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酒井 敦子 atsuko sakai  

日本人って美術館好き??
 :MoMAに来た人10人に聞いてみました。

 世界中から観光客の訪れるMoMAでは、英語以外にもフランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、中国語、韓国語、そして日本語と8カ国語のフロアプランを用意しています。このフロアプラン、一番に減るのが早いのはやっぱり英語。そして、次はというと・・・、なんと日本語なのです。確かに、来る人々を観察してみると、日本からいらっしゃる方を多く見かけます。「日本の美術館では来館者が減少していると聞いたけど、MoMAにはこんなに日本の方が来るのはなぜ?」そんな疑問に駆られた私は、思いきってMoMAに来ている日本の方に、街角ならぬ、「ミュージアム 突撃インタビュー」をしてみました。

 たまたま声をかけた10人中8人が「日本ではめったに美術館にいかない」そう。(ちなみに、その他2名中一人は、美術館の学芸員の方でした。Oops!)日本では美術館に行かないけれど、今日はなぜMoMAに来たかという質問に対しては、「欧米の美術館は安い値段で有名な作品が見られる。」「日本には有名な絵がないから見る気にならない。もっと面白い企画をしてくれたら見に行く気になるかも」など、「有名な作品目当て」の返答多数。また、日本でも何度か行われているMoMA展や日本の旅行誌、ニューヨーク特集の雑誌がMoMAを多く取り上げていることから、MoMAの知名度も大きく影響しているようです。「ニューヨークと言ったらMoMAだと思ったから来た。」「MoMAは観光名所の一つ」「MoMA QNSは2005年までの限定だと聞いたから」など。その他の理由としては、「美術館は"非日常"の場。旅行に行ったときなど"非日常"な状況になったときに行きたくなる。」や「MoMAはデザイン家具のコレクションが充実しているのでそれを見に来た。」という声も聞かれました。(残念ながら、現在のMoMA QNSでは、スペースの都合上、デザイン家具は展示されていませんが・・・。)

 たった10人のインタビューで、あれこれ言うのは早すぎるかもしれませんが、これらの結果は、コレクションの充実、面白い企画、見合った入館料などといった、来館者の美術館に対する基本的な願望を反映しているように思います。ニューヨークという世界中の人を引きつける町にあり、世界有数の近代美術コレクションを誇るMoMAに日本の美術館が太刀打ちするのは難しいかもしれません。しかし、こんな声も聞かれました。「欧米の美術館は壁の説明書きやパンフレットが豊富にあって、役に立つ。」や「子供の頃からもっと慣れ親しんでいたら、日本の人ももっと美術館に行く気になるのではないか。」など。これらのことは今日本でも取り組もうとしている課題ですが、改善の余地がありそうです。そして、理由はどうであれ、こうしてMoMAまで足を伸ばしてくれる日本人が多いことは、これからの日本の美術館とオーディエンスの関係が変わっていく基盤のように思え、希望を感じてしまうのでした。

 最後に、答えてくださった皆様、突然話しかけて驚かせてごめんなさい!ご協力ありがとうございました。

 

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