Personnel Management Office Report

8月号

発行日:平成16年8月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)参議院選挙が終わり、民主党が議席数を伸ばしました。先の国会で政府与党が強行採決した年金法改正がやはり評判が悪かったようです。政府は、「少子高齢化、年金未納などの問題を抱えていて、といあえずの”止血”が必要だったのだ。抜本的な改革は、今後さらに話合って行く。」と言っています。年金制度の一元化、保険料の強制徴収の強化、保険給付の国庫負担金の増加等議論しなければならないポイントはまだまだあります。秋に開かれる国会では、自信をつけた民主党と人気挽回を計る自民党との対決が楽しみです。

 

最近のニュースから

 

 厚生年金未加入事業者、職権で強制加入へ・社会保険庁  

厚生労働省・社会保険庁は厚生年金に加入しない事業所を強制的に加入させる「職権適用」を今年度中に実施する方針を決め、地方の関係機関に通知した。今秋から対象事業所を洗い出す作業に着手して厚生年金に加入させ、保険料納付に応じない場合は資産差し押さえに踏み切る。公的年金の空洞化に歯止めをかける狙いがあるが、制度に加入しても保険料を納めない事業所が増えると、年金財政が悪化する可能性もある。  厚生年金保険法では、すべての法人事業所と5人以上の従業員がいる個人事業所は厚生年金に加入する義務がある。だが実際には保険料負担を嫌って厚生年金の加入手続きをとらない事業所が多い。保険料を徴収する社会保険庁の調べでは、2002年度に新規に開業した約9万6000の事業所のうち18%が加入していなかった。 (日経 7・27)


派遣社員の健保、20万人突破 発足2年で加入者倍増

派遣社員を対象とする人材派遣健康保険組合の被保険者が発足2年で当初の倍となり、先月末に20万人を突破した。全国の健保組合ではNTT、日立製作所に次ぐ3位。財政難で解散する健保組合が相次ぐなか、拡大ぶりが際立つ。企業が正社員を減らし、派遣に切り替えるという雇用形態の変化を映している。  派遣健保は02年5月に被保険者約10万6000人(派遣会社約110社)でスタートし、今年3月末に約18万7000人。さらに先月末には前年同期比52%増の20万3601人と増え続けている。2位の日立の約23万人を抜くのも時間の問題という勢いだ。  被保険者は平均年齢31歳、女性が9割、独身が6割とされる。医療費の支出がそれほど多くないため、保険料の水準は政府管掌健康保険(政管健保)の給料の8.2%(労使折半)より低い6%に抑えられている。派遣社員が次の仕事まで2カ月間、割安の自己負担で加入資格を維持できる任意継続制度も魅力になっている。  また、今年3月から派遣元の人材会社は、派遣社員が派遣健保(または政管健保)と厚生年金に加入していることを派遣先に通知する義務が厳しくなり、加入が増えている面もある。  ただ、厚労省によると02年度の派遣労働者数は、長期に働いている前提で試算した常用換算で69万人。このため派遣健保への加入者が増えているとはいえ、依然として多くの未加入者がいるとみられている。  これは派遣社員を派遣健保(または政管健保)に入れると、厚生年金にも自動加入になり、それに伴う事業主負担を避けようとする人材会社が少なくないためとされる。派遣社員の側も社会保険の負担をせず、国民健康保険(国保)に入って、国民年金には入らないという選択をする面がある。 (朝日07/19)
 

今月の統計
平成15年就業形態の多様化に関する総合実態調査結果の概況

非正社員が35%に、最大の雇用理由は「賃金節約」

全国の事業所で、パート労働者や派遣社員など「非正社員」の割合が労働者全体の約35%を占めていることが、厚生労働省の調査で分かった。  今後、非正社員が増えると予測した事業所も約20%に上る。就業形態の多様化が進んでいることが改めて裏付けられ、正社員を中心とした現在の厚生年金制度が実際の労働環境に追いつかなくなっている面も指摘されている。 非正社員を雇用する理由(3つまでの複数回答)は、「賃金の節約のため」が51.7%と最も多い。次いで、「1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため」が28.0%、「景気変動に応じて雇用量を調整するため」が26.5%、「即戦力・能力のある人材を確保するため」が26.3%となっている。

(出典:厚生労働省)


今月の判例


受動喫煙で初の賠償命令 地裁、江戸川区に5万円 職場の安全配慮義務違反 健康被害は判断せず  

共同通信によると、職場での分煙を要求したのに改善されず、受動喫煙で健康被害を受けたとして、東京都江戸川区職員(36)が区に約30万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は12日、区の安全配慮が不十分だったとして5万円の支払いを命じた。  たばこ被害をめぐる訴訟で賠償を命じた判決は初めて。昨年5月に健康増進法が施行されて以降の禁煙・分煙の流れをさらに加速させそうだ。  判決理由で土肥章大裁判長は「職場の施設を管理する区は、受動喫煙から原告の生命、健康を保護するよう配慮する義務を負う」と指摘。職員が「受動喫煙による急性障害が疑われる」との診断書を提出した1996年1月から、分煙されている別の職場に異動するまでの約3カ月間について「健康被害との法的因果関係はともかく、放置したのは安全配慮義務に違反する」と認定し、慰謝料の支払いを命じた。  判決によると、職員は95年4月、江戸川区に採用された。職場では喫煙が許されており、職員は受動喫煙による呼吸器障害や首、肩の痛みなどを訴え、上司や議会を通じ分煙対策を要求した。  区は職場に換気扇を増設したが職員の席周辺では喫煙が続いた。職員は分煙の徹底を求めたが「喫煙場所を区画するなどあまり厳しくやると人間関係が悪くなる。予算も不足し、急激な改革はできない」と認められなかった。  たばこの被害をめぐる訴訟は、嫌煙家が旧国鉄に禁煙車両拡大などを求めた「嫌煙権訴訟」のほか、喫煙歴のあるがん患者らがたばこ会社に損害賠償を請求した訴訟などあるが、いずれも因果関係などが認められず、原告敗訴で終わっていた。



(あとがき) アメリカの大統領選挙が11月に迫って、色々な世論調査では、民主党のケリー氏と現職共和党のブッシュ氏との支持率が拮抗しているようです。民主党の歴代大統領、ルーズベルト、トルーマン、ケネディ、ジョンソン、カーター、クリントンのときと、共和党のアイゼンハワー、 ニクソン、フォード、レーガン、ブッシュのときとを比べてみると、アメリカが共和党政権のときのほうが日米関係が比較的良好だったのではないかなどと評価するのは言い過ぎでしょうか。