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漱石にかぎらず「高等遊民」は,高等教育を受け大学を卒業しても,官僚とならず(なれず)親の資産(仕送り)で生活する人たちを指しています.
当時大学に行くこと自体がかなりの学費が必要とされることであったので,高等遊民を生み出す階層的な背景は最初からあったわけです.つまり資産を持っている人の子弟が高等遊民でした.
さて,「高等遊民」になぜなったのか,ということですが,これは漱石作品の中では,それぞれ描かれている通りです.代助は,社会が悪いから社会で働きたくない.「行人」では,就職先がないからやむなく,「こころ」の先生は,働かなくてもよい資産があったから,というようにです(「それから」「行人」「こころ」).
ところが,明治の終わりごろに社会問題になった「高等遊民問題」は,高等教育機関を卒業しても,すでに席が埋まっていて,彼らの望む就職口がなかったので,プーたれて就職しなかった,ということのようです.→参照:石川啄木「時代閉塞の現状」