Personnel Management Office Report

2月号

発行日:平成17年2月1日

永浦労務管理事務所からの人事・労務に関する情報発信

 

(前書き)今年の通常国会が始まりました。今年は、去年と比べて人事労務に関係する法案が目白押しと言う状況ではありませんが、議員年金に関する法律、ADR法案に絡んで社会保険労務士法等の改正なども予定されています。また、今年の4月から改正育児介護休業法等いくつかの人事労務関係の法律が施行予定です。準備を怠りなく。

 

最近のニュースから

 

ストックオプション利益は給与所得、最高裁が認定  

ストックオプション(自社株購入権)で得た利益について、「一時所得」に比べて税率が約2倍になる「給与所得」と見なされて追徴課税されたのは違法として、外資系企業の日本法人元社長が税務署側に課税処分の取り消しを求めた訴訟の上告審判決が25日、最高裁第3小法廷であった。  藤田宙靖裁判長は「利益は給与所得に当たる」として、課税を適法とした2審・東京高裁判決を支持し、原告の請求を棄却した。税務署側の勝訴が確定した。  ストックオプションの利益が労働の対価である給与所得なのか、偶然得た所得という意味合いが強い一時所得なのかについて、司法判断が割れていたが、第3小法廷は「ストックオプションは、役員や従業員に対する精勤の動機付けとして設けられたもので、その利益は職務遂行の対価として給付される経済的利益に当たる」と認定した。 (読売新聞) - 1月25日


国民負担率、2年連続上昇 定率減税の縮小など反映  

財務省は26日、国民が所得からどれだけ社会保障費と税金に支払っているかの割合を示す国民負担率が、2005年度には前年度比0・2ポイント上昇し35・9%と、2年連続で増加するとの推計を公表した。所得税などの定率減税が05年度に半分に縮小されることなどを反映した。  国民所得に対する比率は、国税と地方税の合計が21・5%と微増。社会保障費も年金や医療、介護負担の増加で、0・2ポイント増の14・4%となる。一方、国民所得は377兆4000億円と、4兆4000億円の増加にとどまる。  社会保障費と税金に、将来の国民負担となる財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は、05年度の国債新規発行額が4年ぶりに減額されることなどから0・4ポイント縮小して44・8%となる。 (共同通信) - 1月26日


出勤拒否トラブル終結 カネボウ上海、労使が合意  

共同通信によると、上海カネボウ化粧品で女性従業員らが新任の日本人幹部に反発し、中国各地で18日に多数の従業員が出勤拒否した問題で、同社の労使協議が 24日行われ、労使間トラブルを終結させることで最終合意した。   同社によると、問題の背景に久保木俊雄社長ら日本人幹部と従業員の間のコミュニケーション不足があり、会社側の合法的措置が誤解を招いたことを労使が確認した。   従業員らは、会社側が日曜日に事務所のドアを内側から施錠し、休日出勤の社員を入れなかったほか、無断で引き出しを開けたなどと反発した。   会社側は協議で、施錠の理由について、同社が輸入化粧品を中国で違法販売した問題で中国当局に資料を提出した際、現場保存のため必要だったと説明。また引き出しを無断で開けた事実はなかったとの調査結果を労働組合側に示し、組合側は理解したという。 1月24日

今月の統計

外国人雇用状況報告結果(平成16年6月1日現在)

厚生労働省では、平成5年度から、外国人労働者の雇用状況について事業所から年1回報告を求める「外国人雇用状況報告制度」を実施している。  本制度は、事業主の協力に基づき、個々の事業所における外国人労働者の雇用状況を把握し、外国人労働者の雇用の安定を含めた地域の労働力需給の適正な調整及び外国人労働者に対する適切な雇用管理の促進を図ることを目的としたものである。  今般、本制度に基づき、平成16年6月1日現在で、外国人労働者を雇用している(以下「直接雇用」という。)か、又は外国人労働者が労働者派遣、請負等により事業所内で就労している(以下「間接雇用」という。)事業所から管轄の公共職業安定所に提出された報告を集計し、取りまとめた。  なお、本制度は、従業員50人以上規模の事業所については全事業所、また、従業員49人以下規模の事業所については一部の事業所(各地域の実情や行政上の必要性に応じて選定)を対象に、公共職業安定所が報告を求めているものである。




今月の判例


解雇無効訴訟:「車いすで解雇」は有効−−東京高裁が控訴棄却 /神奈川  

◇元横浜市保健会歯科衛生士訴訟  車いすでの仕事は無理などとして、横浜市学校保健会から解雇された同市青葉区の歯科衛生士、徳見康子さん(57)が解雇無効などを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は19日、有効とした1審・横浜地裁判決(04年2月)を支持し、控訴を棄却した。徳見さんは「就労環境の整備などを進めれば就労は可能」と主張したが、根本真裁判長は「障害者に対する使用者の配慮義務を超えた人的、経済的負担を求めていると評価するしかない」と判断した。 
◇「使用者義務超える」  判決によると、徳見さんは67年、横浜市教委から委託を受け小中学校の歯科巡回指導などを行っている同保健会に就職した。しかし、せき髄が細くなる病気にかかり88年から休職。リハビリ中の転倒事故で91年2月、介助者が必要な車いす生活となった。保健会は休職期限の切れた後の95年1月に「自力で通勤や勤務が出来ない」との理由で解雇した。  徳見さん側は「就労可能性を十分検討せずに解雇し、障害者差別にあたる」と訴えたが、判決は「障害者の社会参加の要請という観点を考慮しても、解雇権濫用(らんよう)とはいえない」と退けた。  
◇「障害者の雇用考えない、20年前の価値観だ」−−原告の徳見康子さん会見  「障害者の雇用を全く考えていなかった20年前の価値観だ」。原告の徳見康子さんは、横浜市内で開いた会見で、控訴を退けた東京高裁の判決に怒りをぶつけた。同席した森田明弁護士も「『車いすでの作業は可能』と認めた1審判決よりも後退し、障害者の権利を明確に否定している」と批判した。
 横浜地裁は1審で、工夫すれば、車いす利用者でも仕事はできることを認めながら、左手の握力不足を理由に請求を棄却した。このため原告側は控訴審で、いすに座った小学生を検診する様子を撮ったビデオを提出。二つのいすに座った児童を交代で検診すれば、かかる時間も変わらないことを示した。  しかし控訴審判決では、徳見さんを高いところに座らせたり、いすを複数用意したりする雇用者側の労力、検査の効率性などを理由に「検査の遂行に支障があることは明らか」と徳見さんの主張を退けた。  徳見さんは「結局、健常者と全く同じ形で仕事ができなければ解雇できるという判決。障害者は働いてはいけないと言っているみたいですね」と声を詰まらせた。上告の方向で検討するという。  被告の横浜市学校保健会は「当方の主張が受け入れられた判決」とのコメントを出した。 1月20日 (毎日新聞)


賃金で男女差別と認める 名糖健保に差額支払い命令
 

共同通信によると、名糖健康保険組合(東京)に勤務する女性社員3人が、女性であることだけを理由に賃金、昇進差別を受けたとして、健保側に賃金差額など計約1億 7,000万円を求めた訴訟の判決で、東京地裁は 12月 27日、計約 1,800万円の支払いを命じた。   三代川三千代裁判長は判決理由で「業務内容や能力などが劣っていないのに、男性社員よりも給与水準が低いのは、女性社員を不利に扱ったからと考えざるを得ない」と指摘し、男女差別があったことを認めた。   訴えた3人は 55 歳から 61歳で、いずれも名糖健保に約 30年勤務する主任職員(うち2人は退職)。同じ業務内容の男性社員が年功的に昇進するのに、女性職員は係長以上に昇進できず、賃金差別を受けていると主張していた。   三代川裁判長は、健保の賃金規定そのものに男女差別はない、としたが「実際の賃金決定過程で性の違いによる格差があった」と認定した。   名糖健保は「判決文を見ていないのでコメントできない」としている。 12月27日


東京高裁も人事権乱用認定 一方的降格、一審を増額  

共同通信によると、取締役から現業部門の社員に一方的に降格させ、給与を約半分に減額したのは違法として、東京の自動車部品会社に勤務する男性が減額分の支払いなどを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は 19日、一審東京地裁判決に約730万円を増額し、約 1,510万円の支払いを命じた。   判決理由で雛形要松裁判長は、一審と同じく会社側に人事権の乱用があったと認定し、100万円の慰謝料支払いを命じた。さらに、一審判決後に受け取ることができたはずの報酬分を加えた。   判決によると、男性は 1986年、外資系部品会社ハネウェル・ターボチャージング・システムズ・ジャパン(現ハネウェルジャパン)に営業課長として入社し、2000年4月取締役に昇進。しかし、幹部会議にリポートを提出しなかったなどとして約5カ月後、部長に降格された。   その後2年間でさらに3回降格され、取締役時に約 88万円だった月給は 2003年5月、約 48万円になった。 1月19日


(あとがき) 去年一年間の日中間貿易額(香港含む)が日米間貿易額を超えた模様です。日中間の貿易は、今後さらなる拡大が期待されています。地理的な状況をみるとあたりまえといえばあたりまえ。かつての日中経済の交流が活発でなかった状況が異常であったともいえます。中国脅威論とに中国チャンス論とが並存しているこのごろです。ご自身の事業については如何でしょうか。