鑑賞日:2008.03.14/公開日:2008.03.01
「ライラの冒険 黄金の羅針盤(THE GOLDEN COMPASS)」
(演)ニコール・キッドマン、ダコタ・ブルー・リチャーズ、サム・エリオット、エヴァ・グリーン、ダニエル・クレイグ
皆さん、こんにちはー。
今日ご紹介するのは、イギリス人作家のフィリップ・プルマンの小説を映画化した
「ライラの冒険 黄金の羅針盤」です。
原作は、「黄金の羅針盤(1995)」、「神秘の短剣(1997)」、「琥珀の望遠鏡(2000)」の三部作で構成されており、
今回はその第一部を映画化しています。
私は原作を読んでいないのですが、評価の高い原作の映画化とあってとても楽しみにしていた作品です。
ちなみに、コールター夫人役のニコール・キッドマンのキャスティングですが、
原作者のフィリップ・プルマンからニコールの元に手紙が送られてきて、
「小説を書いていたとき、あなたをイメージしていました。だからぜひ、コールター夫人を演じてください」とあったのだとか。
原作者たっての願いでキャスティングされるとは、役者冥利に尽きるでしょうね。
さて、ここで簡単なあらすじを紹介しましょう。
我々の暮らす世界とは似て非なるパラレルワールドのイギリス・オックスフォード。
この世界の人々は、“ダイモン”と呼ばれる動物の形をした守護精霊と一心同体に暮らしているのだ。
勝気でおてんば娘のライラ(ダコタ・ブルー・リチャーズ)は、ダイモンのパンタライモンや親友ロジャーらと共に、騒がしい日々を送っていた。
しかし、街では謎の組織に次々と子どもが連れ去られる事件が発生し、親友ロジャーも姿を消してしまう。
「もし、相手が失踪したらお互いに探しあう」という約束を交わしていたライラは、
迷わずロジャー救出の旅に出る。
そして旅立ちの日、彼女は学寮長から黄金色の真理計(アレシオメーター)を手渡される……。
予告編の映像がすごそうだったので、かなり期待していたんですが……、ちょっと「あれ?」という感じでした。
映像は思っていた通り迫力満点だったのですが(アカデミー賞視覚効果賞を受賞しました)、
ストーリーがどんどん進んでいってしまうんです。
三部作の第一部である本作は、物語の背景、登場人物・動物などの紹介も担っているはずですが、
本当にごく簡単な説明だけ。
ライラの世界には、人間の言葉を話す鎧熊と呼ばれる巨大なシロクマ、魔女族、ジプシャンなど、
我々の世界には存在しない種族が共存しているのですが、その特徴が十分説明されていません。
ビジュアル的には説明されているんですが(鎧熊はまんま鎧着てますし、魔女は空を飛びます)、
その信条や生き方などの説明がかなり薄っぺら。
映画の中で山場はいっぱいあるのですが、山場へ至る物語がおざなりのため、
結果的に山場の緊迫感もその後の余韻もありません。←もったいなさすぎ。(-_-;
多分、お子様にも鑑賞してもらおうと原作のボリュームに対して上映時間を短くしてしまったので、
深い説明がしきれなかったのだと思います(人気ファンタジーを映画化する際に陥りやすい問題。つまり、原作にはきちんと描かれているはず)。
でも、この上映時間を短くしたのはミスだと思うなぁ。
原作を読んでいない子供は、ストーリーについて行くのに精一杯で“なぜそうなったのか”
ということまで理解できないと思うし、物語への理解も表面的でしかないから。
それどころか、映画を見慣れていない子は、ストーリーにすらついていけないかもしれません。
であれば、あと30分くらい長くして、中学生〜大人向きに的を絞った方がよかったのではないでしょうか。
物語の緻密さを犠牲にして表面的なストーリーをなぞるだけでは、大人の原作ファンは満足しないと思うのです。
原作に大人の固定ファンがいるファンタジーというのは、何層にも折り重なった緻密な設定や描写が評価されているのだから。
ただスゴイ映像見せればいいだろ的な作り方(「ハリポタ」シリーズとか)は、個人的にどうも賛同しかねます……。(-_-;
色々と厳しいことを描きましたが、主役のダコタとニコールの演技、そして特殊効果をふんだんに使った映像は見もの。
第二作、大三作と尻上がりに出来がよくなることを期待したいです。
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