津島通信

MAY 2001
PREVNEXT


◆CONTENTS◆

【広告】
【きむたく日記】

SUN MON TUE WED THU FRI SAT
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

感想をお聞かせ下さい。
kimutaku@cc.okayama-u.ac.jp

back numbers


広 告(刊行より1年間)

 ¶ 仲 秀和氏『漱石―『夢十夜』以後―』2001.3.30,和泉書院,2,500円+税

 ¶ 江種滿子・井上理恵編『20世紀のベストセラーを読み解く――女性・読者・社会の100年――』2001.3.29,学藝書林,2,500円(税別)

    (所収論文;菅聡子「吉屋信子『花物語』『女の友情』――〈花物語〉のゆくえ」,根岸泰子「太宰治『斜陽』――その揺籃期の物語」他9本.)

 ¶ 花田俊典氏『太宰治のレクチュール』2001.3.10,双文社出版,5,600円

 ¶ 木村小夜氏『太宰治 翻案作品論』2001.2.25,和泉書院,4,800円

 ¶ 『敍説』第2期第1号1,800円(税込) 出ました!花書院(城島印刷) は,こちら

 ¶ 小田島本有氏『小説の中の語り手「私」』2000.10.20,近代文芸社,2,000円(税別)

 


「きむたく日記」

5月29日火曜日晴

     日曜,月曜と熊本大学に出張.おかげで,週末の日本近代文学会の大会には出れなかった.今,国語関係は学会シーズン.誰も出張に行きたがらず,下っ端の出る幕と相成ったわけである.競馬好きの方からは怒られそうだが「馬」料理も食べたし,熊本ラーメン「こむらさき」も食べ(本店),途中下車した博多でも「一蘭」のラーメンを食べることが出来たので口福ではありましたけどね.天神コアの紀伊國屋書店で本を物色.営業所回しで,岡山へ配送してもらった.
     貴乃花が武蔵丸を破った千秋楽の優勝決定戦の話をしたい.小泉さんは,「感動した!」と興奮してぶち上げていたが,ヒネクレ者の僕は武蔵丸に同情した.最初の一番で,体をかわしただけで,ころんだ貴乃花を見て戦意を喪失してしまうのも無理はない.貴乃花の負傷の情報があれだけ飛び交い,それで対戦して優勝しても,嬉しくもなんともないだろう(敵役だ).勝って当たり前だし,それはそもそも対等の勝負といえる状況なのか.しかも事態は武蔵丸に最悪の結果を迎えた.武蔵丸は,重症の貴乃花に負けて,花を持たせてしまったのであるから.僕が彼の立場なら,支度部屋で暴れてやる.相撲協会と相撲ファンの国民にいいたい.フェアな勝負をしてくれ,と.相撲は国技だそうだが,スポーツなのか,そうでないのか.今回の千秋楽の一番は,それが横綱同士の対戦ということもあり,相撲のあり方を象徴する一番であった.

5月24日木曜日雨のち曇

     昨日ハンセン病熊本訴訟で,政府が控訴断念を判断し,患者・関係者から英断であるとの評価を得たことが報じられている.個人的にも,国の方針は評価できる.今日,96年4月の「らい予防法」廃止直前まで,優生手術(断種・中絶)が行われていたことが,国賠訴訟弁護団の調査で明らかになったことを「毎日新聞」が報じた.真底驚き,そして呆れている.二の句が告げない.

     生協ブックセンターで,渡辺実『さすが!日本語』(ちくま新書)など10点書籍を購入.実は院生時代にこの渡辺先生の講義を,非常勤で出講されていた時に受講したことがある.講義内容は,まさにこの本の副用語をめぐるものだったと思うのだが,個人的には大あくびをした瞬間,ジロッと一瞥された印象の方が強い(笑).レポートも頑張って書いた記憶がある.メジャーの方の授業は受けておくべきである.その後,上智に行かれたと記憶している.紳士然とした先生で,明晰でスマート.大柄な方だった.
     紀伊國屋書店のWEBサイトで,重松静馬『重松日記』筑摩書房,2,400円が出たことを知る.言うまでもなく,井伏鱒二『黒い雨』のネタ本である.早速発注した.
     井上雄彦「バガボンド」10を買ったと書いたら,全巻貸してくれと注文が来た.

5月23日水曜日雨のち曇

     3年生のゼミ.今回で3回目だが,今回の報告者は要領がわかってきたのか,先行研究を踏まえて,自分なりの意見を綺麗にまとめてきていた.2年生の頃から,上級クラスのゼミに参加し,ノウハウを知悉しているからなのかもしれないが,頼もしい事である.
     手紙への返信や,読書.井上雄彦「バガボンド」10(本日発売)を読んでいたら,入ってきたゼミ生に見られた.勉強家だと思われていたのに…….

5月21日月曜日晴

     午前中,大学院の講義(「舞姫」).講義の前半,先週観た芝居(井上ひさし「夢の裂け目」)の話をしていて,気がついたら25分経っていた.しょうもない話で,時間を潰してしまったと反省.でも,藤谷美紀が,可愛かったんだもん.
     医学部の先生が,薬事法違反容疑で家宅捜査を受けているニュースがYAHOO!で配信されている.昨年も,1人上げられたし,複雑な心境.
     午後の講義のあと,自動車税・学会費を納めに北方郵便局まで往復20分歩く.福沢先生とお別れするのが,とても辛かった.税金と学会費がなければ,今月のフトコロ具合は随分違うのだが.やれやれ.
     「舞姫」のゼミ発表で,資料を探しにゼミ生来る.高校時代の教科書の注を参考に,現代語訳をするといっていた.「その訳が間違っていたらどうするの?」と思ってはいても,口には出さないところが,僕の品の良い所(笑).

5月14日月曜日晴

     午前,午後講義.午後は,実は演習もあるのだが,報告者が「ドロボーに入られた」ということで,警察の現場検証に立ち会わねばならなくなり,急遽欠席という事態に立ち至った.不幸中の幸いで,報告のレジュメだけ届けられたので,それを使って急場をしのぐ.昨晩ふと思いついて,自分でもレジュメを1枚書いていたので,それも助かった要因である.あれは,いやな予感というヤツだったのか.やれやれというか,トホホである.

5月11日金曜日晴

     熊本地裁で,ハンセン氏病国家賠償訴訟の判決が下り,原告勝訴.1人あたり1400万円から800万円の賠償金の支払いが国に命じられた.勝訴は当然だと思うが,失われたもの(人生)の内容に比べると,この賠償額は安過ぎる.言っても仕方がないことだが.
     北条民雄が「いのちの初夜」で書いているように,患者たちは病苦だけではなく,隔離され,断種・中絶をされることで,人権を侵害される筆舌に尽くし難い苦痛を味わってきた.罹患は自然のなせるところだろうが,差別や隔離以降の問題は,社会それも医学会(光田健輔とその取り巻き)・国家(厚生省のお役人)の責任である.そしてそれを追認した国民一人一人の問題でもある.この構図は,エイズ問題や,薬害エイズでも繰り返された.どうかC型肝炎の問題が,第3のケースにならないことを祈る.

     生協にCD−Rを買いに行ったついでに,書籍を衝動買いしてしまう.柳父章『愛』三省堂は,恋愛の起源史というか,トルバドゥールに始まる「愛」の歴史を解説したもの.小森陽一『ポストコロニアル』岩波書店は,お分かりだろうからノーコメント.スーザン・ソンタグ『火山に恋して』みすず書房も出ていたが,やたら分厚く,お値段も良いので(4,000円!),古本屋で買うことにする.クンデラ『無知』も迷ったが,週末にも関らず,小説を暢気に読んでいる心境ではないので,これもパス.
     雑誌の「ダ・ヴィンチ」の山本文緒インタビューを読んでいたら,「プラナリア」の女の子にはモデルがいるそうで,「生まれ変わったらプラナリアになりたい」と言っていた彼女は,「鳴きうさぎになりたい」と発言内容が進化しているとのこと(笑).僕はそれよりも,「早く人間になりた〜い」(分かる人の年齢は,30代後半?).

5月10日木曜日晴

     昨日の岡山の最高気温は,25度あったそうで,夏日であった.小田島先生によると釧路のは,6,7度らしいので,随分違う.っていうか,冬ですね.
     昨日来,熊さん騒動が報道されている.嵐山のツキノワ熊さん射殺はいかがなものかと思う.冬眠からさめて,天竜寺の竹林でたけのこを掘って食っていたのだが,「逃げようとしたから」(たしかNHK)とか「民家が近いから」(「朝日新聞」)とかいう理由で,射殺されたのである.これってそれぞれ理由になっていない.麻酔弾で眠らせて,山奥に放つということも出来た筈で,そうしなかったのは,1,面倒くさい.2,「熊の胆」や毛皮を売ればかなりの値がつくので,その獲得を目論んだ猟友会.というあたりが想像できる.
     熊に殺害されたり,殺されて埋められた人も他県で出ているので,生かしておく処置が難しいのかも知れないが,無益な殺生はなるべくやめてもらいたいものだ.それにしても,人を埋めていたというのは,初めて聞いた.熊は臆病で,死肉の方を好むのだが(死んだフリは逆効果),土中にキープしていたということなのだろうか.とにかく,山の神様である.せめて淵沢小十郎のような敬虔な気持ちで,臨んでもらいたいものだ.

5月9日水曜日曇のち晴

     少々蒸し暑い.12:00から教室会議.12:40より,3年生の最初のゼミを行う.取り上げるのは,芥川の「鼻」.
     昨夜,妹からGW中の画像をおさめたCD−Rが着いたとの礼の電話あり.「でも,日付が4月になっていたよ」と指摘され,愕然.ボケたか.
     日本テレビの深夜プログラムで,「ハンセン氏病」患者を特集したものを見る.朝日新聞でも昨日から,特集記事が社会面に連載されている.損害賠償請求の判決が11日に熊本地裁であるためである.病気を,国家が隔離政策の対象とすることで,患者から人間性を剥ぎ取って行く事例の多さには目を覆うばかりである.出産した健康な子供を母親になったばかりの女性に見せてから,「もういいでしょう」と助産婦か看護婦かがうつぶせにして「処置」したらしい,患者の老婦人の涙ながらの証言には,胸が痛んだ(出産は認められておらず,結婚に際し男は断種,女は中絶が義務付けられていた).裁判所は,彼等の剥奪された人生の補償をどう考えるのか,注目される.

5月8日火曜日雨のち曇

     研究室で,自分のお勉強をしていたら,ゼミ生来る.進路&卒論のテーマ相談.電話も多く掛かってきて,中には「マンション経営しませんか」というのもある.いい加減にして欲しい.
     吉田先生来訪.ウチのゼミ生が,4月に財布を鞄から盗まれた件について,事態の処理報告であった.盗難がこのほかに2件あり,女子トイレを覗く痴漢騒ぎもあった.個人的には,大学生もIDカードを使わないと,館内に入れないようにして部外者を入れないようにすることを考える時期に来ているのではないかと思う.もちろん,「内部犯行」はないという前提の上だが,こういう発想は甘いのかな.

5月7日月曜日晴

     午前,午後講義.午後の講義のコメントカードの評点をノートPCに入力する.図書館で調べ物.

5月2日金曜日曇

     GWをいかがお過ごしでしょうか.GWは郷里に帰ろうと思っていましたが,いろいろ雑事をこなしている内に,帰るのが面倒になり,岡山で過ごしています(もともと出不精なんですけどね).
     GW前半,気になっていた映画を2本観に行く機会を得た.一つは「ハンニバル」で,もう一つは「スターリングラード」である.「ハンニバル」の方は,小説を読んでいたので,それとどうしても比較してしまう.映画は映画として見なければいけないのだろうが,原作に比べると随分情報不足で,がっかりした.ラストの改変なども到底いただけない.一番の不満は,レクター博士の人物造形が殆んどされていないことだろう.
     それに比べると「スターリングラード」は,緊張感をみなぎらした佳作に仕上がっていた.ロシア人?やドイツ人が,英語を喋っている事については,この際置く.若手で売り出し中のジュード・ロウが扮する主人公と対するナチス将校役のエド・ハリス(ケーニッヒ少佐)のスナイパー同士の攻防は,見ている時間を蒸発させるようだった.ラストも良い.
     今日は,「海の上のピアニスト」をビデオで観る.世評が高いという事や,先週のゼミの新歓コンパでも話題になったので,重い腰を上げたのだが,「?」であった.何,これは.解説が欲しいというか,誰か意味付けをしてくれないと,この世界は理解できない.
     成田龍一『<歴史>はいかに語られるか』(NHKブックス),『漱石先生の手紙』(NHK出版)を読む.後者は漱石像としては,目新しいものはないが,藤村操が死んだ後,著者に彼を擬した偽書『煩悶記』が明治40年に出たというような古本屋さんならではの情報が,所々出てきて面白い.この連休は,積読書の解消に努めることができそうだ.

     夕方のニュースを見ていたら,漫画家の相原コージ(『コージ辞苑』の作者)が出ていた.ポケベル・携帯を利用することから購買層の消費傾向が変化し,漫画の売り上げが95年以降減少しているそうだ.市場の供給過剰が,内容の多様化とともに作品レベルの低下も招いているのだろう.購買層は,特定作家のものしか買わなくなっているようで,相原コージは,価格を下げることと,作者自身の店頭直接販売という手法で,苦境の打開に乗り出したということで,ブックファースト渋谷店や,千葉のコンビニなどに出向いているとのことだった.大風の吹く中,女子高生にこわごわ遠巻きにされながら販売している姿を見て,漫画家も大変だなぁこりゃ,と他人事ではなく感じる.漫画に比べると,文学なんてぇのは,作家・研究者ともども博物館に入っても良いような状況である.しかし,こういう店頭販売のような努力をしているかといえば,そういうことはない.制度に支えられている部分があるからで,この安穏さが実は一番危険なのである.
     夜,但馬の妹から電話あり.「ちょっと思いついたんだけどぉ,明後日子供達を連れて岡山に遊びに行くかもしれない」
     「え!? なななな,何!」