津島通信

SEPTEMBER 2000
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◆CONTENTS◆


【きむたく日記】

(暇な時に更新しております。)

今月のスケジュール(ゼミ生向け)

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 ¶ 西田谷洋氏『語り 寓意 イデオロギー』2000.3.15,翰林書房より刊行,4500円也!

 ¶ 真杉秀樹氏『反世界の夢 日本幻想文学論』1999.12.10,沖積舎,3500円

     T部は,夏目漱石「夢十夜」,泉鏡花・谷崎潤一郎・横光利一・梶井基次郎・中島敦・山川方夫の論考,U部は中井英夫論,V部は平野啓一郎「日蝕」評などがあります。

 ¶ 玉井敬之監修『漱石から漱石へ』2000.5,翰林書房より,刊行中。お値段,8,000円(税別)


「きむたく日記」

9月22日木曜日雨

     20日は教官会議・教室会議と会議続きで,サッカーのブラジル戦を見損ねて残念だったが,決勝トーナメントに出場できたので胸を撫で下ろす。後半の日本の攻撃を見ていると,2・3点は取れていたように思うのだが……。
     昨日は有給休暇をとって,1日遊んだ。オリエント美術館で,古代ギリシア展を見てくる。壺や皿に描かれた(壺絵),古代ギリシア人の生・愛・死がテーマである。やはり印象深かったのは同性愛で,皿に堂々と描かれている。異性愛よりも同性愛(少年愛)を上位に置く,男尊女卑の国であったことが良く分かる。その他,神話のバッカス神にも伺えるように,随分ワインを愛飲しており,それは主としてフランス・ドイツ・イタリアなどに継承されることになるのだが,当時は水で薄めて蜂蜜を入れたりして飲んでいたという事だ。衣装も布をクリップで留めて,身体を包み込むように着ている点で,日本の着物に近いという印象をもった。衣装が,身体への拘束性を強めてくるのは,キリスト教があるのかもしれない。
     帰宅してオリンピックの競泳を見る。田中雅美の涙にもらい泣き。柔道の井上康生の内股1本は凄かった。ギル選手が空中で一回転させられていた。あんな内股は見たことが無い。

     今朝の朝刊を読むと,小沢書店の倒産(負債6億円)が報じられていた。磯田光一著作集や,最近では石崎等氏の漱石論を出していたのだが,惜しまれることである。昨日,私学事業団の補助金を定員割れのためにを受けられない地方私立短大の数が増加しているという報道があったが(NHK),それは主に英文学科・国文学科をもつ短大らしい。都心でも国際文化学科(英・国文の改組したものが,この名称を使う。言語文化も同様)の定員割れが生じているということだ。詳細は,私学事業団のHPの『月報私学』参照(アクロバットリーダーが必要)。TVでは,「少子化の影響」などと説明していたが,それなら他の学科も定員割れを起こすはずである。小沢書店の倒産と,今に始まったわけではないのだが,文学系への需要の低下は通底しており,一つの文化の終焉の兆候をまた一つ刻んだようだ。
     帰宅するまえにBBSをチェックすると,佐藤泉さんが書き込んでいてくれた。しかも佐藤さんと同姓同名の弁護士さんの競馬ネタが,「思わぬ方」の「生き様」を炙り出すことにもなってしまっていたので,大笑い。それともこれは,佐藤さんに情報提供しただけなのかなぁ?
     誤解でしたら,ごめんなさい。でも,書いてしまっているんですけどね(笑)。

9月18日月曜日晴

     昨夕の,オリンピックサッカー日本対スロヴァキア戦の視聴率は40%だったようである。前半とは一転した後半の攻撃は,圧巻の一言。しかし,確実に取れていたゴールが2,3あった。采配でも,なぜ中村を下げたのか分からない。一番最後に投入したHさんは,こけたり外したりで,「決定力不足」といわれていた頃の日本選抜の城選手を思い出させてくれました。悪夢?
     ブラジルがよもやの敗戦をしたため,今度日本がブラジルに負けて,南アフリカがスロヴァキアに勝つと,日本は決勝トーナメントに出られなくなる。薄氷を踏むような思いとはこのことか。中田英も森岡も,イエローカードの累積でブラジル戦には出場できないのだ。

     昨日は紀伊國屋書店と丸善を廻って,新刊を買ってきた。佐藤さんの本も探すが,「Xなる人生」しかなかった。なぜだ?三浦哲郎「おろおろ草紙」(講談社文芸文庫)を読む。天明の飢饉を扱う中篇で,圧倒的な迫力で,ぐいぐい作品に引き込まれた。いうまでもなく飢餓状態の人間の陥る描写は凄まじい。主人公でなくても,「おろおろ」するしかない。飢えた息子を鎌で殺害し,自分も自殺しようとした父親に,嫁ぎ先から戻されてきた姉娘が,弟を食うと言い出し,父親と争う話が凄まじい。姉娘は妊娠しており,その本能が「共食い」に走らせるのであろうか。動物=女,人間=男という図式が気にならないではないが,ラストはこの作家の力量を示す。
     飢饉の場所でも飢える人間とそうでない人間がいたことを説く川村湊氏の解説も良い。報道によると,また「誰でもいいから殺したかった」という輩が出てきたが,中・高校生には是非読んで欲しいものだ。「命」というもののモンダイが,ここにはある。
     今日は研究室のゴミ出しをして,論文書き。夏期休暇もあと僅かになり,そろそろ講義準備もしなければならない。学生もキャンパスに戻ってきており,成績票を見せ合って「可だよー,むかつくー」とか言ったりしていた。

     生協のブックセンターで書籍を購入。今月の新刊『ビアス短編集』(岩波文庫)中「月明かりの道」は,芥川の「藪の中」の種本である。ビアスは,良い。

9月16日土曜日曇

     今日は台風14号の影響で風が大変強い。昨日からあちこちで運動会が開催され,オリンピックも開幕した。男子サッカーも,順調な滑り出しで,これからが楽しみである。順調でないのは,研究の方で,今日も研究室で論文書きに勤しむ。オリンピック番組を観たいのはやまやまではあるが,「遠征」が多いので,怠け者も寸暇を惜しまざるを得ないのである。
     昨晩新刊のチェックをしていたら,佐藤泉さんが漱石論を出したのが分かった。それとは別に競馬をしたり弁護士だったりする佐藤泉さんもおいでのようで,ちょっと面白かった。競馬の本(早稲田出版?),書いてませんよねぇ(笑)。

9月13日水曜日晴

     申しわけありませんが,以下身内ネタです。関心の無い方は,無視してください。

     研究室で,「少女革命ウテナ」(さいとうちほ,小学館)5巻と,劇場版を読む。劇場版は兄妹姦を扱うのでとてもついて行けなかったが(30過ぎの妹=主婦あり),前者の方は,男性中心主義を女性の側から相対化するばかりでなく,女性像そのものを脱構築していこうとする物語とよめた。
     ウテナとは,男性中心主義社会の女性からみた理想の女性像(女性の優しさと男性の強さを持つ両性的存在と一応図式化しておく)だが,ウテナはディオス(光=天使)―「世界の果て」(闇=悪魔)というユダヤ―キリスト教的世界観を反映した世界観における争闘に巻き込まれいく。そこで民衆・女性的なものは,庇護の対象であり,「王子さま」とは救世主(イエス・キリスト)の役割を意味している。女性であるウテナが「王子さま」になるということは,いうなればキリスト教において救い主のセクシュアリティが男性であり,男性性が特権化されていることに対する女性の側からの異議申し立てを意味することになる。しかし女性が救い主=「王子さま」になることには,文化的背景やセクシュアリティの点から無理がある。「決闘者」たちとの戦いは,最初からウテナという「薔薇の花嫁」を選ぶための選抜の儀式であったことが「世界の果て」によって明らかにされるが,それはまたウテナがディオスという男性性と合一し女性的なセクシュアリティを中性化していくための過程としての面も持つという点で見逃せない。決してウテナが女性のままで救い主=「王子さま」になることはないのである。そして最終的にディオス―ウテナと同一化し,「世界の果て」なるダークサイドの力を中和し融合・消滅する結末において,世界は光と闇の二項対立を失い,無秩序状態に帰すことになる。解決されたのは,光と闇による世界を統一する権力闘争,すなわち男性中心主義的な権力闘争であって,ウテナは結局その闘争の媒材(=巫女)であった。男性中心社会に対する女性性の問題は,最後まで放置されてしまう。
     従って,この結末部に女性による女性のあるべきモデル像は示されていない。結末部で兄である「世界の果て」の言いなりであった従順なアンシーは,学ランを着て異装の女性としてウテナ化はしているが,「王子様」(救世主)ウテナの擬制にすぎない。だから,「ウテナさまを捜しに」というアンシーの言葉があるのである。そしてようやく女性の側から上がった,「王子様」(救世主)ウテナを求める声も,それは「支配者」がいなくなり自立しえたアンシーの声であり,例えば若葉などの声ではない。新たな女性像は,ポスト男性中心社会において,ペンディングにされたままなのであり,「世界はまだ革命されていない」(アンシー)わけである。こうして,女性による「革命」物語は,結局男性社会の争闘のあとに続く二次的なものと位置づけられる。また,ヒーローものという英雄崇拝の形式(男性的物語)を模倣した,この物語形式自体に,すでに女性物語としての限界が内包されている。すなわち男性的物語のモデルを踏襲しないでは物語ることが出来ない,女性の社会文化的問題が構造的であることが指摘できるのである。

     あとで,小谷真理の「花マル闘争--カルチュラル・スタディーズとジェンダー・スタディーズ」(所収雑誌,刊行期日不明。友人から貰ったコピー)の「ウテナ論」も読んだが,殆んど視点が違う(笑)。なぜ少女漫画を読んで,雑文を書いたかというと(この間3時間),「痴的」好奇心としか言いようがない。さ,帰ろ。

 

9月12日火曜日雨

     昨夜から東海地方は大変な模様だ。新幹線が止まっていたが,午後2時頃から運転再開したとのこと。出張でしばしば利用するので,今回のケースには,ゾッとさせられた。あんな車内で1泊するなど絶対体験したくもないが,してしまった皆さんは,本当にお気の毒さまである。水害に遭われた方たちには,申し上げる言葉が無い。僕も床下浸水までは何度か経験した事があるので,静かに水が迫ってくるあの感じや,事後の処理の大変さは身を以って知っている。今年は暑さといい,この秋雨前線&台風による水害といい,結構大変な年回りである。
     研究室で,4年ゼミ生の卒論指導。とうとうノートPC(FMビブロだそうだ)を購入したと嬉しそうにいうので,「今何してんの?」と聞くと,「とりあえず,箱から出しました」
     (ズデデ←椅子からこける音)

9月1日金曜日晴

     新学期がはじまり,各校では恒例のように防災訓練が行われる。新聞報道で,バット事件の一連の審理が終わったとの報道。それで,昨日家庭裁判所前を車で通ったとき,前をTV局がウロウロしていたのが理解できた。いじめていた「A」の保護者が賠償を求めているようだが,気持ちは分かるがなんか違うような気もする。
     研究室で,雑務・論文読み・書き&読書。
     ゼミ生(男)が,国語研究室でお勉強。「岡山の結果は出たの?」と聞くと,「まだです」との返事。
     「そう。楽しみだねぇ」