グローブ型水銀灯の改善
わかばだい天文同好会
グローブ型水銀灯の改善
グローブ型の水銀灯は、屋外照明の欠点をほとんど代表していると考えられます。詳しくは、資料「グローブ型水銀灯は本当に適切な照明であろうか?」に説明していますのでご覧ください。
「エネルギーの無駄」 、そして 「障害光」 の大きな原因となっているものです。
横浜市旭区にある 若葉台団地 で広く使われている グローブ型100W水銀灯 (左の写真)を良質の高圧ナトリウム灯で置き換える「実験」を行ってみました。
代替器具の選択
まず次の条件で代替器具を選択しました;
- いま使っている照明用ポールをそのまま使える事
- 100W水銀灯よりも省エネにつながる事
- いま以上の明るさを確保出来る事
- 安価であること事
- 眩しさの少ない事
この条件にあう物として、照明器具メーカから40ワットの高圧ナトリウム灯を紹介いただき実験に使いました。その結果を見てみましょう。
実際の改善例
下の写真が実際の改善の様子です。左が改善前のグローブ型水銀灯を使っていた場合、右が40ワットの高圧ナトリウム灯に置き換えた場合の写真です。二つの写真は全く同じ条件、そして同じ場所から撮影しています。
改善した照明器具では、地上の明るさが今までより確保されているのが分かります。メーカのデータから約二倍の光量が得られている事もわかっています。 これまで使った水銀灯より小さなランプを使いながらより明るい照明が実現しました。
写真−1 | 写真−2 |
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40W高圧ナトリウム灯
この改善で使われた照明器具が40Wの 高圧ナトリウム灯 で、つぎの特徴があります:
- 100W水銀灯に比べ55%の省エネ
- 照明率アップ1.7倍
- ランプの寿命は、100W水銀灯と同等(12,000時間)
- 眩しさ(グレア)を軽減
若葉台で広く使われているグローブ型の照明をもしこの例にある高圧ナトリウム灯に置き換えた場合、地上では、これまで以上の明るさを確保しながら、電力費用の55%を削減出来る事になります。これは年間約5百万円に相当します。
残るグレアの問題
今回実験した高圧ナトリウム灯は、光源が灯具の傘の中に入り、グレアの少ないと言われるタイプです。しかし実際に設置した限り、高圧ナトリウム光源の輝度が高いこととドロップ型レンズの為にまだまだグレアが残っている事が分かりました。まだ改善の余地があります。
オレンジ色の光源
照明の専門家の間では、オレンジ色の光源を日本人は好まないという定説があるようです。この原因には二つあったと考えられます;
- 照明具自体が適切でなく眩しさが在ったこと。ナトリウム灯の輝度が高く水銀灯以上に防眩対策が必要であること。
- ナトリウム灯の利点が知られていないこと(水銀灯の2〜3倍の効率、視認性の良さ)
今回の実験で使った灯具は、眩しさをある程度抑えており、オレンジ色の光に対する苦情は少なく、逆にこれまで以上の明るさが確保出来ていることが評価されています。
明るさ、省エネの点では申し分のない性能を持つこの照明具の「さらなる改善」及び同様な良質の照明開発を照明メーカにお願いしたいと思います。
この実験から具体的な照明の改善がコミュニティの中で実現出来る事がハッキリと分かりました。
悪い明かり、良い明かり
最後に悪い明かりと良い明かりの比較を図で見てください。図 - 1は、まさに上の写真-1で使われたグローブ型の照明です。光が必要な地上に届くのはわずかで、ほとんどの光が横方向と上方光に向けられ無駄になっています。地上に届く光が少ないため照明は大変暗いものになっています。
図 - 1 | 図 - 2 |
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図の提供はマクドナルド天文台
これから私たちが使ってゆかなければならないのは、エネルギーの無駄の少ない、かつ障害光のない図 - 2の様な照明です。
このタイプの照明は、「フルカットオフ型」照明と呼ばれ、アメリカを初めとする諸外国では盛んに屋外照明で使われるようになっています。アメリカ、ロスアンジェルス市の道路照明は今全てこのフルカットオフ型に置き換えられています。
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わか天は、 国際ダークスカイ協会日本支部(IDA Japan Section) の幹事です。
Last Update August 31, 1997