津島通信

April 2001
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◆CONTENTS◆

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【きむたく日記】

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広 告(刊行より1年間)

 ¶ 仲 秀和氏『漱石―『夢十夜』以後―』2001.3.30,和泉書院,2,500円+税

 ¶ 江種滿子・井上理恵編『20世紀のベストセラーを読み解く――女性・読者・社会の100年――』2001.3.29,学藝書林,2,500円(税別)

    (所収論文;菅聡子「吉屋信子『花物語』『女の友情』――〈花物語〉のゆくえ」,根岸泰子「太宰治『斜陽』――その揺籃期の物語」他9本.)

 ¶ 花田俊典氏『太宰治のレクチュール』2001.3.10,双文社出版,5,600円

 ¶ 木村小夜氏『太宰治 翻案作品論』2001.2.25,和泉書院,4,800円

 ¶ 『敍説』第2期第1号1,800円(税込) 出ました!花書院(城島印刷) は,こちら

 ¶ 小田島本有氏『小説の中の語り手「私」』2000.10.20,近代文芸社,2,000円(税別)

 ¶ 玉井敬之監修『漱石から漱石へ』2000.5,翰林書房より,刊行中。お値段,8,000円(税別)


「きむたく日記」

 

4月27日金曜日晴

     先週末から風邪をひいて寝込んでおりました.更新してなくてすいません.
     午前中講読の講義.午後,図書館で調べ物.席に座って全集を読んでいると,「先生,先生」と僕を呼ぶ声.「誰やねん」と思って顔を上げると,4年のH野クンであった.教採のお勉強らしく,コピーのところどころかマーキングされていた.考えてみれば,あと三月しかない.頑張っていただきたい.

     「遠征」先で,井上ひさしの戯曲「紙屋町さくらホテル」を観た(18:30〜21:45).S席を奮発したのだが見事最前列に当たり,それは,出演者のツバキが照明でパッと白く見えるくらいに,宮本信子のおシワの陰翳がハッキリ確認できるくらいに,大滝秀治の熱演のあまりの鼻水がありありと見えるくらいに,近い距離だった.2Mくらいだったろうか.おかげで,舞台全体は到底見通せなかったが,臨場感からくる迫力は堪能できた.男優さんて,皆顔がでかいのね.
     ただ,惜しまれるのは,既に「脚本」(小学館)に目を通していたので,笑いどころや泣き所の興趣が,殺されてしまったことだ.感動出来なかったのが,残念無念.

4月18日水曜日曇

     ヤフーニュースの毎日新聞配信の情報では,漱石が留学していた時の下宿が,日本人関係としてははじめて,イギリスの「歴史的建造物」に認定されるそうだ.どの下宿か知らないけれど,それで日本人観光客の小メッカとでもするつもりだろうか.そういえば,記念館とかいうのもあったなぁ.いろいろ背後のきな臭い「動き」が見えるような話である.大体,若い連中にソーセキといっても通じまいに.
     12:00から教室会議.5月に熊本大への出張が内定した.「阿蘇や島原もまわった」と語る先生がいらっしゃった.12:40から図書館で,3年生のゼミ生対象に図書館の研究上の使い方や,ガイダンスを行う.14:30から17:00まで,教官会議あらため教授会.平成14年度に学部の建物の改修が決まりそうな話になり,騒然.僕の区域は,改修が終わるまで1度別のところに移り,再度学部に戻るという2回の引越しをしなければならない.書籍の移動を考えると,この話が潰れてくれる事を祈るばかりであるが,その心理を見透かしたように,「このチャンスを逃したら,2度と改修はできませんよ」と担当の先生が発言されるのだった.でも,潰れて.
 

4月17日火曜日晴

     14:20から4年生ゼミ.「舞姫」を注釈をつけながら読むことにする.終了後,生協のブックセンターへ行く.講談社文芸文庫から漱石集が出ているはずなので,入荷しているかとも思ったが,やはり無かった.味噌ラーメンを食って研究室にもどる.

4月16日月曜日晴

     午前大学院,午後学部の講義.初回ということもあり,簡単なガイダンスをと思って喋り始めたら,いずれも止まらなかった.これは老化かもしれない.気をつけねば.
     教官(教員)をしていると新学期がいやになる.正月よりも4月に年を1つとる気がするからだ.新しい学生が登場してくる一方で,このところ歌手の業界では,物故者が相次いでいる.三浪春夫さんもそうだが,今日は川島英五さんの訃報である.こうして一人一人,しかし確実に消えていくのだなぁ(いずれは自分も)と思わされて,非常にイヤーな気分になる.
     それにしても一念発起して読み始めた「あきらめ」(田村俊子)がなかなか捗らない.風俗用語の風化が著しく,意味不明の言葉が多い.人物像も3人姉妹以外,一体誰がどうなのやら,形象のつたなさに辟易する.トルストイの「戦争と平和」じゃないんだからと思いながら,いつの間にか「撃沈」されるワタシであった.

4月12日木曜日晴

     「俺はテロリスト〜」(尾崎豊「銃声の証明」?)と歌いながら,ドリアンキャンディーを,伊土先生にプレゼント.

4月11日水曜日晴

     午前中,講義準備のため附属図書館に高校の教科書(国語T,U,現代文)に採録されている近現代文学の作品を調べに行く.ついでに生協で,トロツキーの「自叙伝」下と角川から出ている「乳癌」を買う.
     昼休みに3年のゼミ生来る.シンガポール土産のドリアンのキャンディーを貰う.最初は干した梅干のような味がしたが,次には形容できない甘さにかわり,次には臭みのあるような味に変わり,最後はそれら全てが一挙に強襲してきた.ついに耐えられず,ティッシュに吐き出した.ゼミ生は大笑いしていた.
     昨年は,ネギ風味のリッツ(中華人民共和国限定)で「人体実験」されたことがあったが,今年もなかなか手ごわい学生がいるようだ.頭にきたので,教室の先生や事務官の友人に配る分を貰う.テロである.
     18:00から新任の片村先生の歓迎会.高知大学を3月で定年退官されて,2年の任期で岡大に来られたのである.

4月10日火曜日晴

     教務学生係から意味の良く分からない留守電1件.朝からイラつく.14:00から国語教室の3,4年生へのオリエンテーション.15:00過ぎから,ゼミ生を集めて顔合わせを行う.新ゼミ生は,5名である.それが終わってから,大学院生の指導.

4月9日月曜日晴

     16:00より大学院の新入生・2年生オリエンテーション.新入生は,中国からの留学生をいれてわずか2名であった.寂しいことだ.

     昨日の日曜日,ブルックス・ブラザーズで買い物をしてから,映画を天神のオリエント美術館地階に見に行く.14:50から17:00頃まで,すずきじゅんいち監督「秋桜」を見る.観客は,僕をいれても10人もいなかった.交通事故の際輸血からHIVに感染し,エイズを発病した高校2年生が,夏休みに父の郷里である福島にもどり,文化祭の頃に死亡するまでを描いた映画である.
     感染から発症・死亡するまでが短く,症例に正確でない.その描かれ方も,「偏見と差別」というセリフの連発にもみられたようにHIVに対する,ステレオタイプの捉え方が顕著である.1997年の映画だが,福島県本宮市の有力者が,エイズが町中に伝染するというようなアナクロニズムで,外圧を形成していくというのが,時代錯誤だし,同級生の委員長が,主人公の世話をする担任に好意をもっていたことから,主人公に嫉妬して,「悲劇のヒロインを気取るんじゃない」と言い放つのなどは,椅子から転げ落ちるかと思った位だ.ここに,この映画の構造が端的に表出している.差別的な外圧と懸命に戦う,エイズ患者というステレオタイプ.彼・彼女達は,その外圧やエイズと戦うヒーロー・ヒロインなのであり,そうでない我々は彼等に同情し,「愛さなければいけない」という観念が見て取れるのではないか.
     この映画では,彼等の外側(差別偏見との闘い)を描くことに終始して,彼等がどのように懸命に生きているのかということが分からない.死を意識しておびえて歔欷したり,生きることの意味が少しわかったというようなエイズによる末期の眼についてもありきたりで(花火大会の花火を眺めながら言うのだ!),大事なのは,そうして発見された生をどのように生きているのかを丁寧に追うことが,エイズ患者を理解する方法であることだろうに(例えば,最近でたレベッカ・ブラウン『体の贈り物』マガジンハウスのように),この主人公の園田明子は,故郷(あたたら山)を愛するというような郷土愛(!)というわけのわからないものを持っている女の子として描かれている(地元の出資が映画に強烈に影響したか).この点は,監督の小説(1996)に目を通してみないと分からないが.
     主人公役の小田茜のはちきれんばかりの健康な身体も,およそ末期患者の身体の症例からは遠い.こういうキャスティングをすること自体に,HIV・エイズを差別の物語にしか回収できない想像力の硬直が見て取れるのだ.それとも,それくらいにHIV・エイズを差別の病気としてしか認識できないほどに,その呪縛は日本の地方においては強固で強烈なのだろうか.
     夕方,旭川河川敷の桜並木から,シートや荷物・ゴミを抱えて帰宅する人たちと一緒に歩きながら,こんなことを考えていた.…….
     寂しい春,ではあるなぁ.

4月7日土曜日晴

     出張の残務整理で,午後から大学に出勤.というか,市内は後楽園の桜見物を目指した車で渋滞しており,午後になってしまったという方が正確だ.メールボックスは,新年度早々ということもあり書類の山.大閉口である.これは要る,これはいらな〜い.合間に,メールへの返信.教務学生係から,意味の良く分からない留守電1件.
     来週からは,いよいよ講義も始まる.心機一転,頑張りましょう!

4月2日月曜日晴

     新年度がスタートしました.国語教室では,高知大学が片村先生が国語教育担当教官として着任された.国語教育のプロで,頼もしい限り.
     午前中,事務関係の引継ぎをする.学部内でも,事務系の人事が一新しており,見慣れた顔に替わって新しい人が加わり,あいさつ回りをされていた.新しい事務官には,オウム(鳥)のような人がいた.Nさんは,どこへ行ったの〜.
     4月から「雑誌記事索引」がWEB上で利用できるようになったので,試用してみる.漱石で,検索してみると,2月に出た「解釈と鑑賞」のデータも反映されている.これで,このサイトの論文リストも速報性と一覧性以外の価値はなくなったような気がする.リストを作ること自体に意味があるようになると,もうオシマイだなぁ.
     生協に食事に行く.ついでに,セジウィック『男同士の絆 イギリス文学とホモソーシャルな欲望』(名古屋大学出版会,3,800円)と『越境する知6』(東京大学出版会,2,600円)を購入.
     そういえば,オランダで同性カップル4組が結婚した.キリスト教圏だからこそ,「同性結婚」には相当意味があるのだろうが,結婚しなくても法的な権利を認めればいいだけの話ではないかと思った.しかし,まぁ結婚という形で市民社会に組み込まれ認知される必要があるのだろうな.つまりこうして越境したものは,秩序に回収されるのである.「結婚」って制度なんだなぁ,ということを強く印象付けられた.