津島通信

DECEMBER 2000
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◆CONTENTS◆

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【きむたく日記】

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kimutaku@cc.okayama-u.ac.jp

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 ¶ 小田島本有氏『小説の中の語り手「私」』2000.10.20,近代文芸社,2,000円(税別)

 ¶ 玉井敬之監修『漱石から漱石へ』2000.5,翰林書房より,刊行中。お値段,8,000円(税別)

 ¶ 西田谷洋氏『語り 寓意 イデオロギー』2000.3.15,翰林書房より刊行,4500円也!

 ¶ 真杉秀樹氏『反世界の夢 日本幻想文学論』1999.12.10,沖積舎,3500円

     T部は,夏目漱石「夢十夜」,泉鏡花・谷崎潤一郎・横光利一・梶井基次郎・中島敦・山川方夫の論考,U部は中井英夫論,V部は平野啓一郎「日蝕」評などがあります。


「きむたく日記」

12月26日火曜日

     10:00からゼミ生の卒論指導.指導が終わってから,図書館に論文のコピーをしに出かける.午後研究室で論文を読んだり,草稿を書いたり,読書の合間に雑用をこなす.
     たまたま外に出たときに風花が舞っていた.
     明日から休暇を取ることにし,今日を仕事納めとする.明日からは,少し今世紀の自分をゆっくり振り返って見ますか.

12月25日月曜日曇り

     大荒れの天気.風が強くて,自転車の将棋倒しは当然として,歩いていても70kgのこの身体が吹きとばされそうになって,真底怖かった.勿論,髪の毛など,寝癖かと見紛うくらいのグチャグチャである.車でラジオを聞いていると,気象関係の方が話をされていて,今日のようなのを「クリスマス寒波」というのだそうだ.
     学生は冬季休暇に入ったが,我々教官は,雑用でウロウロしている.僕も教務関係で教務学生係や個別の教官の間を往復運動したり,不在の教官の自宅へFAXを流したりする.論文の校正もしなければならず,読みたい/読まなければならない本も読めない.
     何か忘れている…,ああっ年賀状!どうしよう.

12月21日木曜日曇り

     19日の「天声人語」(朝日)に,「毎日新聞」の夕刊で,講談社の『日本の歴史』シリーズの推薦文を書いた丸谷才一氏が,回収・絶版を進言していることが書かれていた.問題の1巻は,旧石器の捏造を認めたF氏にそここで言及・称揚しているので,「いまとなっては喜劇的、悲劇的な記述」と「天声人語」はいう.古代史ファンの僕も1巻を持っているので,早速見てみると,23頁〜25頁に言及があった.例えばこんな風である.
     「彼は私に,自分は目に疾患があると打ち明けたことがあるが,私たちには同じような褐色にしか見えない地層だが,ひょっとすると彼にはその微妙な色の違いが見えて,地層と地層の境,つまりかつてあったある地層の上面を,鋭く見極めることができるのだろう.」(25頁)
     こういうのを,「神格化」というのである.幸い我々の国文学(近代文学)の領域には,「天狗」はいるが「神様」はいない.まぁ,ありがたいことである.
     今日のYahooのニュース(「毎日新聞」)で,来年の夏に1巻の改訂版を出すということで,その際今の1巻は申し出に応じて回収・絶版されるそうだ.しかし,一体誰がこの面白い本を回収に出すというのだろうか(笑).チト人の悪い話である.

     生協で,講義用に伊波普猷「古琉球」岩波文庫,ハンナ・アーレント「暴力について」みすず書房,奥田暁子編「女と男の時空」10,11巻,藤原書店を購入する.紀伊國屋書店から,「山川方夫全集」7が届く.これで,この全集は完結.

12月20日水曜日晴のち曇り

     朝一番に山大の添田先生に教務関係の仕事でTELを入れる.メールで送信されたゼミ生の卒論の草稿をプリントアウトし,朱を入れながら査読.10:00過ぎからそのゼミ生の卒論指導.僕の字が読めないと,朱の下に字を書き入れて行くのが憎たらしい.後で気がつくと,ボールペンを忘れて行きやがった.指導中に,別のゼミ生が卒論の草稿を30枚程置いて行った.論文に食傷気味の今日この頃.他の大学教官の皆さん,いかがお過ごしでしょうか.がんばりましょうね.
     午後13:45から大学院研究科委員会.14:30から18:00過ぎまで教官会議.今年度の補正予算で,急遽大学のネットワーク環境が強化され,高速インターネットが利用できる設備へ転換することになったことが報告された.TV会議もできますよと説明された.感慨無量.でも,使うコンテンツが,国文学ではないかも(トホホ)
     会議が終わってから,教務連絡の雑務.退出前にメールをチェックしたら,また迷惑メールが3通も届いていた.非常にムカツク.

12月19日火曜日

     朝一で,メールチェックをし,ゼミ生が送信してきた卒論の草稿をプリントアウトして査読.10:00から指導.昼休み中に別のゼミ生の卒論指導.14:20から,3限4限を使って,3年生のゼミ指導(論文の読み方)をする.
     大学のメールアドレスを2つ持っているのだが,その2つに「ねずみ講」まがいの勧誘のメールが何通も繰り返し送信されてきて不愉快になる.「出すな」と苦情のメールを送ったら,アドレスが存在しないというエラーメッセージをつけて帰ってきた.ブロックする設定はないものか.

12月18日月曜日大雨

     午前中大学院の講義.午後久々に読書や雑務.ふと「この1年の忙しさよ」と,ひとしきり感慨にふける.

12月12日火曜日曇り時々晴

     10:00から,昼休みをはさんで16:30過ぎまでゼミ生3人の卒論指導。真っ白に燃え尽きた(疲れたー)。
     「週刊現代」が,暴力団と関係のある右翼関係者と森首相の同席写真を掲載して話題になっている。この「写真弾」は効くのか?
     昨日届いた「日本文学」12月号に,新年号の予告が載っていた。「沖縄はゴジラか」という論文タイトルがあり,こういうことが書ける人は……と下を見ると,やはり「天狗堂主人」その人であった。こうして彼は21世紀をお迎えになるのだなぁと,唸らされたワタシであった。

12月11日月曜日曇り時々晴

     午前中大学院の演習。宮澤賢治「よだかの星」。自分の置かれている状況から逃げているだけのよだかに,あまり好意を持っていない自分に気がつく。院生2人がなぜかスキンヘッドになっていて,その頭部の青々しさが寒々しい(バカヤロー)。セクハラでもして,懺悔の丸坊主なんだろうか?
     卒論の草稿の意味解読作業に疲れ果て,生協ブックセンターに行く。岩井志麻子の「岡山女」角川書店が入荷していたので購入。ネーミングにも地方の時代を感じる。ま,もともと岡山は百閧フ『冥土』があるので,もともとホラー系の土壌があるのだ。大江健三郎の「取り替え子(チェンジリング)」講談社もあったので,ついでに購入。「ユリイカ」と別冊と,あれこれ目に入ってきたので,結局7千円ほど衝動買いしてしまった(ボーナス出たから良いかぁ)。「大航海」を始めとして雑誌系に「暴力」のコンセプトが漂っているが,気のせいだろうか。論文のテーマになるかもしんないと考えて,資料として購入しておく。
     友人ご推薦,竹村和子の「フェミニズム」岩波書店が届く。これは「積読」できない。読まないと……。

12月8日金曜日

     10:20からの2限の講義にはじまり,3,4限,そしてゼミ生の卒論指導を終えたら,18:00をまわっていた。8時間近く喋り続けると,ハイになるものなのね。ヘヘへ(壊れた)。
     頑張って働いているのに,ボーナスカット(0.2ヶ月分)とは……。岡大に着任以来,ボーナスはカットのされ続けである。ま,本を買う以外,使い途もないんですけどねぇ。愚痴っていたら,「もらえるだけでも感謝しろ」と友人から諭された。ごもっともでございます。

12月5日火曜日

     10:00〜12:00まで,ゼミ生の卒論指導。12月の月曜日・火曜日・木曜日・金曜日は,ゼミ生の卒論指導が組み込まれ,それぞれゼミ生の名前を冠して**デーと呼ばれている。彼等のうち3人は,卒論を書かない・遅れているので,「書かせてみせようホトトギス」と相成った次第である。1人は,自分で強制収容所に入ってきた奇特な方である(月曜の方)。この卒論指導は講義以外の全くのサービス指導で,他ゼミには全く卒論の指導を受けていない学生もいるようだから,僕はある意味で「理想的」であるらしい。
     ゼミ生の指導が終わってから,久々に自分の勉強時間を持つ。後期がはじまってから論文作成に追われて死ぬかと思ったが,ようやく情報をインプットできる時間が出来たわけで,いただいていた抜き刷りにも目を通し始めた。と思ったら,稲田先生から「ちょっとメールソフトの使い方を教えて」とヘルプコールが掛かった。
     学部では,来年度シラバスの登録もWEB上で行うようになり,PCやインターネットを使うリテラシーを持たない教官は,一挙にディジタル世界で難民化している状態なのである。巷でもIT,ITの掛け声ばかりは勇ましいが,学部にIT難民がうようよしている現状をみると,社会の混乱が予想されるのである。それでも拙速主義で行くのか?
     「国文学」11月号(手紙のディスタンス)を読む。花田俊典「火野葦平の手紙−−昭和12年12月15日,南京にて」は,南京大虐殺のまさにその真っ只中にいた葦兵の書簡(新資料)の紹介である。前半の戦闘の記述や,捕虜の虐殺などは凄惨。後半の南京入城以降は,検閲を意識してか具体的な記述が減り,自分の体のことなどの記述が多い。

     同僚の先生から教えてもらったサイトに「大学ランキング・ネット」というのがある。ベスト,ワーストそれぞれの大学名が上がっているし,大学教授181名がランキングされていた。我々の業界では,早稲田の高橋世織氏(教養演習)がランキング入りしていた。

12月4日月曜日

     昨夜就寝前にNHKの番組を観ようとリモコンのスイッチを入れたら,社会党の浅沼委員長(当時)の刺殺シーンが映し出されて,仰天した。これは全くの偶然であったが,TVというメディアの暴力性が,こういう見たくもない映像を否応無く視聴者に見せてしまうという事で一挙に顕在化したのであった。言論を暴力で封じ込めたテロのシーンを映し出すことに,一体どういう見識があったのか。
     実は,番宣なのである。テロで殺害された浅沼氏,その家族の心情を思うとNHKもひどい放映をするものだと思うし,下らん意図で寝る前に一挙に不愉快な気分にされた僕もいい迷惑である。国営放送の品位もまったく地に落ちたものだ。
     大学院の演習。午後生協ブックセンターで書籍を購入する。島田雅彦「彗星の住人」や「現代思想」12他,3冊を購入。
     13:30から卒論指導(14:00と約束していたのに……)。

12月1日金曜日

     国際エイズデーである。1993年以来音楽業界によって行われているAAA(アクト・アゲインスト・エイズ)が,今年も今日から全国7都市で開催される。大阪では大阪城ホールで福山雅治(チイ兄ちゃん?)ら8組が出演するらしい(「朝日新聞」)。政界以上に鈍化している文学業界は,何かするのであろうか?。
     大学で講義2コマをこなす。講義中レジュメを読んでいて,ふと顔を見上げて学生の顔を見たら,視界がボヤけたので驚く。これは老化?かなりショックだったので絶句していたら,学生たちが不思議そうにしていた。