Best Viewed with IE6.0/NN7.0 JavaScript // ON StyleSheet // ON
|
ビルボ・バギンズの系図。バルボはマンゴの父となり、マンゴはバンゴの父となった。バンゴは、アイゼングリム2世の子、アイスムブラス3世の子、フェルンブラス2世の子、フォルティンブラス1世の子、ゲロンティウスの子ベラドンナと結婚し、この二人の間にビルボが生まれた。
指輪戦争のころから70年以上前のおはなしです。 第三紀2941年の4月も終わろうとするよく晴れた日の朝(*1)、ドアの前で一服楽しんでいたビルボの前に、突然魔法使いガンダルフが訪ねてきました。 「わしは冒険にのりだしてくれる仲間を探しているところだ」(*2) 「ざんねんですが、わたしは冒険なんかしたくありません。いつかまた、お茶にでもきてください。あしたにでもいかがです? では、ごめんなさい!」 ところが、そのなにげなく言ったお茶の誘いに現れたのは、ガンダルフだけではありませんでした。 ドワーリン、バーリン、キーリとフィーリ、ドーリとノーリとオーリとオインとグローイン、さらに、ビフール、ボフール、ボンブールと、最も身分の高いトーリン・オーケンシールドといった13人のドワーフたちでした。 あいさつをかわし、さらに食事も済むと、ドワーフたちはそれぞれ楽器を持って、歌をうたい始めました。 寒き霧まく山なみをこえ やがてトーリンがはなし始めました。 「わしらは夜明け前に、長い旅に出なければならぬ。旅に出れば、わしらのうちの何人かは、生きては帰れないかもしれぬ。この仕事の目的は――」 ここまで言ったとき、トーリンのはなしはビルボのさけび声で、腰をおられてしまいました。「生きて帰れないかもしれない」ということばに、あわれなビルボは、もうこれ以上がまんしてきいていられなかったのです。 グローインが言いました。「ふん!あの男が、やれますかな。あのさけびは、こうふんというよりは、きもをつぶしたためのようでしたね。そもそもわたしは、あの小男を見かけたとたんから、忍びの者というより、八百屋のようだと思いましたよ」 それを聞いたビルボは言いました。「失礼ながら、あなたのおっしゃったことを立ち聞きしてしまいました。いったいわたしになにをせよとおっしゃるのか。いってごらんなさい、してみようじゃありませんか。ここから東のはてへ歩いていき、いやはての砂漠のおそろしい長虫のとぐろをまいたやつと戦うべしというのなら、戦いましょう。いったいわたしの大大大大おじにうなり牛のトックというひとがありましたが――」 そこへガンダルフが、こわい顔をしてわってはいりました。「わしはバギンズ君を忍びの者としてえらんだ。それで、諸君らにはじゅうぶんだろう。ところでトーリン。これはあんたの父さんからあずかったものじゃ」と言って、竜が棲む秘密の入り口を示した地図と、鍵をさしだしました。 不死のデューリン(ドゥリン)・・・・デューリン六世――ナイン一世――スライン一世――トーリン一世――グローイン――オイン――ナイン一世――ダイン一世――スロール――スライン二世――トーリン二世 そのむかし、ドワーフの先祖は、霧ふり山脈の東にモリアの坑道を掘り、そこに住まいを定め大いに栄えた。デューリン六世のころ、貴重な金属ミスリルを求めて、地中深く掘り進めていった。そのことであの恐ろしい生きもの、バルログの眠りを覚ましてしまった。かくして、デューリンも、又その息子ナインもこれにころされてしまった。ナインの息子スライン一世は残された一族を引きつれ、はなれ山へ向かい新たな工事を始め、山の下の王となった。彼はここで、山の精髄がこりかたまった大宝石、アーケン石を手に入れた。スライン一世の息子トーリン一世は、より資源が豊富で手つかずのたそがれ連山に移って行った。ところがここには、またしても恐ろしい竜がいた。竜は彼らの作り上げたものを奪い、さらに、ダイン一世と息子フロールの命を奪った。ダインの息子グロールはくろがね連山に去り、世継ぎのスロールはアーケン石を持って、父の弟ボーリンとはなれ山に戻った。エレボールに戻ったスライン一族は、くろがね連山一族とのひんぱんな行き来で富み栄えた。その富のうわさは遠く広まり、竜の耳にも入ることとなった。当時最大最強の黄金のスマウグが、突然はなれ山に降り立ち、そのあと王国が滅び、谷間の町が無人となるまでに、多くの時間はかからなかった。秘密の通路から辛うじて脱出したスロールと息子のスライン二世は、家族(この中にスライン二世の息子トーリン・オーケンシルドもいた)とともに南に去り、長い流浪の旅に出た。それから何年かがたち、今は年老いたスロールは、ドワーフの七つの指輪の最後の一つを息子スラインに与え、『スマウグめに復讐するのはおまえとお前の息子たちに残しておくぞ」と言い残して彼のもとを去った。伴のナルとモリアに向かったスロールは、赤角山からおぼろ谷へ降り、東門から一人入っていった。ナルは入口近くで何日も主人の帰りを待ち続けた。そしてある日、かわりはてた老ドワーフの死体が、戸口前の石段に放り出された。「今はだれがここの王なのか、もしやつの家族が知りたがったらな、やつの顔にその名が書いてあらあ。おれがやつを殺したのよ! おれがここの主よ!」その額には、アゾクという文字が焼きつけてあった。ドワーフ族の最長老であるデューリンの世継ぎに加えられた侮辱は、全ドワーフを激しい怒りで満たした。スラインたちは山の下の洞穴にアゾクを探し求めながら、火のように燃える怒りによって、勝利を我がものにしていった。ドワーフたちの前から逃げ去ったゴブリンたちは、モリアに集結した。こうしておぼろ谷の戦いは始まった。この戦いにおいて、スラインとトーリンは傷を負い、フレリン、フンディンは討ち死にした。くろがね連山からかけつけたグロールの息子ナインは、門の前でアゾクと戦い命を落とした。その勝ち誇ったアゾクの前に、赤いまさかりをを持ったナインの息子、鉄の足のダインが現れ、逃げるアゾクの首をはねた。ダインは言った。「われわれはカザド=デュムの中には入りません。あなたもお入りにならないで下さい。デューリンの禍(*3)が、あなたを待っています。デューリン一族が再びモリアを歩くまでには、世の中が変わり、われわれ以外の別の力が出現しなければならないのです」そしてダインは、くろがね連山に戻って行った。またスラインとトーリンもこの地を去り、エレド・ルインの東を仮の住まいとした。何年かが過ぎ、スラインははなれ山への思いが強くなり、別れを告げて、トーリンの前から去って行った。その後スラインが死人占い師(*4)に捕らえられ、ドル・グルデュアの地下牢に入れられ、拷問を受け指輪も奪われ死んでいったことがわかったのは、ずっと後になってからである。 ガンダルフは地図を示しながら言いました。「入口ノ高サオヨソ1メートル半、ハバ3人ナラビテ歩ケルテイドと、ルーン文字で記してある。この入口がどんな方法でかくされてきたかはわからない。それがドワーフのやり方じゃ。東への道を知っているわしの見つもりでは、長くかかるぞ」 ビルボが大きな声で言いました。「きんちょう、きんちょう! わたしの言うことを謹聴ねがいます。東へ出かけて、目で見て、調べるべきだと思います」 こうして一同は、うらうらと晴れわたった朝、荷物をどっさりつけた小馬に乗って、冒険の旅にでました。 (*1)ホビット庄暦は、一年は常に週の第一日である土曜日から始まり、そしてどの年も同じ日付が同じ曜日を持つことになっていた。「水曜、ガンダルフとお茶会」とあることから、水曜日は26日、出発は翌27日になる。 (*2)突然ガンダルフがビルボをを訪ねたことは、やや唐突に思えるだろうが、その経緯は、河出書房新社刊『終わらざりし物語・下 エレボールへの遠征』を参照されたし。 (*3)バルログを指す。カザド=デュムに王国を築いたドワーフの王デューリンによって、地底深くひそんでいた悪霊バルログが目覚めさせられたことから、こう呼ばれる。 (*4)やみの森の南西部ドル・グルデュアを拠点としていた悪の力。後にサウロンであることが判明。 それではここで「ヒツジのあぶり肉」に進む前に、手始めに問題です。 |