曲の説明
春風の道(はるかぜのみち)
後鳥羽院(ごとばのいん)に仕えた宮内卿(くないきょう)は、その生涯について詳しいことはわかっていないそうですが、1200年から1204年までの短期間に歌壇で活躍し、『新古今和歌集』以降の勅撰集(ちょくせんしゅう)、歌合(うたあわせ)等に多くの和歌を残しています。
そのうちの『新古今和歌集』巻一(まきのいち) 春歌上76の歌に着想して、「あけぼの」「若草(わかくさ)」「山遙か(やまはるか)」の3つの部分から構成しました。
薄(うす)く濃(こ)き 野辺(のべ)のみどりの 若草(わかくさ)に
跡(あと)まで見(み)ゆる 雪(ゆき)のむら消(ぎ)え
暗い冬から季節は移り、春はあけぼの、新しい芽吹きを日の光が照らし出します。若草の緑は野を覆い、若き女流歌人宮内卿の姿に重なります。草の濃淡に跡を残した雪は消え、遙か彼方の山に白く望むばかりです。
この歌から「若草の宮内卿」と呼ばれるようになったそうですが、若くして才能を発揮しつつも、周囲からの厳しい目もあったのでしょうか、血のにじむような努力を重ね、ついにはからだを壊し、二十歳前後で夭折(ようせつ)したといいます。
穏やかで明るい早春の情景と、美しくも悲しい宮内卿の生涯を重ね合わせて、篠笛と尺八、箏、十七絃で描いてみました。
参考文献:『いとエモし。』(koto著、サンクチュアリ出版)、『新古今和歌集』(佐佐木信綱校訂、岩波文庫)、Wikipedia
(注) 五線譜(篠笛・尺八譜)および縦譜(篠笛・尺八譜)につきましては、当該楽器のほかに他の楽器のパートを補助的に記載しています。ただし、複数のパートを集約し、オクターブも変えているところがあります。正確には、五線譜(スコア)をご参照ください。
音源
mp3 FILE:3ka036a_春風の道 v1.0.mp3(8:14)
楽譜
縦譜(箏・十七絃譜)、縦譜(篠笛・尺八譜、裏面五線譜)は大日本家庭音楽会から出版されております。
五線譜(表紙、調弦表):3ka036bg_春風の道(五線譜/表紙・調弦表) v1.0.pdf
五線譜(スコア):3ka036g_春風の道 v1.0.pdf
五線譜は「MuseScore」、縦譜は佐藤祈采氏ご提供の「JapoScore」を使用しています。イメージ写真はphotoAC素材を使用しました。
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