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宮原 裕美 yumi miyahara

スーパーフレックスとチェンマイで田植え

 

デンマークのアーティスト・グループ、
「スーパーフレックス」と北タイの古都、
チェンマイで田植えをしてきました。
ところで、田植えをする前までは
スーパーフレックスって
まったく知らな かったんですけど
けっこう面白いこと行って いるグループみたいです。
バイオ・ガスやオレンジ・サウナが
代表作品 として取り上げられることが多いようです。
これは、アフリカ人の経済と生活を
助ける目 的で作られたもので、オレンジ・サウナは、
そのサウナだけでちゃんと生活できるような
携帯可能なテントです。
どのような技術を使って
いったいどんなもの を作っているのか
私はまだいまいち分かりま せんが、
エコロジカルな視点からエネルギー 削減と
リサイクルをテーマにして
実践的に 活動しているグループのようです。
http://www.superflex.dk/
チェンマイ在住のカミンとフランクフルト在住 の
日本でもおなじみのリクリットが
共同で 「The Land Project」を
二年前から行っています。
これはチェンマイの郊外に広い土地を二人で 買い、
そこをアーティスト・ヴィレッジのよう にしようというプロジェクトです。
二人はそれぞれの友人のアーティストに
この 土地に家を建てないか?と持ちかけているそ うで、
ナウィンも参加しています。
この場所は、アーティストが大都市の喧噪か ら逃れて
2,3日滞在できるような場所にし ようというのが
出発点でした。
そこでは原始的な自給自足の生活をする場所 に
しようと考えています。
ときには瞑想もし たいし、
自分の生徒を連れてきて
みんなでい ろんな話をすることもできます。
もちろん、ピクニック感覚で1日を過ごすの も
大歓迎です。
希望すれば誰でも訪れることのできる場所です。
最終的にたくさんの住居が完成したら、
市に 寄贈してみんながいつでも来られて、
利用で きる公園のようなスペースにするという
プロ ジェクトだそうです。

現在、この土地にはカミンの建てたキッチン を司る家、
「 トビアスは彼の作品を彷彿とさせ 」るようなデザイン的な家、リクリットの家、
それからこの土地の世話をしているガーデナー が
滞在する家の4件が建てられています。

家を建てる上で
守らなければならないルール が二つあります。
一つはその広さを2×4 メートルで統一すること。
そして一階部分は柱だけの造り、
つまり ピロティ(高床住居)にすることです。

例えば、リクリットの家を見てみると
2?×4 メートルの面積で3階建てになっています。
一階はもちろんピロティになっていて、
その スペースにはバーベキュー用の窯が
設置され ています。
これを見るとすぐに
「ここでパッタイ作って、パーティするんでしょう!」 と容易に想像することができるんです。

※)リクリットは90年からNYのギャラリー で
タイの焼きソバ「パッタイ」を
展覧会の オープニングに、
オーディエンスに振舞う という作品を作っています。
作家の作品の特徴をよく活かした家に
なってい るんですね。
つまりこの家も彼らの作品になる ということです。

ところで、話はちょっと脱線しますが、
ピロティ という言葉は
「1920年代より,ル・コルビュジエが近代建築の 新しい方法として主張したことに伴って一般 化し た。
すなわちその主張とは,近代都市においては,
地上は歩行者や自動車のために開放されるべきで あり,
そのためには近代建築はピロティをもつべ きであるという考えである。」
と世界大百科事典では説明されていますが、
タイではそれこそ(日本でも、東南アジア一帯にも)
近代以前からこの建築方法は確立されていました。
ただ「近代都市においては、地上は歩行者や自動 車のために開放されるべきである」
などという 大義名分はなく、
自然と共生していく上で必要な 知恵というか
生活様式の一つですよね。
雨期には 川の水かさが増しても
家の中に水が入って来ない ような作りになっているし、
一階部分を柱だけに することで風通しを良くし、
さらに日陰を造ると いう効用もありますよね。
これは長い間、タイの農村文化のなかで
ずっと伝 え続けられてきたものです。
これをピロティと呼んだのはコルビュジェですが、
この建築の技法を生活的経験から実践したのは、
名もない古代の人だったのではないかと
すこし考えました。

さて、当然この土地には電気が引かれていません。
日が落ちると真っ暗になります。
ガーデナーは時々ここに滞在していますが、
電気のない生活がどんなものか
私には想像でき ません。
彼らは電気を引いて欲しいと
カミンに 頼んでいるそうです。
テレビが見たいんですって。
(その気持ちかなりわかる)
そこで、出てきたアイディアがゾウ、
もしくは 水牛を飼って電力を得ようというものです。
(笑) 電気がなくても、
何とか生活することはできる でしょうが、
生きていくには食事をしなければ なりません。
料理を作らないといけません。
しかしガスがない、ということで、
「自然に優しいガス」を製造して
アフリカの人 に使ってもらうというプロジェクトを
している スーパーフレックスに参加を呼びかけて、
バイ オガスを設置することになったそうです。

と言うわけで、彼らはバイオガス、
そしてオレ ンジ・サウナを
家として設置できるかどうかを 調査しに
チェンマイにやって来たのでした。
この土地では、田んぼも作っています。
これは自給自足の第一歩なんですが、
ちょうど この時期は田植えの季節。
カミンがいろんな人 に呼びかけて
田植えをするというアクティビティ を行うというので、
私も参加してきました。
小さい田んぼと大きな田んぼの二つがありました。
私は小さい田んぼが終わった昼の時点でもう ダウン。
すごく暑くてふらふらになってしまいま した。
田植えは初めての経験でした。
スーパーフ レックスも初めて。
しかし、ガーデナーが丁寧に 教えてくれます。
どうやったら能率良くしかも ちゃんと一直線上に
苗を植えることができるか・・・ すごく難しいですね、
田植えって。
それにすごくハードな労働です。
あるアーティストは、
「スパゲティ食べるからもう解放してくれーー」
と言いながら植えていましたけど・・・・
私もそんな気持ちでした。
一直線上に植えることができた人は
1人も居ま せんでしたが、
それはそれはアーティスティック なラインの
田んぼが出来上がりました。
収穫のころ、またみんなで集まって
苦労して植えた お米をいつか食べることができたら、
とてもすてきですよね。

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