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エッセイEssay


エッセイ / ダンスと私

1.私のダンス哲学
2.三年待っても師を捜せ
3.本場イギリス仕込みの踊り
4.肩が上がっとる!
5.男女が身体を寄せて踊るということ



1.私のダンス哲学  
 
 「ダンス哲学」とはまた固いことを、と思われるかもしれませんが、このことは私が学生時代、ダンスを習っていた時に思いついて、一緒にダンスを習っていた友人達に話したことで、その頃この話を聞いた友人は「木下はまたややこしいことを言うなぁ。ダンスだけ楽しめばいいじゃん」みたいに言っていたものです。

 私がダンスというものは、男性が女性を上手くリードし、女性は上手に男性をフォローしていくことが一番大切だと考えていた時、ふとこのことはダンスだけに言えることではなく、対人関係、ひいては人生そのものにも当てはまる真理ではないかと思いあたったのです。

 男性はダンスを知らない初心者の女性でも、自分のリードのレベルを高めることによってうまくリードすることが出来、女性は自分のダンスのレベルを高めることによって、あまり上手でない男性にもうまくフォローしてあげて、男性を満足させてあげることができる。

 このことは、対人関係にもまったくそのまま当てはまるのではないかと思いました。自我意識が強くてプライドが高い人は、何が何でも自分の主張を通そうとします。このようなタイプの人がぶつかると口論になり、喧嘩別れになりがちです。

 しかし充分に人格が陶冶されてくると、相手の言い分にも耳を傾けて、たとえ90%相手に非があると思っても、自分の10%の至らないところを認めてそれを直そうとするでしょう。人格的に成熟してくると大きな包容力をもって、相手を包み込むことができるようになります。

 私はこのことがダンスにも言えると思ったのです。女性の重心の位置に気がつくということは、コミニュケーション的にいえば、相手がいまどのように考えているか(感じているか)に気づく思いやりの心になります。女性を引っぱらないでリードするということは、相手に負担を与えずに、知らず知らずのうちに相手の望むところに導いてあげることに通じます。

 女性をもしうまくリード出来なかった時に、それは自分のリードのレベルがまだ至らないからだと考えることは、相手とうまくコミニュケーションが取れない時、それはまだ自分の包容力が充分に高まっていないのだと考えることに通じます。

 私はダンスを学びながら、これはただダンスを学んでいるのではない、人生に於いて最も大切な生き方そのものを学んでいるのだと考えたのです。私がダンスにおいて「リードとフォロー」ということにこだわりを感じるのは、実はこのような理由からなのです。

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2.三年待っても師を捜せ  
 
 私のダンスの恩師である安田羊佑先生は、若い頃、全日本ダンス大会で優勝された経験をお持ちで、現在は日本ボールルームダンス連盟本部相談役や、山口県舞踏教師協会の会長をされておられる、日本のダンス界の大御所のお一人です。

 何事も習い事は師匠選びが重要で、「三年待っても師を捜せ」と言う言葉は本当に真実だと思います。恩師は若い頃から日本のダンス界は視野にはなく、いつもイギリスから最新のレッスン書を原書で入手し、それを元に我々を教えて頂いていました。現在でも年に何回か渡英され、また英国のトッププロを山口に呼んで講習会を催されておられます。

 いま日本のダンス界は、色々と団体が別れて来て勢力争いがあっているようです。私はプロを目指そうと考えた当初から、そのようなしがらみには縛られず、自分の目指す理想のダンスを追求していきたいと思っていました。

 具体的には、私は私の恩師の英国直輸入の本場のダンスを、この熊本の地で広めたいと思っています。

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3.本場イギリス仕込みの踊り 
 
 私の恩師が本場イギリス仕込みの踊りを私に教えてくれたという話を書きましたが、私が、恩師のダンスは本物であるという自信を深めた一つ出来事が、学生時代にありました。

 その頃一緒に競技ダンスを習っていた先輩が、西日本ダンス選手権に出場しました。その先輩はまだカップルを組んで間もなかったので、決勝まで残るのは難しいだろうと先生は言われていました。競技ダンスの世界では、5年10年カップルを組んでいる人達がざらです。

 ところがその時の特別審査委員が、その年の世界チャンピオンのイギリス人のカップルで、西日本地区の上位の常連の顔ぶれをまったく知らなかったことが幸いして、先輩達のカップルは運良く決勝まで残ったのです。しかし流石に決勝の時には、その世界チャンピオンの審査員は、先輩達の踊りにはほとんど目もくれなかったそうです。

 ところが、審査結果発表を聞いてびっくり、その先輩達のカップルが優勝してしまったのです。決勝で審査委員が目もくれなかったのは、他の組と踊りが全然違ったからだろうと先生はあとから言われていました。(つまり準決勝までを見た時点で先輩達の踊りが他の組に比べて抜群の内容だったので、優勝は既に先輩達の組と決めて、決勝の時にはそれ以外のカップルを見て2位以下の選考に専念したと言う意味です)

 他の組と一番違った点は、フロアークラフト(同じフロアー内で沢山のカップルが同時に踊るため、時として、まわりのカップルとぶつかりそうになるが、そんな時にも相手の動きを事前に察知して上手によける技術)が上手かったところだとも言われました。つまりステップが固定的でなく、こなれていたとでも言うのでしょうか。また他の組は基本はしっかりしていたけれど、踊りが固かったと言われました。

 あの時私たちが目指していた踊りが、時の世界チャンピオンに評価されたという事実が、それ以後の私にとっても大きな自信となっています。

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4.肩が上がっとる!  

  ダンスではムービングも大切ですが、ホールドはそれ以上に第一印象として大切です。いくら上手な踊りをされる人でもホールドの肩が上がっていたら、それでもう台無しになります。

 私は中学・高校時代に体操をやっていまして、そのお陰でダンスにも色々と役立ったことが多かったのですが、この「肩が上がる」というのは逆に癖になっていてなかなか直りませんでした。先生にも何度か注意を受けたのですが直らなくて、ある時見ていた先生が「肩が上がっとる!」とひとこと言われて、そのまま部屋から出て行かれたことがありました。流石にそれが大変こたえてその時以来必死になって肩を上げない練習をしました。

 ダンスをしていない時も意識的に肩を下げる(イメージ的には押さえる)ことを練習しました。そのお陰でどうにか肩が上がらなくなりました。やはり何事も、意識的・継続的練習しかないようです。

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5.男女が身体を寄せて踊るということ 

 社交ダンスを始められて女性の方がまず少しびっくりされることは、想像していたよりも男女が身体を寄せて踊ることではないでしょうか。男性はもともと女性に接近することに潜在的にあこがれている部分がありますので何ともありませんが、その逆に女性は警戒してしまうのが普通ですから抵抗感を感じられることも多いでしょう。

 そもそも社交ダンスとは、紳士淑女の国である英国で、紳士が女性をおおっぴらに抱くために考案された屋内スポーツである。と言うお話もあります。

 それはともかく、モダンの種目においてきちんと踊るためには、コンタクトポイントと言われる男女が身体を接する部分で接しながら踊らなければならないと言われます。このことは逆に言うと、必要以上に抱き合ってもいけないということにもなります。必要以上のコンタクトはお互いに窮屈になり、踊りのスケールを小さくしてしまうマイナス要因ともなります。

 一般的に踊りの一体感を出すためには、やはり男女お互いに出来るだけ接近している方が良い場合が多いです。ただしまっすぐに接するのではなく、あくまでもホールドの状態のバランスで左右にずれている必要があります。

 結論としては、モダンの場合はできるだけ身体を接近している方が一体感のある良い踊りが踊れることになり、それを拒否し合っていては、やはりそれだけの踊りになってしまうでしょう。

 私が大好きで私淑しているプロであるルカ・バリッキは、そのレッスンビデオの中で、ダンスを踊る場合の男女の身体の距離は「1センチ」であるべきだと言っています。私はこのことをビデオで初めて聞いた時に「これだっ!」と膝をたたきました。自分自身でも長い間、男女のコンタクトはどのようにあるべきかという迷いを持っていたのですが、その最高の答えを得た思いでした。激しく動くモダンダンスの中で1センチの距離を保つことは大変難しいことではありますが、究極の目標としてまさにそのとおりだと思います。

 しかしこれはあくまでも競技ダンスなどを想定してのことですから、それ以外の普通の社交ダンスの時に、例えば見も知らずの相手の人に誘われた場合など、そんな身体を近づける必要はないでしょう。

 もっと言えば、ダンスパーティの時には男性から誘われたらお受けすることがエチケットだと言われますが、もしエチケットをわきまえない感じの悪い相手だったら「今休んでいますので」とか言ってお断りすれば良いのです。また踊っている時にもあまり親近感を感じない相手の場合は、何もコンタクトポイントなどにこだわることもなく一定の距離を置いてホールドすれば良いのです。そして感じの良い相手だったら、思い切って身を任せれば良いのです。あ、違うか(^_^;)。
 

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