理由で「男性は不整脈の発作を起こしやすい体質だった」とした上で「倒れる直前の労働時間、業務内容などは過重で、突然死の危険を増大させた」と業務と死亡の因果関係を認めた。  判決によると、男性は東京都国立市にある同社国立センターでデータベース管理などの業務に従事。深夜、休日にもトラブル対応を求められ、睡眠時間が5時間前後になる日も多かった。  男性は1991年11月、友人の結婚披露宴に出席中に倒れ、約2週間後に死亡。両親は労災に当たるとして遺族補償一時金の支給を求めたが、労基署は96年に不支給を決めた。  労基署側は「発作は就職前からの体質によるもので業務とは無関係」と主張したが、三代川裁判長は「通常の社会生活で頻繁に発作が起きるような体質ではなく、仕事以外に不摂生はしていない」と退けた。( 10月22日)  


有期契約でも育休認める 解雇も無効と東京地裁  

経済産業省の外郭団体に1年契約で6年間勤めた英国人女性(39)が「育児休業の申請を認めず、不当に解雇された」と、解雇無効の確認などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は31日「育休申請は拒めず、解雇は無効」と認め、慰謝料など50万円と未払い賃金の支払いを命じた。  原告の代理人弁護士によると、有期契約の労働者に育休申請ができることを認めた判決は初めてという。  判決理由で伊藤由紀子裁判官は「契約は自動更新で続いており、実質的には期間を限定しない雇用契約だった」と認定。「雇用の実態を知りながら育休申請を拒否したのは不法行為に当たる」と判断した。  訴えたのは日欧産業協力センター(東京)の元契約社員サラ・ハッセルさん。判決によるとハッセルさんは3人目の子供を出産した直後の2002年3月、育児休業を申請したが契約期間が決まっていることを理由に認められず、同年6月末で解雇された。(共同通信 10月31日)

 

(あとがき)「定年」を65歳まで伸ばす法改正をするかどうかで、厚生労働省と各経済団体とが対立しています。厚生労働省は、年金の受給開始年令が65歳に上がるのにあわせ定年年令も65歳にに上げなければならないと当然考えるでしょうし、それが年金受給年令の引き上げ決定の前提条件であったと思われます。一方、経済界の方は、国際競争力が低下するということで猛反対しています。定年延長が避けられない流れであるならば、企業としては、今までのような年令や就業年数を基礎とした人事・給与制度を成果や能力を基礎としたものに変更することも避けられない流れなのかも知れません。