津島通信

March 2001
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◆CONTENTS◆

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【きむたく日記】

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kimutaku@cc.okayama-u.ac.jp

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 ¶ 仲 秀和氏『漱石―『夢十夜』以後―』2001.3.30,和泉書院,2,500円+税

 ¶ 江種滿子・井上理恵編『20世紀のベストセラーを読み解く――女性・読者・社会の100年――』2001.3.29,学藝書林,2,500円(税別)

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「きむたく日記」

 

3月28日水曜日晴

     10:30より教室会議.学部委員の就職学生委員の任を先日解かれ,教室委員としては,教務連絡委員,就職学生連絡委員,国語研究会事務局兼会計係の任を解かれた.新たに決まったのは,学術連絡委員(継続)と,もう一つで,いわば閑職ばかりである.総務連絡委員がまわってくるかとも覚悟していたが,それはなかった.日頃の行いがよかったからかと安堵する.僕の仕事を殆んど全て引き継がれた先生がお気の毒だが,年齢層の高い教室なので,こればかりは致し方なからう,ウン.
     昼休み,研究会の郵便物を出しに津島郵便局へ歩いて行く.陽気につられた散歩のついでといったところか.局で,「日本におけるイタリア2001年記念」の切手を販売しているのをみつける.ボッティチェリのヴィーナス(の誕生)の切手があり.おもわず1セットまとめ買いしてしまう.普段メールなので,殆んど郵便物など出さないのに….相変わらず美女に弱い木村であると思ったら,大間違い.この「ヴィーナス」(1485)のモデルは,シモネッタ・ヴェスプーチといって結核患者であったという話だ.結核が生み出した「美人」像として,僕は認識していたのだよ〜ん(ウソ).
     機嫌よく大学の方へ戻ってくる途中,体育館の前で大勢の剣道部員たちが食事をしていた.大阪大学のネームの入った胴着を着ている者もいる.交流試合かなと思いながら通り過ぎていくと,中からニッコリ挨拶してくる女の子がいたので,ハテ誰かいな?と良く見ると,国語研究室の杉田さんだった.もう4年だね.

3月26日月曜日晴

     岡山大学の卒業式.15:00から謝恩会.ゼミ生1名は,ドタキャンで出席しなかった.夜ケイタイメールでの挨拶を受けたが,このドライさが現代ッ子ということかしらん.
     記念品に低周波治療器と花束をいただく.ありがとうございました.君達4年生は,僕にとっては岡山大の先輩でもあります.着任当時分からない事がたくさんあっても,君達がいろいろアドヴァイスをくれました.そういった意味でも,君達を送ることはなにか心細く寂しい気持ちで一杯です.お世話になりました.

3月24日金曜日曇

     遅く起きて,シャワーを浴びてから,PCに向かっていた.15:28頃,アパートが揺れ始め,「あ,地震」と思う.いつものようにしばらくしたら止むだろうと思ったが,次第に横揺れはひどくなり,家屋がミシミシ音を立て始めた.昨年来地震なれしているところがあったが,背筋を悪寒が走り「これまでか」との思いが頭を過ぎる.揺れに耐えること1分あまりで,地震はおさまるが,阪神・淡路クラスであることは分かった.しばらくして,NHKをつけると相撲から緊急報道番組に切り替わり,各地の震度を言い始めた.岡山南部は,震度4であったが,広島の方で震度5を出していた.16:30頃までNHKの報道を見る.呉の方が震源地であったらしい.現在岡山小倉間の山陽新幹線は止まり,大勢の乗客に影響が出ているとのこと.岡山で足止めされた人も多いようだ.
     表町に出て,丸善のブックセールに行く.昨年出た漱石本が,1,400円で売られていた.青海健氏の遺稿集は,1,000円.投売りである.倒産したところだから仕様がないのかもしれない.丸善で,佐野眞一『だれが「本」を殺すのか』(プレジデント社,2001)を購入.映画「アンブレイカブル」を観に行こうと駅前の映画館へいったら,係員の人が「今日は,『シックス・センス』の上映会なんですが…」という.
     「え,『シックス・センス』ですか?」なんで,と困惑して固まってしまう.
     「ご覧になりませんか」というので,「いえ,観ましたから」と断って退出する.今日だけ,「シックス・センス」の上映会だったらしい.「アンブレイカブル」を観にいって,アンビリーバブルな事態に見舞われてしまったと,一人で寒い洒落を呟く.
     すっかり夜の予定が狂ったので,紀伊國屋書店を冷やかしてから帰宅する.父から,「研究室にも家にもおらんと,どこをほっつきあるいとったんだ!」と怒りの電話あり. 岡山は,しばらく県外からは繋がらなかったらしい.ちなみに父のいる兵庫の北部は震度3だったので,たいしたこともあるまいと思っていたが,その通りで,両親とも畑に出ていて,まったく地震には気づかなかったそうである.確かに,今日は野良仕事日和でした.

3月23日金曜日曇

     昨日から岡山シンフォニーホールで定期的に古本市が開かれるのだが,谷崎の書簡が出品されているようだ.明日にでも「眺め」にいこうかと思う.
     夢象氏の断片的日常を読んでいたら,DMの宛名に,不吉な漢字が使われており,原因は手書きの文字をスキャニングして名簿を作っていたことによることが分かったと書いてあった.営業努力が空振りした事例であるが(チェックぐらいしろ),ショッピングセンターの顧客管理の方法を学ばせられるエピソードである.配送票に書き込んだ名前は,このように処理されているのかと思った.店側は,当然のことながら,氏のご自宅まで謝罪に出向いたそうだ.
     日本時間の午後2時過ぎに,ミールが無事?に落下した模様だが,落ちた地域(ニュージーランド島沖の南太平洋海域)では,「ウチはゴミ箱じゃない!」とお怒りの模様.もっともである.補償とかあるんだろうか.これは天災ではないのだから.
     13:00にゼミ生来室.それ以外,今日は心穏やかに研究室でお勉強できた.
     論文がうまく書けずふてくされてメールチェックをしていたら,岡大の東門(教育学部の近所)で,交通事故発生のメールが入る.トラックが自転車に乗っている人を轢き,バス停のポールを倒し,グラウンドの金網に突っ込んでいるということ.すわ一大事と駆けつける.確かに小型トラックが反対車線側の歩道に突っ込んでいた.惨状もレポートの通りである.が,なんで反対側に?それにしても,轢かれたという人は大丈夫なのだろうか.最近身辺で事故や火事の話が多くてイヤになる.気をつけねば.

3月22日木曜日晴

     昨夜,名古屋の米村みゆきさんから,リンクさせて欲しいというメールあり.相互リンクしましょうと返信し,今日HPの工事をする.上田信道氏のサイトを見ていて,兵教の向川先生の退官記念パーティーの記述を見つけた.兵教では児童文学を論じる人はいなくなるらしい.後任補充はするのだろうか.
     異動といえば,今日あたりが公務員の異動発表なのである.ゼミ生もおかげで非常勤講師の口が決まったと昨夜メールで報告してきた.安堵.これで,教職への細い通路が開かれた.そういえば,中田(サッカー,ASローマ)がパルマに移籍するそうですな.

     研究室で,国語研究会の引継ぎのファイルを整理しているところへ,チェコに研修に行っていたS先生帰国の挨拶で来訪.お土産にカレンダーをいただく.チェコの美しい街並みがすばらしい.こんなところで過ごせたら,外国にいっても見劣りするだろう.ある意味では不幸か(笑).留守中の話をいろいろする.
     「ところで,木村さん.太った?」
     「……」(久しぶりにあった挨拶がこれかよ)

3月19日月曜日晴

     暖かい,というか暑い.一挙に春の後半までいった感じがする.「国語研究」15号の発送作業を,13:00から行う.担当の吉田先生と院生との3人であったが,250冊ほどを,70分で封入し,郵便局に持っていく.吉田先生のお話によると,手書きで宛名を書いた以前は,5月の連休頃の発送だったらしい.しかし,これで2年間仰せつかっていた国語研究会の事務局の仕事も終りである.とても,嬉しい.
     4年のゼミ生たち来る.ヨーロッパ旅行の写真を見せてもらう.ルーブル美術館の館内で写真を撮っていたので,館内撮影は良いのか?と思う.ミロのビーナスの前で記念撮影していたが,レプリカではないかと疑う.

3月16日金曜日晴

     6:00過ぎに起きてメールチェックしたら,卒業するゼミ生からバイトが決まったとの連絡.安心する.と,九州の天狗さまからもメールが入っていて,「書名がちがう」との指摘.ビックリ仰天して,謝罪のメールを出し,HPを訂正.
     10:00から会議.「国語研究」15号の納品があり,支払いについて協議する.慌しくコンビニ弁当で昼食.午後13:30から18:20まで教官会議.途中で意識不明.新年度からは,「教授会」と改称されることになった.最後の「教官会議」であったワケだ.途中,非常勤講師の任用の件で,非常勤講師を最終的にはカットせざるを得ないような「原則」が打ち出され反発.眠気が覚める.でも今は疲れ果てて,目が痛い.
     会議の休憩時に,吉田先生が,PCがインターネット接続できるようになったと喜んでおられた.よかった,よかった.

3月14日水曜日晴

     九州大学大学院の天狗さまより,『太宰治のレクチュール』を恵送していただく.深謝.ひそかに買って「一撃」を見舞おうとしていた目論見は,かくしてかわされてしまったのであった(笑).
     「岡大国語研究」15号が刷り上るということで,早速角3封筒に送付先をプリントアウトする.約250件分(つまり250枚)をプリンターに手ざししていくので,3時間かかってしまう.僕は要領が悪いのでこれくらいかかるのだが,実はこの間に,稲田先生と吉田先生が興奮して乱入してくるという出来事もあったのだ.
     2人が興奮しながらいうことには,電子メールやネットサーフィンが出来ないので,朝からネットワーク管理委員の先生や,大学の情報管理センターに連絡をとってPCを診断してもらっていたそうだ(確かにバタバタしてた).ネットワーク委員の先生は,以前から教育学部のIPアドレス不正ユーザー(他人の駐車場を利用するやつ)を目の敵にしていて,これはその「ネズミ」のせいだといわれたそうである.しかし,情報管理センターの助手が,チェックしたところIPアドレスは占有されていないので機器の問題ではないかと別の診断をし,ネットワークカードを触ったところインターネット利用ができるようになり,委員の先生は「そんな簡単な事(接触不良)だったのか」と,2人がよろこぶ位に落ち込んでしまったそうである.しかし,その解決はながく続かず,結局接続不能になったので,機器の物理的問題という診断になったそうだ.しかも2人のPCに関連した障害がでるということで,HUBまで含んだ問題ではないかと,会計係まで巻き込んだ事態に立ち至ったそうだ.
    「で,用件は?」という僕に,「電子メールは使えないから,連絡は原始メール(メモ)にしてくれ」.
     ….この間,プリントアウトの作業はストップし,おまけに出力を途中で止められたファイルはエラーを出すようになった.「なんなんですか,あなた達は…」(泣)

     今日届いた『昭和文学研究』42の大井田義彰氏の「教育学部における文学教育・国語教育の危機的状況について」(「研究展望」)を読む.ウチの教員就職率は,昨年度10パーセントを切り,今年度12パーセントだから,氏が書く14パーセントより悪い.若手教員採用に関る,定年退職者や離職者など地域によって異なる教員の年齢分布を度外視して,採用数のみ一律に論じる数のマジックで,教育系学部(や文学部)の必要性が軽視される採算重視の風潮は如何なものかと思う.一体,この国の「政治主導」で,この国の未来が拓けるとでも思っているのだろうか.グローバリゼーションという国内だけでしか通用しない掛け声に踊らされて,気が付いたら自分の首に縄を巻いているような経済の状況を見るがいい.教育も同様に,縊り殺すつもりなのだろうか.

3月13日火曜日晴

     18:30より大学院修了生を送り出す送別会が岡山駅西口近くの料亭で開かれる.西鉄ライオンズの西尾?か,なにか往年の名選手がいたとかいって,T先生(福岡出身)が興奮していたが,一体何事?
     21:00過ぎに一部の教官と2次会へ行く.22:30帰宅.

3月12日月曜日晴

     快晴だが,冷え込む.個別学力試験(後期)の試験官をするために出勤しようと,7:20に青空駐車場に行くと,車が凍結していた.寒いし,眠い(7:59).
     昼食を,試験官仲間のT先生にご馳走になる.赤ウオと若布の炊き合わせがおいしかった.同じ教室の先生と昼食をともにした事はないなぁと思う.研究室で雑事を済ませた後,外出.「番長」(山本文緒)の『ビタミンF』を購入.今頃であるが,もう8刷になっていた(売れてる!).500円の割引券を使い,安く買う.

3月9日金曜日曇

     岡山は,昨日来冷え込んで寒い.今朝郷里に電話すると,一晩で30センチ積もったと母が言った.岡山はどうかと聞くので,「晴れてるよ」というと絶句していた.
     紀伊國屋書店から藤井淑禎氏の『小説の考古学へ』(名古屋大学出版会)が届く.図書館へ登録に回す前に中身を斜め読みすると,漱石論もあった.末尾には,江藤淳についてのエッセイも収録されている.松岡正剛『知の編集術』講談社現代新書を読む.いただいた論文への礼状を認める.
     昼休みに外出して,鬼束ちひろ「インソムニア」(東芝EMI)を購入.この人は,TV画面では,大きく口を開けるので顔が崩れてしまうのが気になるのだが,とても良い声をしている.パッハベルの「カノン」を聞いているときのような感じ.「月光」と「眩暈」は良く知られているが,「We can go」もどこかで耳にした覚えが.明日は土曜日,井上ひさし「紙屋町さくらホテル」のチケットを買いに行く積もりだ.どうも,講義がないとあそびモードだ.

3月2日金曜日晴

     10:20就職・学生委員としてコーディネートした学生が講演することになった教職自主講座に参加する.終了後,図書館で新年度に行う小学校課程向けの教材のコピーをする.
     生協で上野千鶴子氏の編集した『構築主義とはなにか』(勁草書房,2,800円)を立読みする.友人が構築主義という言葉を使っていたので,なんじゃそりゃと思っていたが,社会学−フェミニズムあたりで流行り始めている言葉らしい.買おうかどうか迷ったのでペンディング.今月は1週間に2回ペースで送別会が多いので,無駄遣いは出来ないのである.昨日電話で父と話したときにそのことを言うと,「割り勘負けで,随分損しているなぁ」と言われる.人生,どこかで負けておく必要があるんですよ.…いや,構築主義の話だった.
     たった今,九州大学大学院の天狗様のご指示で,小天狗嬢がFAXを送ってくれた.岡田哲也氏の「西日本詩時評」「西日本新聞」(2.27)に,僕の「IT/身体のオントロジー」への批評が載っていたそうなのである.こうして取り上げていただくと励みになるし,それをわざわざ教えてくださる天狗様のご好意に深謝する.
     僕の書いたIT化を疑えという意味の最後の一文,「〈これは罠か?〉」に関して,「逃げている」と一言チクリ.「書くという行為は変容を迫られていますが,考えそして書かれたものは,常套といいますか,さして変容を迫られていない所が,私には興味深かったのです」というご指摘には,もう少し書いておけば良かったかなぁと後悔した.
     IT化により伝統的な身体像が再構築され,それが社会や文化の再編に及ぶまで波及しないと(ケータイのように),考え方−書かれたものへの変化は見て取れないのではないかというのが僕の現在の認識で,政治家ではないがIT化の現状に対しては是々非々で対処するしかないという思いは,やはり変らない.