山梨・まち[見物]誌ランデブー 第1号 特集・芦安村
甲斐犬ものがたり
一代一主、古武士のようないでたちで山峡を走る、温情あふるる虎毛犬がいた
博物館で出会える犬
平日だというのに、東京上野の国立科学博物館は驚くほどたくさんの子供たちでにぎわっていた。取材にたちあってくれた広報担当の方の話によると、修学旅行や遠足などの学校行事で利用する学校がますます増えてきているのだという。国立科学博物館は、本館、みどり館、新館の三つのパートに分かれているが、甲斐犬が展示されているのはみどり館の二階、「動物分類展示」のコーナーである。入り口には大きなゴリラがいて、愛敬のある顔で出迎えてくれる。パンダや馬、鹿などあらゆる動物のはく製が、きれいなガラス張りの展示ケースの中に整然と並んでいる。
部屋の左奥手にの展示ケースに、左から「カラフト犬ジロー」、「秋田犬ハチ公」、そして、甲斐犬黒号がいた。
室内をにぎやかに見て歩いている子どもたちが、遠くから、あ、あれハチ公じゃない、と走り寄ってくる。やっぱりハチ公だよ、この犬は主人が死にそうになったのを助けたんだぞ、と得意そうに説明する子供に、ち、ちがうよお、死んだ先生を駅で待っていたんだよ、と別の子供がただす。
かと思うと、お父さんらしき方がビデオを撮影しながら、さあ、これがあのハチ公です。かわいいですねえ、おや、あんまり痩せてませんねえ、かいわいそうでしたねえなどと解説しながら近づいてくる。
ハチ公人気は依然として健在である。先日も某テレビ局で、この犬の話題が取り上げられていたばかりだったからか、特に印象が強い。明るくて大きくて、伝説の忠犬らしく華やかに映る。なるほど、本当のハチ公はこういう顔をしていたんだ、としばらくハチ公の顔から目が離せない。
おもわず目がいってしまったハチ公から目を移すと、その右隣に少し暗めに(黒虎毛の犬なので、実際に暗色なのであるが)、しかしきっぱりとした「古武士」のようないでたちでたたずんでいる犬がいる。この犬こそが、今回の取材の目的の甲斐犬黒号である。(本文の冒頭より転載)
コンテンツ
- 博物館で出会える犬
- 甲斐黒号がそこに
- 甲斐犬の銅像が立つビル
- 山梨で最初期の犬猫病院
- 黒平にも見たこともない犬が
- 昭和初期の芦安、西村山周辺の光景が
- 川を渡る風の匂い
- 甲斐日本犬の愛護会設立
- 調査行で出会った犬たち
- 齋藤氏による甲斐日本犬の分類と結論
- 天然記念物の申請へ
- 洋犬崇拝から日本犬の見直しへ
- これが天然記念物申請時の甲斐犬の姿
- 甲斐犬の習性
- 甲斐犬はどこから来たのか?
- 君男さんの熱情
- 芦安の地で守られている甲斐犬に
- そしてそれから
(注)芦安村は市町村合併により現在の南アルプス市の一部となっています。