山梨・まち[見物]誌ランデブー 第9号 特集・富士吉田市
下吉田本町界隈は、「懐かしモダンな不思議ワールド」です
本町通りで
月江寺駅と下吉田駅の間にひろがる感じの町、本町の目抜き通り、本町通沿いに「『まち』がミュージアム」総合案内所がある。受付に男性がいたので、市役所の渡辺一史さんはおられますか?と尋ねてみたらその方が当の渡辺さんだった。この場所で、渡辺さんにお会いする約束をしていたのだ。
総合案内所は、もと陶磁器屋(旧花磁屋)だった場所で、その1階がギャラリーになっていた。ショーケースには植松永次さんの焼き物の作品が、室内には田通栄さんのおちょこに水を差したような作品が展示されていた。
町めぐりをしながら話しましょうか、ということで、いきなり渡辺さんとの町めぐりがはじまった。
実は昨年が富士吉田の市制施行50周年だったということで、市は50周年にふさわしいイベントを募集した。その応募の中から、[FUJIYOSHIDA・ART・FESTIVAL『まち』がミュージアム](企画は、富士吉田アートフェスティバル実行委員会。このメンバーに渡辺さんも入っていた)の企画が選ばれたという経緯があった。
町の空き店舗を展示スペースに見立て、全体で町をミュージアムと考えたこの企画、作品を見ながら、同時に町の魅力を再発見する好企画である。
(一部省略)
むかしの町のにぎわいを
国道139号でもある本町通り。振り返ると富士吉田駅方面に富士山がくっきりと見える。その手前には、巨大な「金鳥居」も見える。まさに富士山につづく、正真正銘ど真ん中のメインストリートなのだ。
ところがご多聞にもれず富士吉田市も中心商店街の空洞化が進んでいた。 今では通称シャッター通りと呼ばれるほど、本町通りはシャッターを下ろしてしまった店が多い。
「子供のころは、この通りでよく遊んだものです。お店のおじちゃんやおばちゃんが相手をしてくれて、楽しい思い出ばかりが浮かぶんですよ。」
と渡辺さんは寂しそうだ。懐かしい店も、次々に店じまいしていった。
15年前、富士吉田にUターンし、市役所に勤務するようになってからも、活気があった時代の本町を何とかして取り戻せないものかと幼なじみたちとよく話し合ってきたという。
そういう思いが、このアートフェスティバルにつながった。
通り沿いの空き店舗には、小野友三さんの小さな兵隊をびっしりと並べた作品が展示されていた。奥の土間の壁にも天井から吊るされた電球の先に、小さな兵隊が。印象に残る作品だ。
町筋を左手に入る。「月江寺通り」だ。まっすぐ進んで宮川を渡り、坂道を上がるかたわらに月光時がある。この通りは月江寺の参道にあたるのだ。
通りに入るとすぐに、街の雰囲気が柔らかく変わる。まさに昭和30年代の「懐かしい町並み」がそこには展開しているのだ。思わず、東京池袋にある、ナムコの昭和30年代にスポットを当てたテーマパーク「ナンジャタウン」を思い出してしまった。ありがたい。よくぞ建て直さずに残しておいてくれました、と心の中でそういって、手を合わせてしまう。いやはやだ。(本文冒頭より抜粋)
コンテンツ
- 古い建物の再利用
- 戦災に会わなかった町
- 自然体で、みんなの運動に
- 上は富士講の町、下は織物の町
- 織物の町のおもかげ