津島通信

JUNE 2001
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◆CONTENTS◆

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【きむたく日記】

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kimutaku@cc.okayama-u.ac.jp

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広 告(刊行より1年間)

 ¶ 仲 秀和氏『漱石―『夢十夜』以後―』2001.3.30,和泉書院,2,500円+税

 ¶ 江種滿子・井上理恵編『20世紀のベストセラーを読み解く――女性・読者・社会の100年――』2001.3.29,学藝書林,2,500円(税別)

    (所収論文;菅聡子「吉屋信子『花物語』『女の友情』――〈花物語〉のゆくえ」,根岸泰子「太宰治『斜陽』――その揺籃期の物語」他9本.)

 ¶ 花田俊典氏『太宰治のレクチュール』2001.3.10,双文社出版,5,600円

 ¶ 木村小夜氏『太宰治 翻案作品論』2001.2.25,和泉書院,4,800円

 ¶ 『敍説』第2期第1号1,800円(税込) 出ました!花書院(城島印刷) は,こちら

 ¶ 小田島本有氏『小説の中の語り手「私」』2000.10.20,近代文芸社,2,000円(税別)

 


「きむたく日記」

6月29日金曜日晴

     午前中学部講義.短歌史を簡単に紹介してから,与謝野晶子の生涯と「みだれ髪」の作品について話す.もう冷房がはいるようになり,学生の姿を見てみてもすっかり夏である.
     国勢調査の速報が報じられ,15歳未満の人口を65歳以上(しかも独身だそうだ!)が追い抜いたそうだ.少子高齢化が数字の上でもはっきりとしたことになる.僕のように独身で社会の再生産に貢献できない人間にこういうことをいう資格はないのかもしれないが,与謝野寛・晶子は12人子供を生んだ(1人夭折).恵まれない家計の中でも子供を多く生んで育てた(里子に出したのもいるけど).結婚をして,子供を生める人たちは,もっと頑張れないのだろうか.ウチの従兄弟は年子で5人いるぞ(しかも同じ顔で,見分けがつかん).僕も子供は好きだから,大勢欲しいけど,肝心の相手がおらん…(泣).
     教育改革3法が今日成立.問題視された,生徒のボランティアなどの社会奉仕体験がプログラムとして課せられる事になる.奉仕される側との関係も気がかりだが,奉仕活動が一つのプログラムに堕してしまうのではないかという危惧を抱く.社会奉仕は,教育プログラムではなく,社会活動の範疇のものだろうし,一定期間で終わってハイそれではで済まされるものではない.大体,そういう「強制」を授業化しながら,電車内で携帯を使用し,歩行しながら喫煙し,すったタバコは地面に撒き散らし,食べたゴミはそこらに散乱させる.そういう問題行動は黙認していくというのでは,この「社会奉仕」も所詮は画餅に過ぎない.社会性を身につけさせるというのなら,まず生活行動をキチンとさせるべきで,社会奉仕に行っても遅刻三昧・欠席・態度が悪いというので洒落にならないのではないか?

6月27日水曜日晴

     昨日は全国的に猛暑だったようで,岡山でも34度を記録していた.昨日のうちに業者が来てくれてエアコンの修理も成ったのであるが,やはりエアコンのトラブルで今日は終日動き回っているといっていた.
     12:00からAO入試に関する会議.校長が1校だけ学生を推薦する入試と違って,学生が何校も応募できるAO入試(7月〜9月実施)のシステムでは,やる大学は青田刈りできるし,やらないところは落穂拾いになるから(失礼),どうしても周辺大学がやるなら,ウチもやらざるをえないという流れになる.しかも,歩留まりが読めないので,入学定員数が不安定にもなる.学生にはおいしいが,大学側には労多くして,実の少ない入試制度なのだ.
     12:40から3年生ゼミ.終了後,稲田先生に依頼された,Web上で教授会資料の閲覧をする手順を説明し,自分でもやってもらう.25名/130名?中が,まだ資料の閲覧が出来ないのだそうだ.昨年度,全教官にPCが配置されたが,今年度は教授会資料までWebで見ることになった.大変な革新の波であるが,ついていけない教官へのフォローが全く出来ていない.
     生協で書籍を購入.「AERA」29号で,柄谷行人のインタヴュー(吉田司)が掲載されていたので,メシを食べながら目を通す.柄谷の実家が地主というのは初めて知った.あとはNAMの運動の理念と意味付けについて,吉田が説明している.でも,ヨイショ記事.

6月26日火曜日晴

     暑い.昨日は雲って蒸し暑かったが,今日は晴れて暑い.大閉口.
     昨夜,深夜のニュース番組で,北大の日本語教育&スペイン語の先生が関西弁を「外国語」として教えている講義風景が紹介されていた.江戸時代にはアイヌモシリ/蝦夷地と称され,明治期以降は「外地」と言われていた/いる北海道の大学ならではのかなりラジカルな発想に笑ってしまったが,日本語という「言語」と関西弁という「方言」のレベル差を発生させるのは,政治であるという発言には肯けるものがあった.
     もしも大阪が独立国家になったら,もちろん公用語は「関西語」になるし,酒井法子の「ノリピー語」が公用語になる可能性だってゼロではないのだ(外務大臣がノリピー語で,スズキ氏と外務委員会でやりあっている風景は,見ものだが).そう考えると,北大の学生が苦笑しながら,関西弁のアクセントに悪戦苦闘している風景に,台湾や朝鮮半島や南洋諸島の島々の「国語教育」の歴史的なヴィジョンが重なってくるようで,笑ってばかりもいられないのだった.「言語」は政治システムに貫かれているのである.
     2001年度の漱石研究の論文リストを大幅更新する.14:20から4年生ゼミ.ゼミの最中,ペタペタと音がするので,なんだろうと見回すと,冷房をいれたエアコンから水が水道の蛇口を捻ったように落ちているのだった.仰天して,雑巾で水溜りを拭き上げ,ゼミを早々に終え,会計係に「水が,水が」と言いに行くと,事務官から大笑いされた(オマエら冷たいぞ!).16:00から3年ゼミ生の個人指導.Webの「雑誌記事索引」の利用の仕方も教える.ついでに国語教室やこのHPも紹介する.「きむたく日記」を読んだ学生は,「先生のイメージが壊れました」と一言感想を述べたのであった.やめときゃ良かった.
     DAIKINさんは,明日14:30過ぎにエアコンの修理点検に来てくれるそうである.

6月25日月曜日雨

     さて,新しい一週間の始まりである.先週はいろいろと災難や不愉快なことが相次いだので,今週は何事もなく過ぎて欲しいものだ.
     災難といえば,週末に鹿児島で行われた日本近代文学会九州支部の大会は,大雨のため鹿児島本線が止まり,E老井先生やI井K夫先生など大勢の会員が車中に8時間も缶詰状態になったそうだ.長崎大の夢象先生(雨男で有名)は長崎純心女子大のN野氏の運転する車で冠水した道路を走破し,なんとか会場入りはしたものの開会は予定よりも1時間後で,しかも会場の人数はちらほらの少数だったとのこと.しかし報告者が夢象先生しかいないので寂しい気持ちで報告はしたそうなのだが,会員が鹿児島入りできたのは5時過ぎ(普通は閉会時間?)だったという※.九州支部会員には,酒癖の悪い者も多く,酒を飲まなくても言動の怪しい人もいる?ので,今回の出来事は日頃の行いの大切さを彼等に知らしめる教訓となるであろう.すなわちこれは,「天罰」である.なお,支部会員からの抗議・苦情は受け付けない(笑).
     午前中,大学院の講義.午後は学部の講義.蒸し暑く,ハンカチが1枚ぐしょぐしょになった.不快に耐えられず,思考回路も支離滅裂になるし,窓を開けているので,蚊が侵入してくる.虫はいやだ(キャー)!冷房使用の解禁日まで,あと何日だ?
     帰宅する間際に懇話室のメールボックスを覗くと,夏季手当ての給与明細が入っていた.見ると,6月29日支給とあった.「マンモス・ウレピー」(酒井法子(C))

    ※ちなみに,この夢象先生,「お前のせいだ」と心無い支部会員にいぢめられたという噂だ.

6月23日土曜日雨

     午後大学に出勤.今日も大雨である.研究室で,雑務の処理を行ったり,月曜日の講義の準備をする.
     先生になりたいという卒業生が,調書を書いてくれという速達をよこしたが,生年月日の記載を落としているので,確認するために手紙に書いてあった携帯の電話番号にかけると,こちらの声を聞いてスイッチを切りやがった.無礼さに,頭がカッとなった.在学時代は,何を考えているのかよく分からない学生だったが,さらにパワーアップしているようだ(笑).しかし,書くと約束した以上,書かねば男がすたる.教官も気持ちの良い仕事ばかりではない.やれやれ.

6月18日月曜日曇

     午前大学院,午後学部の講義.図書館で調べ物をする.
     昨日は,給料が出たこともあり,久々に映画「マレーナ」(ジュゼッペ・トルナトーレ監督)を観に行く.1940年のシシリー島を舞台に,中学生くらいの男の子の年上の女性への憧憬(性愛)を描いた作品.僕の周辺には,そういう女性は存在しなかったが,あの世代へのノスタルジーを感じた.主人公の親爺さんが,良い味を出している.殆んど子供扱いしないところが良い.それから,マレーナの主人も格好良かった(見れば分かる).男の愛ってやつです.男性には,勿論お勧めなのだが,受動的に生きているだけのマレーナの描かれ方に女性は憤慨するだろうから,あまり勧めない.この監督の映画では,女性は常に男性の憧憬の対象で偶像視されるのだが,この方法論はもともと女性と男性の弁証法的な関係を描くのが苦手だからなのだろう.「海の上のピアニスト」もそうだった.この監督は,支持層が作品ごとに固定してしまい,出来不出来がはっきりしているような気がする.新シリーズ「ウルトラマンコスモス」の映画の予告編を観て,甥っ子たちと観に行こうと固く決心する.「峠」という蕎麦屋で,天婦羅とせいろ2枚食べて,帰宅.
     

6月15日金曜日曇

     昨日まで6:00起きしていたので,今日は目覚ましをセットしていないのに,6:00に目が覚めた.哀しきはA型体質である.
     午前中講義.昨日の講義の話をして,1年生がハムスターみたいに頬をふくらませて食ッとったというと,受講生は大笑いしていた.
     午後鹿児島の中学1年生のために「明暗」の人物相関図を作成.デザインの試行錯誤も含め2時間で完成.図式化してみると見えてきたことが何点かあった.藤井・吉川・岡田たちは友人関係にあり,その「つながり」は次世代の津田たちに継承されているということだ.ホモソーシャルな絆といえるだろう.また藤井家において小林・津田という三角形が描けるのではないかとも思ったので,ちょっと青い色で示してみた.藤井・岡田家の男の子たちも友人同士であり,小説テクストということは当然あろうが,「明暗」には背景として男達の関係がきちんと見て取れるのである.

     ところで,お気づきであろうが,カウンターが10万に届いたようである.この数日のカウンタの数の増え方は尋常ではなかったが,誰か「遊んで」いた?前にもどこかで書いたのだが,このHPのカウンタは何度か止まったりしているので,概数でおじゃる.ちなみに10万を取ったのは私の友人の岡大事務官で,HPを見たら,「99998」だったので,思わず2つ動かしたのだそうだ(大笑).10万をGETして,結構気分は良かったでしょうね.
     4年ゼミ生来る.卒論の対象をどうしましょう?というので,ビスコ(お菓子)を渡して,「頑張るんだよ」と言って,帰す.題目の締切まで,あと3週間.蒙古の襲来まで,あと何日だ.

 

6月14日木曜日雨

     今日も1限目の授業(1年生向けガイダンス).7:00過ぎに出勤して,メールへの返事を出す.北里大学の方から,漱石の辞職願と診断書の保存機関の問合せ,信時さんから関西支部のHPができたとの連絡(僕の好きな赤系で,なかなかセンスよし).「文学会」の表記を「文學會」としてしまうのが,ノブトキ流である(笑).
     8:40から授業.教室が分からず(まさかと思う場所にあった)迷い時間をロス.講義をはじめたが,昨日の事があるので,携帯の電源をきるように指示.これで,妙なヤツはいないだろうと見回したら,一番後ろで食事をしていた(ずっこけた).25分後には,ヘッドホンをつけたまま挨拶もなしに入ってくる茶髪がいたので(これでは先生になれまい),厳重注意.今年の1年生ってのは,野生化している.
 

6月13日水曜日晴のち曇

     1限に1年生向けのガイダンス科目を数学教室のS先生とともに行う.出勤したのは,7:00過ぎ.起きたのは,6:00だった(泣).とても眠く.頭の芯がぼんやりしている.1年生の印象というと,1番目立つ後ろの席で寝ていたり,携帯をいじっていたりで,徹底的に当てて名前を聞いて発言をもとめるが,そういう学生に限って黙秘権を行使する.こちらの指示も聞いていない.「お子様大学生」というやつである.これも高等教育の大衆化,オレが大学の教官をしているくらいなのだから,と自分を慰める(?).
     12:00から教室会議.国語研究会の会費をいきなり徴収され,新渡戸先生と泣くなくお別れさせられた.
     12:40から,3年生のゼミ.報告に慣れていないのは当然なのだが,レジュメを早く読むので,「もっとゆっくり」というと,本当にゆっくり読みやがり,おちょくってんのか,クォゥラ!と巻き舌になりそうだった.しかし,天然というか,ファニーな学生なのだ(この学生のコードネームは,天然居士とする).人間って本当にいろんな人がいるのね(しみじみ).僕は人見知りがはげしいオジサンなので,こういう仕事は本当にストレスが溜まる.I土先生ではないが,奥山深く炭焼きでもしながら「淵沢小十郎」(宮沢賢治「なめとこ山の熊」)のように生きていきたいという心境になる(笑).

     昨夜文部科学省をうろついていて,なんとあの『学制百年史』のアーカイブを見つけてしまった.花咲かじいさんの愛犬ポチの気持ちが良く分かる.黙っておこうかとも思ったが,資料編などは有用な資料でもあり,皆さんにお知らせする次第である.近代文学研究者で教育史関係の研究をしている人からは,感謝のお言葉を賜りたいものですな.Vo\oV

6月12日火曜日晴

     昨日自宅でメールチェックしたら,卒業したばかりのゼミ生が,仕事をやめると言ってきた.来年くらいに教採を受けたいのだそうだ.今日,出勤したら,1昨年卒業して一般就職したはずのゼミ生が,やはり教採を受けると電話をかけてきた.うーむ,ウーム.
     3年生の学生から,旅行の土産だといって,栞を貰った(へへ).ゼミ生からは,新聞の切り抜き(アイヌ関係)を貰った(ウム).
     坪井秀人編著『偏見というまなざし』(青弓社,2001)を読み始める.4限から4年ゼミ.その最中,稲田先生が,ドアをあけて「明日の会議,出てねー!」.終了後,必要になった論文をコピーしに図書館へ.
     帰途生協のブックセンターで,講談社文芸文庫の企画物『戦後短編小説再発見』1,2,加藤典洋『「天皇崩御」の図像学』(平凡社ライブラリー),『となりのののちゃん』(東京創元社)を購入.

6月11日月曜日晴

     2週間ぶりの講義.午前大学院,午後学部の講義をこなす.講義後,ガイダンス科目の打ち合わせをバリバリ行う.5限3年ゼミ生を個人指導でビシバシ.

     先週末に起こった大教大付属池田小学校の惨劇は,学校関係者として非常に衝撃的だった.年少の女の子を中心に殺傷するなど,どう考えても卑劣で悪質な行動は,許し難いものがある.未来の可能性を凶刃によって絶たれてしまった8人の子供達の冥福を心から祈りたい.電話をかけてきた妹は,同じ年頃の男児を持つ母親として,涙が出たといっていた.親御さんの心情を思うと,言葉もない.
     被疑者の人物像については,警察からのリークもあり,精神状態に問題があるというより,粗暴犯が精神分裂病のイメージを利用して起こした凶悪犯罪というように情報を操作しはじめているような気がする.法改正を検討するよりも,今回の被疑者のように粗暴行為を繰り返す人物を継続的に社会復帰させるプログラムの立案を早急に検討すべきであろう.
     なによりも,教員を養成する上で,危機管理が出来なければいけないことも分かってきた.教室に凶刃を持って飛び込んできた侵入者にどう対処すべきなのか.そのような事態は今までの日本では考えられることではなかったが,また時代の歯車が一つまわったようである.考えてみれば,テロの対象として学校は,好餌以外の何ものでもない.

     村上春樹『村上ラヂオ』(マガジンハウス)を読んだ.漱石の「坊っちゃん」について言及している箇所があり(118頁),「物理教師」と紹介していた.正しくは,山嵐と同様の数学教師である.東京物理学校の出身という設定から,まぎれてしまったようだ.傑作は,宇宙旅行のくだりで,ネタ本を読みたくなった.

6月7日水曜日曇時々晴

     蒸し暑い.昼休み,表町に出る.昨日,夏休みに「ライオンキング」を観に行こうとチケットぴあで,チケットを購入した.生協のJCBカードが使えず結局現金で支払ったのだが(話せば長い),その際カードを回収し忘れ,今日店から電話が掛かってきたのだった.大学生協発行のJCBカードには顔写真も入っているので,「この人」とか言われていたのかと思うと,とても恥ずかしかった.
     ついでに天満屋でTシャツを2枚購入.これまたついでに,紀伊國屋書店で,家西悟『妻よ娘よ,きみと生きたい』(小学館文庫,2001.7)を購入.「きみと」ではなく,「きみたち」では無いのかとフト思う.ほか,猪瀬直樹『作家の誕生』(NHK人間講座のテキスト).こちらは,今までの著書のダイジェストである.まだ時間があったので,デオデオ・コンピュータウンに立ち寄り,憧憬のIBMノートPCs30の実物を見物しようと思ったが,ナシ.かわりに,新リブレットを見る.オフィスXPもインストールされていて,ワードXPを操作してみる.起ちあがった画面右側に操作案内が出て,うるさい.前のアシスタントも相当邪魔だったが.銀色のボディーがなかなかのシャープな印象であるし,大分前のリブレットに比べると薄くなった感じだ.
     駐車場への帰り際,誘惑に負けて,天満屋地階のユーハイムのアップルパイを買ってしまう.この結末は,昨夜寝る時から分かっていた…….

     家西さんの本を読んでいると,血友病の大変さがよく理解できる.そして,HIVやC型肝炎ウイルスに感染させられた悔しさも.紹介されていた,厚生省の役人の一言一言の内容の傲慢さにも呆れるばかりだ.岩手県の職員もそうだったが,役人とは,国民に奉仕する存在ではないことを,我々は肝に銘じておく必要がある.ま,外務省の人たちについては,「伏魔殿」「人でなし」と相当非道い人たちであることが紹介されていますけれど,それはどうやら一部の例外的役人ではないようですな.おっと,他省の悪口を言っていてはいけません.

6月5日火曜日雨

     梅雨入りした.
     研究室で,読書したり,講義ノートを作成.稲田先生から,メールソフトの調子が悪いと言われて,PCを見る.学部で立ち上げている,教官用WEBの話も出た.教授会で配布する文書をあらかじめWEBに掲載しておき,それを事前に読んでから会議に出るという構想のもとに作られたものだが,学部長の報告では,教官の半数しかメンバー登録していないようだ.閲覧者にはパスワードが発行されるので,それで人数が判明するのだが,出張で教授会に出ていない僕などはそのようなHPがあることすら知らなかった.メールで連絡が来ていないのだが,誰もそのことを学部長に教えたようでないのは,無用の仕事(?)を避けたい心理からなのか(笑).
     ヤフーニュースに配信されたもので,「雷波少年」(日本TV系)のゴミ集めプログラムで,岩手県が「お役所仕事」振り(たらい回し)を発揮し,視聴者から苦情が寄せられた結果,HPで陳謝したそうだ.

6月4日月曜日晴

     土曜日に久しぶりに古本屋に行った.100円コーナーで,村上春樹の短編集『TVピープル』の帯付き初版本を見つける.思わず笑ってしまった(が,春樹研究をしている院生には黙っておこう).
     今週一週間は,学部の専門科目は講義がない.教育実習期間だからだ.博多で転送して貰った本がまだ届かない(怒).
     午後,会議.1時間半で終了.生協ブックセンターで,書籍の注文.食事をしてから,講義の出欠を確認したり,来週1年生向けに行う「学問の方法」のレジュメを作成して過ごす.

6月1日金曜日晴

     「朝日新聞」(岡山は総合版)を読んでいたら,12日から池澤夏樹が「静かな大地」という北海道開拓史を題材にした小説を連載するという記事があった.中央−辺境的オリエンタリズム観の持ち主が,どのようなアイヌ観を描き出すのか,非常に興味深い.ちなみに,「静かな大地」というタイトルだが,1988年に花崎皋平氏が同名の書物を岩波から出版されている.対象も同じだ.早くも○○○か.

     午前中講義.講義終了後,ゼミ生と雑談.軽く昼食を摂ったあと,図書館で調べもの.8月に中学校の国語教員の先生向けに講義をする必要があるので,教科書にどんな作品が取り上げられているのかを見る.定番の「故郷」をはじめ,「夏の葬列」「走れメロス」「トロッコ」.漱石の「吾輩は猫である」を取り上げていた会社が2つもあったのが心外.中坊には,面白いのかね?

     村上春樹が,ジャック・ロンドンについて触れたエッセイも採用されていた.かいつまむと,日露戦争時に従軍記者として朝鮮半島北部にまで入り込んだ彼は,そこで村人達から歓迎を受けるのだ.文名が上がり始めた頃なので,「このような遠くまで名前が聞こえているのか」と嬉しくなり演台に上がることになった.しかしそこでいわれたことは,
     「申しわけありませんが,先生の入れ歯を見せていただけませんか」
     その土地の人たちは,入れ歯というものを見たことがなかったのだそうだ.それから,寒風の吹きすさぶ中,ジャック・ロンドンは,人々が拍手喝采する中,愛想よく30分ばかり,入れ歯を出したり入れたりして見せて上げたそうだ.
     このあと村上春樹は,ジャック・ロンドンが得た教訓について,1000人が同じ体験をしても彼のような教訓を得ることは出来ないだろうとひとしきり感心して見せているのだが,僕はその「教訓」よりもジャック・ロンドンの態度に感心したのだった.
     さて,「教訓」の内容が気になる人もいるだろうが,今日はこれでおしまい(笑).あなたなら,どんな教訓を得ますか?