夜中にドクターペッパー(PETボトル)が飲みたくなり、自販機目指して静かな夜道を歩き出す。ふと見上げると、そこには星空。
人は誰でも、見上げれば、無限に近い広がりを見ることができる。地べたの、わずかな水平移動で出来上がった、自分の世界の卑小さを感じることになる。昼の光に隠されていても、人はなぜ、この事実から目をそらしていられるのだろうか。ちょっと頭上を仰ぐだけなのに。
月は西の空で、明るく光っていました。
さて、野尻抱介三連アタック!の第一弾です
むっちりむうにぃな女子高生が宇宙飛行士!な「ロケットガール」シリーズ第三巻は、遂に月を目指します。それも極!水はあるか?水はあるのか?
きっちりした考証と設定は、今作品でもバッチリです。方法としては、旧ソ連のプロトンを二本使う案に近く、ただ月近傍に送り込める人員は遥かに多く(これは人員の軽量さ加減もあるのだが)代わりに着陸船は非常にコンパクト、但し二人乗りです。
ただ、ツッコミどころは多数。ソフトのバグはお約束とはいえ、あんなに簡単に見つかるなら楽でいいです。診断室送りになるような駄目プログラムなら、確実にお手上げでしょう。
プロジェクト管理もなんというか、最初からかなりクリティカルなミッションで、あの状況からゴーかけちまう、というのは、個人的には違和感あります。まぁ、最近自分、かなり安全サイドに偏った判断しているという自覚ありますが、それでも、自分だったらすべてのサブシステム、計画の再検討をすべし、という判断をするでしょう。
大体、あの物量で、月周回軌道に四人送り込むというのが、小説サイドの要請とはいえ、かなり無理がある気が。そしてアリアンガールズ二人のリタイヤ、あれが一番違和感あります。どんなに杜撰なプロジェクト管理でも、一人目で手を打つのでは。
でもやっぱ、月だよなぁ。小学生の頃、お年玉ためて買った10cm反射で、月のクレータばかり眺めていた頃を思い出します。私は月と惑星しか観ませんでした。星ぼしはあまりに遠く、しかし、月には、手が届くのです!
望めば、そう、望めば。
目当てはロケガ短編「ムーンフェイスをぶっとばせ」
軌道上というのは理想郷ではありません。そこはまず生理的に厳しい環境なのです。そこのところをキッチリ押さえた作品は、国産では珍しいです。
言ってみれば、怠けていた訳で、そう言うわけでこの作品、評価高めです。
症状の軽く、フツーの活動には特に何の支障も無いムーンフェイス、というチョイスもヤングアダルトの短編の題材として絶妙です。
ただ、ムーンフェイスを直すためにEVAやるというのは何とも。血を少し抜くのが一番楽なのでは。
目当てはただ一つ、「太陽の簒奪者」野尻抱介
ダーテーペアFlashとか銀河乞食ナントカとか読むかよ!いまさら敵は海賊、ってのもねぇ。往年の宇宙冒険SF傑作選、ってどこが?
さて、「太陽の簒奪者」判りやすい描写と説明、細部まで気の配られた設定は、ハードSFの持つ迫力を充分に感じさせてくれます。そう、ハードSFなのです。
ただ、細部では色々と疑問が。どうしてリングを黄道面に建造するのか?軌道に乗せるほうが宇宙機として面倒が無くて良いし、アステロイド迎撃とレーザ発振機構は統合して、完全に多重化したシステムにした方がシンプルだと思うし。
人物描写は、分量が多い割に効果が現れていないのが、逆に目に付きました。
しかし、スケール、描写は流石。このスケール感こそが、SFの醍醐味だし、野尻作品の真骨頂だとも思います。野尻さん、近年、この辺りが非常に巧くなったように思います。多少パターン化しているって気もしますが。
すばらしいです。もはやブギーポップ・シリーズであるが故の難も、問題ではありません。細かな点も、問題ではありません。
イメージとその描写力は一流、そしてあの、心の痛いところを視覚化してみせる、その幻視の力は他を圧倒して、なお余りあります。
でも実は、単純な物語で、実はひねった所も何も無く、そして読後に残るものは多分、夕暮れとペパーミントの後味。
良い物語です。
宇宙!消失!
太陽以外の全ての恒星が天空より消え、太陽系を取り囲む、事象の地平のような”バブル”が取って代わる。その意味はやがて明らかになるが…
読みはじめると止まりませんでした。サイバーパンク技法に今!の視点で描かれる、テク、そして未来描写。目も眩むような感覚、久しく感じなかった、ある種類の興奮。現在再読三回目に突入です。
ラストが、まるでエイリアン9のラストのように、へにゃっ、としりすぼみなのが難ですが、読んでいて「そうか、そうだったのか!」と、知られざる宇宙の秘密(笑)に触れることができる、というのは、何にもまして得がたい経験です。
それに、ふんだんに盛り込まれた、内面描写(…)の数々!自分に組み込まれた人工的な忠誠心について考察するくだり、そして観測問題!
内面描写、いっぱいあります。心理描写はこの作品の描写のキモです。但し、描写される心理状態はいづれも人工的なものですが。いやー、SFにおける内面描写とは、こうあるべきですね(本気にしないで)。
内面描写は遂に量子論と統合されたのです。内面描写がサイバーパンクに、更にハードSFになる日が来たのです。わっはぁ!
完成度に難がありますが、激賞します。SFとはこれだぁ!読めっ!
帰省のみやげに持っていきました。親父に読ませるためです。
内容は主に、以前盛んだった”独自技術保有論”の宇宙開発版に、最近の事情を混ぜたものです。国産技術でどうのこうのという話は、官庁のコントロール強化を促し、やる気の有るベンチャー企業を押さえつけかねないので危険なのですが、宇宙開発の意義についていまいち理解の無い中高年層には有効な一冊でしょう。
でも、中高年層じゃ無い人は読むこと禁止。
宇宙開発は、そういう理屈じゃ無いんです。本田宗一郎はそのテのみみっちい理屈に動かされていたのでしょうか?ライト兄弟は?ケンとリッチーは?
宇宙へ、行きたいんです。できれば、この思いを共有して欲しいと、願っています。
ロシア宇宙機、ロシアメカ好き好き人間には鼻血モノの、怪しい雑誌も順調に三巻目が発行されました。
ロシアメカのディティールに改めてクラクラ。特集はシーローンチ。ゼニットがいかに大きな打ち上げ機か、忘れていました。「Briz-M初飛行へむけて準備完了」…ってコレ、こないだカザフスタンに落っこちた、問題の三段目じゃないか!ひゃーヤバヤバ。推進剤はヒドラジン、比推力が325.5秒という性能じゃあ、今までどおりのブロックDMで良いんじゃないかという気も。
スタールトのトランスポーター、つまりSS-25の写真が見開きだったり、あやしい薬の記事があったり、うーん良い。
表紙が平野耕太&山田秋太郎。なんてこった。
とうとうCD-ROM版が出ましたが、店頭にならんだのがコミケ当日、しかもろくに使えない代物らしいという訳で、書籍版がクローズアップされる事となりました。
が、毎回思うことですが、ぶ厚いなぁ。分厚い分、マンガレポートの量の多さがちょっと腹立たしかったり。
で、そんな中から、良い塩梅な同人誌を紹介。
三日目の創作系、いわゆるオアシスでゲット。去年の夏コミでチェック入れてた人の作品なのですが、今回はオフセットでの入稿が間に合わず、A5サイズのコピー本として出ていた本をチェック。表紙は時間が無かった事を如実に物語る、手抜きなものですが、内容は作家性と特徴的な絵柄で読ませるものです。
特にその絵柄は、動感のある独特の技法で、絵の内容は非常にわかりにくいのですが、スタイルが読者をひきつけます。こういうきらきら光る掘り出し物こそが、コミケの醍醐味でしょう。
練り込みの甘いS.M.Hみたいな雑誌、と思ったら、元編集長の作った雑誌でした。しかし、ここまでフォーマットの似ているのを作ってどうするんでしょう。とりあへず沓沢龍一郎イラスト目当てで買いましたが、他は読むところ希薄。
待ちに待ちまくった第五巻、遂に登場!
白銀の世界に、深夜の綾金に、神楽総合警備は今日も出勤!轟く銃声、走る主人公、フリーズする電脳、おちゃめな美少女、縦に揺れたり下に落ちたり、大体のところドタバタそしてアクション!
だが、彼らは、彼女たちは知らないのだ。見えざるゲームは進み、ルールも変わった。彼らはただの駒だった。主人公は呟く「兵隊とサラリーマンは仕事に個人的動機を持ち込まない…」
見えないところで、ゲームは大きく動く。奴は知っているのか、奴には結末が見えているのか、あの丸眼鏡の向こうに。
今回の主人公、それは間違い無く役人、入江でしょう。「ブレイクダウン」での入江とその部下の、血の通わないやりくちには、ぞくり、ときました。素顔のその表情の無い目、闇と銃火の中に浮かぶ、入江のほんものの笑み。
そして物語に用意される、もう一人の主人公、成沢も戦いの中に身を投じることになる。彼女もやはり、物語の流れに翻弄されてゆくのだろうか。
そして更に脇役、そう、ハウンド隊員の一人、”水城隊員”の行方は!…「来月、結婚するんですよ」「二人目が今度生まれるんですよ」こんなお約束なセリフを言う羽目になりませんように。でも死ぬときは爆発バックか、隊長に看取られながら…
そうそうアニメ化!どうすんだよハッちゃんの血(個人的には緑とか青とかカラフルな奴を吐いてほしい。大量に)とか住吉の声優(不要)とか福岡ローカルネタ(全部余さず再現!)とか気になって、眠れなかったり眠れたりの毎日です。
で今月のエクセルは、市立アクロス学園!暗黒生徒会!食パンくわえて朝のハプニング!というのはなんというか、よくありすぎる脱線で、本当のところは、急転直下の直前、嵐の前というトコロ。7Pと17Pを見比べてみたり、宅急便の箱の中身(二日目かぁ、エクセル本ってどのくらい)を推測してみたり。
しかし表紙は久しぶり!「HELLSING」今回は大物の、そしてポイントマンの顔見せ。あと北春日部のおじいちゃん達も。
宇河弘樹の読切り「流れ星の夜」良いです。漫画として、観ていてすごくいいです。確かな背景物描画、線の整理のしかた、工夫されたコマ割り、そしてボケとおちゃめ。ネコ!踊り!今月はもうかなり幸せ。
犬上すくね「未確認の愛情」てめーらずるいやい。竿尾悟「迷彩君」アタマ2Pと爆破の際の愛国的叫びでちょい見直す。やっぱ俺等ってジオン国民だよな。
「TRIGUN MAXIMUM」外伝後編。ごつごつした質感の絵、乾いて、そして澄んだ雰囲気の物語。ラストの[END]が良い感じ。また、メカのディティールが涙モノ。
で、最後に「ジオブリーダーズ」厚生省衛生二課”ハウンド”彼らは激闘の中にいた。賭けるのは都市と核、そして生命。同じモノを、逆側から賭けるのは猫。
それを眺めるのは役人。何も知らないのは神楽。新入社員歓迎の酒宴は隠し芸大会へと展開してゆく。しかし新人の隠し芸、凄い。まやと蘭東の隠し芸、そして社長の隠し芸その二が気になるところ。この能天気な、核の重圧との対比がグー。細部の構成の妙がまたグー。