8/20 釧路

釧路で12日間におよぶクラブの合宿の打ち上げをした翌日、邪道にもレンタカーを仲間5人で借りた。自転車乗りが車で名所巡りすることは少し良心がとがめたりするのだが、
「まあ来年は就職活動がどうなってるか分からないからしようがないのだ」と自分を納得させつつ、チャリンコで行くととてもキツイであろう多和平(360度の大パノラマ)や霧の裏摩周などを見てきた。
その日は釧路のツーリングトレイン(使っていない電車を雑魚寝小屋としてJRが有料で提供している)の外、駅のホームに泊まった。 外とは行つてもちゃんと屋根があって雨がしのげる。
この晩も雨がシトシト降っていたので同じようこして寝ているチャリダーが既に沢山いた。(※この翌年もここを雨の晩に一人で訪れたが、警官が見回りと入り口での入場チェックがあったので、ホームに泊まることはできなかった)
8/21 釧路〜音威子府〜中頓別 (26km)

翌朝、数人のメンバーの見送りのもと、分解して袋に詰めた自転車と、荷物でパンパンのサイドバッグとともに、一人7:00発の列車に乗りこんだ。3両編成の鈍行電車に揺られ、午後6:00陽が落ちる頃に音威子府駅に着いた。そして、自転車を組み立てだいぶ暗くなった夜7:00、北へ向けて出走開始した。浜頓別まで通じる国道275号線はホントに何にもないところを通っている。もちろん街灯すらない。山の稜線が次第に輪郭を失してゆき、月明かりとヘッドライトだけを頼りに1時間ほどナイトランすると敏音知(ピンネッシリ)温泉なる所についた。
温泉センターがあって宿泊もできたが、近くにはログハウスそのものの立派な木造の待合室のあるバス停があったので、すぐにそこに泊まることに決めた。
ここには先客のチャリダーがいて、そこの温泉から帰ってきたあと話に花を咲かせた。 この人は神田さんという人で、福井工業大学の4年生で学友会総務会長の名刺をくれた。
学生生活最後の夏に北海道一周しているとのことだった。

8/22 中頓別〜宗谷岬〜サロベツ原野〜オロロンライン〜天塩 (208km)

朝4:30に起き5:00過ぎから2人で出走。神田さんは車輪の大きく細いクロスパイクでそのうえに荷物も少ないのでペースがムチャクチャに速い。
クッチャロ湖までの32kmをノンストップの1時間で走ってしまった。朝メシもまだなのに、こんな無茶なペースでこのまま走れるわけがない。
クツチャロ湖で写真を撮ってくると言ってここで別れることにした。
メーターの走行距離が98kmを示した午前10時30分、スタート地点の「日本最北端、宗谷岬」に到着した。ひたすら南へ下る旅が始まったのだ。
雑草の大原野の真ん中をぬけ、オロロンラインで海っぺりをひた走る。 天塩キャンプ場こ到着。初っ端からグッタリだ。それもそのはず208kmも走ってしまった。
ここのキャンプ場はシャワーが無料で使えるほか、有料で温泉もある(疲れをとるためもちろん温泉に入った)。キャンプ料も取られないが、ロケーションはBくらい。
8/23 天塩〜留萌〜北竜〜滝川 (185km)

ひまわりで有名な北竜町の道の駅で休憩してると、車で来たオヤッさんが話しかけてきた。
「どっから来たの」「横浜です」「私は札幌の人間なんだけど妻の実家は茅ヶ崎(湘南の江ノ島のほう)なんだ」「じゃあ僕の家から近いですね」としばし雑談をした。
また走りはしめ、しばらく行くと一台の車が後ろから「ピーッ」とホーンを鳴らしてきて追い越して停止した。
「ナンダ?!」と、うろたえていると、自動車のドアが開き、さっきのオヤッさんが出てきた。 「これ持ってってよ」と缶詰とレトルトのお総菜をいっぱいくれた。
滝川の市街で銭湯に入ったのち、滝川キャンプ場(普通の公園でテントを張ってもいいからネっていうようなところ。無料)に行くと行くと、大阪から来たというロードレ−サー(軽量な競技用自転車)でリュックを背負い旅するトライアスリート部所属の2人組、トホダー(徒歩で旅する人)2人組と1人(あとから原チャリダーもやって来た)がいた。いずれも野郎ぼかりだが酒を飲みつつ、それぞれの旅の話などをして盛り上がった。
8/24 滝川〜札幌〜小樽の先の塩谷 (140km)

日本一長いという直線道を飛ばす。ここにきて無理がたりヒザが痛い。このままではマズイ。ここまでスポーツサンダルでこいできたが。この先のことを考え札幌でレーサシューズを買うことを決めた。専用のシューズを合宿中に壊してしまったので、せっかくのビンディング式ペダル(スキーのビンディングみたいなもの)が重たいだけのお荷物になっていた。これでペダルを踏みおろす力だけでなく引き上げる力もつかえる。
札幌の街をしばし、うろうろする。植え込みの花が美しい旧道庁の庭で昼飯(コンビニ弁当)を食べていると、観光客や近所の会社のOLたちも、芝地にシートを引いてランチタイムを楽しんでた。うらやましい環境だなとおもった。
北海道神宮の大鳥居の近くに北海道で一番大きいというスポーツサイクルショップがあって何でも揃っていた。
「カチッ」と靴をペダルにはめて、さあ出発するぞというとき雨が降り始めた。ザンザカ降ってきたので、またスポーツサンダルに履き替える。
冷たい雨にもがきながら、膝の痛みにうめきながら、小樽の駅に着いた。 雨具がぐっちょりして寒い。さあこれからどうしよう。いつまでも駅にいてもしようがないので、また走り出す。
さむい。脚が動かない。小樽からもだいぶ離れてしまいヤパイ雰囲気になってきた。でも走るしかなかった。そんなとき暖かな光りが道端に流れていった。ライダーハウス(モーターパイク乗りの宿)だ。
予約者で満員だったが、悲愴感あらわな顔でグッチョり雨に濡れた悲惨な姿を見てか?泊めてくれることになった。おじちゃん・おばちゃんはほんとにいい人!。ツーリングイン・レストハウス『おしょろ』TEL0134-26-4107という所で、かなり豪華な晩飯と朝食付きで1泊2380円(当時)とかなり安い(ライダーハウスは自炊しなければならない所が多いらしい)。雑魚寝で風呂がないけど、近くの温泉までは他の宿泊者に車で連れていってもらうことができた。ラッキー。
8/25 小樽〜雷電海岸〜長万部〜八雲 (170km)

朝、雨が上がったかのようだったけど、ザンザカ降っては止んでの繰り返しだった。雷電海岸まで来ると、かなりいい天気に変わっていた。しかし、猛烈に蒸し暑く汗だくになり、かなりへばった。
オホーツク側から太平洋側に抜けてきた。前の年に来たときは長万部の町営キャンプ場に泊まったのたが、のんびり疲れをいやしたくて地図に載っていた八雲の落部温泉まできた。だけど遅い時間になってしまい宿泊者しか入れなさそうなホテルの温泉しか見つからなくて入れずじまい。これだったら長万部の公衆温泉につかっとけばよかった。
日が暮れてしまって、テントを張る適当な場所も見つからない。 結局遅くまでコンビニで雑誌を立ち読みして時間をつぶして、国道沿いの小さなバス停で寝ることにした。汗でベトベトして寝苦しい。
8/26 八雲〜函館〜(フェリー)〜大間崎〜むつ (69+56km)

いい加減に洗濯物がたまってきた。函舘で洗濯をしてから本州に渡りたかったので、朝4時半に出走開始した。
函舘のコインランドリーで洗濯を済ませ、JR函舘駅で絵はがきを買い込み港へ向かった。13:50の出航まで2時間ぐらい時間があったので、家に電話して暑中見舞いをくれた人たちを聞いて、手紙を書いて時間をつぶした(函舘・大間崎間のフェリーは朝10時と昼と夕方5時過ぎ(かなり大雑把)の3便が出航していて所要時間は1時間40分くらい。
船はシブキを後方にまき散らし北海道をどんどん遠ざかつてゆく。
来年もこれるだろうか‥‥。感慨深かった。
本州最北端、大間崎。本州は今年も異常に熱いらしい。ここからが正念場か。日本最大の霊場恐山に行ってみたかったが、時間的に中途半端だったし、北海道の地図しか持っていなくて道の様子が分からないので今回はパスする。
むつの手前5kmぐらいの関根という所に「プレジャーランド石神温泉」というのがあって独特な泉質でいい湯たった。
むつ市街の本屋で全国道路地図を買った。そのついでに、このあたりにテントを 張れるところがないか店の主人に訊いた。 「役所の前に野外ステージがあって、そこならテントを張らなくても寝られるよ」と教えてくれた。かなり立派なそのステージ下のすみっこにエアマット
を敷いてラジオをつけて寝た。