津島通信

OCTOBER 2002
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◆CONTENTS◆

【広告】
【きむたく日記】

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感想をお聞かせ下さい。
kimutaku@cc.okayama-u.ac.jp

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広 告(刊行より1年間)

 ¶ 小田島本有氏 『午後のひとときコーヒーブレイク』 近代文芸社,2002.10.1,本体1,000円(税別)

 ¶ 小田切靖明氏・榊原貴教氏 『夏目漱石の研究と書誌』 ナダ出版センター,2002.7.10,本体6,000円(税別)

 ¶ 金 正勲氏 『漱石 男の言草・女の仕草』 和泉書院,2002.2.28,本体4,500円(税別)

    金氏は,韓国全南科学大学助教授(現在)

 ¶ 花田俊典氏 『清新な光景の軌跡--西日本戦後文学史』 西日本新聞社,2002.5.15,本体2,856円(税別)

 ¶ 佐藤 泉氏 『漱石 片付かない<近代>』 日本放送出版協会,2002.1.30,920円(税込)

 ¶ 『敍 説』 第2期第3号「特集・夢野久作―聖賤の交雑―」 花書院,2002.1.6,1,800円(税込)

 ¶ 于 耀明氏 『周 作人と日本近代文学』 翰林書房,2001.11.9,本体4,000円(税別)

 ¶ 菅 聡子氏 『メディアの時代--明治文学をめぐる状況』 双文社出版,2001.11.1,本体2,800円(税別)

   (近代文学成立期の一側面/<文士>の経済事情/初期硯友社と吉岡書籍店/『読者評判記』の周辺/百合とダイアモンド/小杉天外『魔風恋風』の戦略/<対話>の生成−−場所としての一葉身体/『通俗書簡文』の可能性/流通する<閨秀作家>)


「演劇鑑賞サークル」のご案内 (岡山限定)  

   以下の要領で,演劇を鑑賞する仲間を募集します.役者が目の前で演じている舞
   台を見ると,TVや映画とは違う迫力と魅力に圧倒されます.募集の期限はあり
  ませんので,是非入会をご検討ください.

                  記

  ・入会の条件
   @教官・事務官・学生・院生・OB,OGなど,一切不問.
   A最低半年以上,サークル会員でいられる人.
 
  ・ 申し込み先:木村 功  〒700-8530 岡山市津島中3丁目1−1 岡山大学教育学部内
     (入会先:岡山市民劇場  岡山市磨屋町4-21 金谷ビル2F,086-224-7121,FAX086-224-7125)

    ・費用
   @入会金:1,500円
   A月会費:
        一般会員;2,300円
        学生会員;1,800円,
    
  ・演劇上演の時,入場料は要りません
  年間平均6〜8本の演劇が鑑賞できます.普通演劇鑑賞は,5,000円以上/1回
 かかりますので,演劇が好きな人にはかなりお得といえるでしょう.また,席が
 余れば期間中複数回の観劇も可能です.
 
  ・個人単位だと,事務局から割り当てられる座席の位置が悪くなるので,「サー
  クル」という単位(3人以上)を作って座席の割り当てを貰った方が,費用対効
  果があがるのです.

  ・詳細は,木村まで.

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 2002年
  10月例会 「雨」(井上ひさし原作,出演辻萬長,三田和代ほか)
  12月例会 「セールスマンの死」(アーサー・ミラー原作,仲代達矢ほか)


「きむたく日記」

10月30日水曜日晴

     昨日,久しぶりに板書をした.今日になって人差し指が軽い突き指状態になっているのに気が付いた.普段と異なる指の使い方をして筋を痛めたらしい.曲げると痛い.
     昨夜倉敷市芸文館で,坂手洋二原作・演出の「最後の一人までが全体である」という演劇を見てきた.金八先生の前シリーズで校長役だった木場克己も出演していた.
     観ていて,岡大の学友会騒動がモデルになっていることに気がついた.演劇の中では大学当局が抑圧する側として描き出されていて,どうも観ているのに居心地が悪かった.
     舞台自体も分かりやすいものではなく,一回では理解できなかった.力量は十分感じたのだが,如何せん客席数が前半分しか埋まらない状況はかなり厳しい.

10月24日木曜日晴

     学部・大学院の講義.
     生協で,新刊チェック.苅谷グループの『調査報告 「学力低下」の実態』(岩波ブックレット,10.18)などを購入.「国語の学力はどう変化したか」を先に読む.主語・述語に関する知識の定着度が低いことなど,コミュニケーション以前の問題があることを指摘している.
     我々公教育の分野にいる人間は,対策をどう組み立てたらよいのか.知恵もアイデアも浮かばん….とりあえず現実逃避で,「炎のゴブレット」を読むが,100頁読んでも物語が進行しない.どうなってるの.明日から出張なのに…….

10月23日水曜日晴

     暑いとかいっていたら,急に肌寒くなった.あわてて冬物のスーツを出す.ズボンが気のせいかきつい.そういえば先日BB(※)にスーツを買いに行ったら,店員さんがニッコリ笑って「1サイズ上げましょうね」といった.あれは,結構ショックだった.「先生は,ゲイじゃないんですか」と言われた時ほどでは無くても,「スケベひげ」発言相当である.

     附中で研究授業.最初に授業をするゼミ生Dが僕を見つけてやって来て,「先生,わたしのことホームページに書かないで下さい,友達も(HPを)見てるんです」という.よほど書いて欲しいのかな?と思った.授業でDは,普段よりも蒼白な顔で,オクターブを上げた声で授業をした.とても楽しめた.

     冗談はさておき,国語の教生の問題として一番に感じたのは,板書技術が「下手」ということだった.板書に授業の流れが表れないので,あとでデジカメの画像を見ても,情報を補うために記憶を喚起しなければならない.板書―ノートを見れば,授業で何を学んだか,どういうまとめがされたのか分かるように心がけるべきではないか.私学の教員時代僕は黒板を使うと,2回は板書を消して更新していた.まとめ上げるのが下手なのかもしれないが,生徒の意見を板書し,まとめまで書き上げるとそうなるのだ.3名の教生の研究授業で,黒板が更新されたことは一度もなかった.
     反省会では,いろいろ意見が出された.授業内容の是非という根本的な問題.授業の構成の妥当性.教材研究の(出来てない)問題 .教授技術の問題.1〜10まで出尽くした感があったが,現場に出ればここまでコテンパンに言われる事はなくなる.
     腹も立つだろうが,自分が言われたことはじっくり反省して,自分が指摘されなかったことは参考にして,次の授業のステップにして貰いたい.「生徒が第一に満足しなければならないんですよ」という指導教官の言葉をかみ締めて欲しい.

     注文していた「ハリー・ポッター」第4巻を生協で購入.講義の準備もこれから(23:38)するので,夜はとても長くなりそうだ.おかげで頼まれている分担分の原稿書きが進まない.
     母から誕生祝いの礼の電話あり.父は,優雅に三朝温泉へ友人達と旅行だそうだ.母によると叔父が最近の「日記」を読んだらしい.どうも身内ネタがかけなくなる.インターネットにつないでいないのは,妹のところだけかもしれない.

    (※)ブルックス・ブラザーズ:ボタンダウンシャツを生み出した,アメリカントラッドの老舗.ラルフローレンも,この店で修行した.11月に公開される「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」の主人公レスタトもご愛用(アン・ライス原作ではね).

10月22日火曜日曇のち晴

     快晴で,暑い.
     最近,今年度igノーベル賞を受賞した犬語?翻訳機「バウリンガル」(タカラ,14,800円)が気になっている.
     犬を飼っているわけではない.小さい頃,「小山のような黒い犬」に追いかけられて足首をかまれたことのある僕は,むしろ犬は嫌いな動物である.太宰の「畜犬談」ではないが,「犬畜生とはよくいったものだ」.
     今住んでいる借家の隣に,僕の気配を察知しただけで,ほえまくる「犬畜生」バカがいて,こいつが一体何を考えているのか,異文化コミュニケーションしてみたくなったのである.できれば,こちらの「思い」もしっかり伝えてあげたいので,そういう双方向型の機能を今後は付け加えて欲しいものだ.
     ちなみにウチは,ロシアンブルー(に見える)のデブネコのテリトリーにもなっているらしく,車のボンネットに寝そべっていてくれたり,台所で洗い物をしていると勝手口のドアをガリガリやってくれたりするので,「阿呆ぅ」というと,「にゃ〜ん」(メシくれ)と言うのである.猫語は大丈夫.
     おお,明日はハリー・ポッターの第四巻の発売日ではないか.しかし,我々教官は附中での研究授業に参加しなければならない.夜が来るのが待ち遠しい.いや,果たして23日の夜は眠ることが出来るのか?秋の夜は,長い….

10月21日月曜日曇のち晴

     「日本近代文学」67集が来ていたので,それを読みながら就寝.毎回ハードルの低いわりに,学会内の現状に関する情報が書かれている「展望」を直ぐに読むのだが,ここには時々悪文が出現する.さすがに論文については,内容はともかく文章がわからないというのはない.
     しかし,今回目を通した「展望」にも3回読んでも書き出しの意味が取れないものがあった(以前は,最初から最後まで何を言いたいのか良く分からぬものまで載った).僕は,3回読み直して意味が分からなければ,自分が原因とは考えないヒトである(笑).意味が取れなかったのは,最初だけだったが,編集委員会ももう少し毅然として,書き直しを指示したら良いだろう.「論文」ではないから,まぁいいやは困る.
     書くことの意味は情報の伝達である.そういう最低限の配慮がなされていない文章を,気鋭の文章だからといってそのまま載せるべきではない(あ,これで誰か分かるか).後で気が付いたご本人にもかえって気の毒なことになる.

     職員懇話室で,数学教室のS氏と音楽教室のA氏と会った.S氏が「その顔も大分見慣れたなぁ」と言われるので,思わず「先日,Aさん(グーグーガンモ)に,スケベなヒゲだと言われたんですよ〜」と訴えた.すると,S氏は言った.
     「おれも,そう思う」
     (ギャハハ)←A氏

10月20日日曜日雨

     京都に出張するために7:00に起床する.新幹線で10:30過ぎに京都駅に到着し,205番のバスで出町柳に向かう.今日は,精華学園を会場に行われる,京都府私立中学高等学校教育研究大会の国語教育分科会で行われるシンポジウム(「鼻」)に参加するための入京である.勿論出町柳ということで,和菓子「ふたば」で豆餅(150円)を買うことも忘れなかった.栗餅・田舎大福も購入.
     久しぶりに洛星中学・高等学校の国語科教員仲間に再会できて本当に懐かしく嬉しかった.彼らの顔を見て互いに年月を重ねたなぁと思う.
     分科会の最初のイベントは,浜崎麿吉氏の語りで,芥川の「鼻」が上演された.僕はてっきり朗読だと思っていたら,見事に違った.作品を覚えて,それをまさに「語る」のである.朗読ではない,「鼻」を演じるのである.
     朗読は,作者の言葉を忠実に,時には感情を込めて再現する行為なのだろうが,語りは作者の言葉を一旦消化して自分の体の中に入れ,自分の解釈を交えながらその物語を視聴者を前に再現して行く,一回性の演技なのである.僕は,非常な衝撃を受けた.後で浜崎氏に伺ったところ,朗読する場合は,ラジオが一番良い.俳優の顔が目の前にいると,情報が不純になる.吉永小百合さんの,原爆関係の朗読もTV画面を見ながらだと良いとは思わないが,声だけ聞いていると良い,ということだった.そして演技する以上は,演技を意識するのではなく,日常行為のように自然に出来るところまで行くのが理想なのだ.江守徹という役者は抜群に上手いが,最後に江守徹を付け加えてしまうので,誰を演じても江守徹である.しかし,それは若手俳優が,誰にもなれなくて自分そのままであるのとは,雲泥の違いがある(つまり江守は目立ちたがりなのだそうだ).

     僕も,「鼻」か何かを覚えて,一度学生の前で語ってやろうかなぁと思った.但し記憶能力が最近とみに減退しているので,短編に限る.「ベロ出しちょんま」か「セメント樽」か.登場人物が3人になると演じわけが格段に難しくなるそうなので,太宰の「待つ」あたりも良いかもしれない.

     帰宅して風呂上りに,朝日の土曜日用の特別版の紙面を読んでいると,「いわせてもらお」にこんな笑い話が載っていた.
     ◎不眠治療
     小学6年生の息子は本を読むのが苦手.
    あまりのたどたどしさに,聞く者は猛烈な
    睡魔に襲われる.先日も,「まさか」と笑
    う不眠症の祖母を,5分で寝かしつけた.
    (東京都杉並区・すでに3人寝かした実績
    あり
    ・41歳)
     おそるべき「朗読者」(笑).不純度の高い朗読は,不眠治療になるらしい.ちょっとベルンハルト・シュリンクの『朗読者』を思い出したが,この小6の「朗読者」の方が健康的である.僕も寝つきがカナリ悪いので,また年末にでも甥たちに枕元で朗読をしてもらおう.  

10月19日土曜日曇のち雨

     9:00から小学校教員資格認定試験の待機要員として,試験本部につめる.待機時間中暇だったので,試験問題を吟味したり,周囲と雑談をして過ごしていたのだが,保健体育教室のA氏という教官が,僕の髭を見ながらいった.
     「木村さん,そのひげ,スケベが入っている
     スケベが入ったヒゲというものを僕は知らないのだが,正直ポーカーフェイスの僕にも動揺が走った.自分のコンセプトは,「レット・バトラー」(「風とともに去りぬ」)だったのに…
     ちなみに,レットを「動揺」させたA氏は,往年のマンガ&アニメ,グーグーガンモに似ている.どうみてもガンモである.ガンモに違いない.

10月18日金曜日曇

    暑いが,午後から曇り始めた.4限の時間帯に附属小学校で実習をしているゼミ生の授業参観に,他のゼミ生を連れて行ってきた.
     教材は,高橋生亮「ロシアパン」である.ロシア革命後,20年近くたって日本の東北地方の町に流れてきたパン屋を営むロシア人一家を.近所に住む八百屋の息子である「私」の目を通して描いたものである.最初町の人々となじめなかったのが,次第に受け入れられていき,仲良く異文化交流が出来ていたところへ,日本が中国への侵攻を始めて,ロシア人をスパイ扱いするようになり,町にいられなくなったロシア人が町から去って行くのである.
     授業をする上で,ロシア人をめぐる周囲の態度と「私」の一家の態度のズレ,それから戦争が始まってからの周囲とロシア人一家と「私」の家族の態度を時間軸に沿って整理し,それぞれの心情の変化を把握していかなければならない.
     ゼミ生の授業では,「私」の父にスポットを当て,「父の生き方は納得のできるものであったか」という「めあて」(授業目標のこと)を設定した.父の,ロシア人一家に対する「態度」の変化(同情→同情ばかりもしていられない微妙な立場)を把握し,その態度を評価するというのが,授業の狙いであった(指導教官のS先生談).
     しかし,ゼミ生の授業は,父親のロシア人に対する態度を子供たちに読み取らせる時に,時系列を無視してバラバラに指摘させたために,最後から最初の方の心情に遡ったり,途中が付け足されたりし,父親・状況の時間的変化が無視されたため分かりにくくなってしまった.また,それぞれのピックアップにはその時点で子供のコメントも書き加えたものだから,その混乱に拍車がかかった.
     板書を見れば,一応右から左へと時系列が出来上がっていたのだが,それは状況と心情の変化を踏まえたものではないので,子供たちには父親のコミュニティの中での立場から生じる態度の変化が理解できなかったのではないか.少なくとも僕には,分かりにくかった.
     子供たちは,父親の「生き方」(→「ロシア人に対する態度」というのが正確)を「中途半端」だと指摘した.その中途半端がどうして生じるのかも,作品は提示している.そこにまで届かなかったのは,父親の心情を細かく考えさせ,また聞き過ぎて時間が足らなくなってしまったからだった.
     例えば僕なら,父親の心情が大きく変化したポイントだけを聞くようにする.<「いろいろ訳があるだろうが…….しかし,かわいそうだな.いろんな所をめぐりめぐって,こんな所まで来たんだろうが…….」私の父は同情するようにいった.>と,<「さあ,どうだかな.スパイではないだろう.何もはっきりした証こもないんだから…….」父もぼんやり同情するように言った.>の部分である.父の「同情」は前者と後者では明らかに違っており,「ぼんやり」という後退をもたらしたものこそ,戦争と周囲の外国人排斥の空気なのである.ここだけでも,父親の変化は明瞭に見て取れる.ここを中心にして父親像を考えさせることが出来たと思うのである.そして,父親の中途半端さこそ,町の中で商売をして生きている人間の精一杯の善良さの(消極的な)表れであることにも,子供たちを導けたであろう.

     しかし,実はこの授業内容よりも,僕にはもっと大きな懸念があった.ゼミ生のキャラが教室に受け入れられているかが心配だったのである.初対面の指導教諭の先生も僕の心配を一番に分かってくれていて(笑),「最近は子供本位で動いてくれていて,ずいぶん視野が広がっているのを感じます」とおっしゃって下さった.
     僕は,ただ頭を下げるばかりだった.

10月17日木曜日晴

     今日も暑い.学部と大学院の講義.それを済ませた後,何か簡単な食べ物をと,生協でおにぎりなどを探していると,シルクの半そでに黒いジーンズという涼しげな姿のNさんがやって来た.文・教の国語関係では,紅一点の教官である.
     声をかけると,最初怪訝そうな顔だったのだが,直ぐに「僕」と認めてくれたようだった.普段彼女が見ている時の僕はジーンズ姿なので,スーツ姿では直ぐに分からなかったとのこと.ま,それに10月から髭を生やしているので,人相も変わっていたのだ.僕の方は僕の方で,ジーンズ姿を初めて見たので,スカート姿のフェミニンな印象からは少し意外だった.
     言語学の彼女のゼミで,今度学生が行う現代岡山方言のフィールド・ワークに使う録音用のカセットテープを買いに来たということだった.ICレコーダーのようなデジタル機器よりもアナログ機器の方が使いやすいのだという(そんなものか).しばらく雑談に付き合ってもらった.文学部の国語学の先生で,名物教授のS先生(注)に話題が及んで,車に600万円費やしたという話にビックリさせられた.内装に200万掛けた総革張りのその車に,彼女は1回だけ乗ったことがあるという(怖いもの知らずというか).下着のパンツまでシルク(しかも使い捨てらしい)だというこの方の「ご趣味」(だんでぃずむ,とお読みください)の世界は深いのだなぁと,Nさんのお話を聞いて思うのだった.
     (よく考えると,この話↑は学生たちが買い物をしている場所で行っておりました.S先生,スイマセン.←ネット上でこんな話が暴露されているとは,知る由もないか)
     (注)S先生(65)の研究室は書物の重量で,コンクリートの床でさえ,底が抜けるといわれている.階下の先生は,日々怯えながら暮らしているという.その他,指輪.紫のシルクシャツ.真っ白な上下.カバンはもたず風呂敷愛用など,「天才柳沢教授」にレギュラー出演してもおかしくない.

10月15日火曜日晴

     10月中旬だというのに,この夏日はなんだろう.
     連休最後の昨日,ドライブの帰りに,車をバックさせていたら,左後方からやって来た車に気を取られていて,右後方の注意をしていなかったために,樹木に激突!.
     車の右後部は,テールランプカバーが割れ,後部バンパーも変形してしまった(泣).7年目にして物損をしてしまった.これを戒めとして,運転には細心の注意を払いたいものである.車の買い替えを検討しているので,もう修理もせず,このままで走り続けるつもりだ.綺麗な車体であることにこしたことはないが,所詮車なんて走れば良いのよ.
     午後,学部講義2つ.「神聖喜劇」第4巻を入手.解説は島根大の武田信明氏.

10月10日木曜日晴

     学部と大学院のガイダンスを行う.
     昼食をとってから,生協で岩井志麻子の新刊『黒焦げ美人』(文芸春秋)やアドルノ『ミニマ・モラリア』(法政大学出版局)など数冊を購入.「黒焦げ美人」というエキセントリックなタイトルだが,岡山で実際にあった殺人事件に基づいたもの.
     昨日丸善で井上雄彦の「リアル」の2巻を買ったついでに,竹田青嗣と東浩紀の対談や大塚英志の評論を読もうと「小説トリッパー」も購入したのだが,その中の岩井志麻子と花村なんちゃらさんの対談も拾い読みしていると,あまりの下ネタが炸裂する「対談」が掲載されているのであきれ返るばかりの私だった.いくら彼女の特集号であるからといって,情報にもなってない「対談」(与太話とお読みください)を載せるなど,この編集者はアホである.巻頭に掲げられた彼女に関わってきた編集者たちのオマージュが,哀しかった.
    今のところ岩井志麻子の一番は「ぼっけいきょうてい」である(キッパリ).
     17:00過ぎ,卒論の草稿が入ったFDとノートパソコンを抱えてゼミ生来る.「地獄変」で書くのだが,予想以上に面白い草稿メモを見せてもらえた.あとは,メモの数を増やし,論じる順番を決めて,メモの内容を膨らませていくだけである.まだまだ前途は多難ではあろうが,先の見通しがたったので,まずは安堵する.

10月9日水曜日晴

     昨日は帰宅してから直ぐに寝てしまった.20:00過ぎに起きて,また2:00頃に寝ようとしたのだが,一睡も出来なかった(今モーレツに眠い).しかも夜中は冷え込んで,とても寒かった.
     ニュースを見ていると,小柴先生のノーベル物理学賞受賞のニュースが大きく取り上げられていたが,正午には株価下落で様相が変わっていた.朝日が「竹中ショック」と呼ぶ経済政策で,株価は底なしの下落傾向にある.柳沢さんを更迭した期待感で株価の値が少し上げても,結果がこれでは元も子もない.これでも小泉内閣が倒れないのは,人材不足というのか,火中の栗など誰も拾わぬというだけなのか.その間にも,日本はどんどん「難破船」の様相を深めて行く.
     そんなことよりも,ちょっとビックリしたのは,福岡の小学校69校で,6年生の本年度「通知表」に愛国心をABCの3段階で評価する記載があったことが報じられていたことだ.これは学習指導要領に基づいて,校長会が作成委員会に依頼して作成したもので,実際の採用は校長各自の裁量によるものらしい.
     「愛国心」を指導するということと,それを評価するということは微妙に違う.指導するなら,「日本人として誇りを持ちましょう.それは,例えば牛肉の表示偽装スーパーに,自分が「偽客」になってお金を詐取しに行く火事場泥棒のような卑怯な行為をしないことです」と言うだけでよい.しかし,評価するということは「愛国心」をもっている人がいて,「愛国心」の発言を正当に測ることが出来るということだ.もし,それが本当に可能であれば,ということだが.
     それから,今福岡の現場で問題になっているように在日の児童に「日本人」としての「愛国心」を求めるような指導体制は「検討しなければならない」(文部科学省のお役人).加えて思想信条の自由に反するのではないかという疑念もある.大体その「愛国心」は,それを内外に体現すべきセンセイ方において,まず評価するシステムを作るべきだろう.彼らの中には,我々の血税を受け取っておきながら,「なんとかハウス」のような私利私欲に走ったり,拉致された人の家族の訴えを24年間も無視したりする人たちもいるのだから.そのような人ばかりではないはずの,国の指導者的立場にある人々において「愛国心」がしっかりと体現されているのであれば,未来の日本国民たちにそれを課するのも僕は認めて良いと思う.
     もっとも「愛国心」の権化のような国でも,自らと副大統領の経済疑獄隠しにイラク攻撃のための世論の取りまとめに奔走するようでは,それはほとんど画餅のような意味しかもたぬように思えるのであるが.
     ホント胸糞悪いので,気分転換に今日書店から納入された佐藤卓己『「キング」の時代』(岩波書店)に目を通す.

10月8日火曜日晴

     3年のゼミ生来る.2ヶ月ぶりに姿を見た.「先生,なんか変わりましたね」と言われるが,夏太りしたことくらいしか思い当たることが無い.
     後期の講義初日.昨夜から体の節々が痛く,悪寒がしていたのだが,どうやら薄着で寝たために風邪をひいたらしい.微熱があるが,講義を強行する.
     講義を終えて重いからだを研究室へ向かって運んでいると,学生の集団が廊下でサルの様に大きな声を上げていて,それが頭に響いて辛かった.今夜は,薬を飲んで早く寝よう.

10月7日月曜日曇

     明日から専門の講義が始まるので,図書館に行ったりして,講義資料の準備に一日を費やす.
     先週土曜日にノートルダム清心女子大学のオープンキャンパスの一環で,コロンビア大学名誉教授のドナルド・キーンを招いた講演会があり,それを聞きに出かけて行った.
     「世界の中の日本文化」と題した講演は,1時間という時間の制約もあり縄文時代から江戸時代までの日本が外国との交流,というより文化を輸入することで国を作り上げてきたことを,さまざまなエピソードを散りばめて紹介していた.
     例えば「鎖国」という言葉について,オランダ人を偽装したドイツ人ケンペルの著書の翻訳語で,日本に輸入された概念であるというのを知らなかったので,これは勉強になった.しかし,米国の日本研究者に日本人が講演を通じて日本文化の特質(輸入文化)を教わっている構図そのものが,キーンの描く日本のあり方についての図式そのものの体現であり,聞いている僕自身は非常にむかついてくるのだった.平安時代や,鎖国時代の「国風文化」への言及をしなかったキーンに,ある「悪意」(皮肉)を感じないではいられなかった.それとも,僕がひねくれているだけなのだろうか?

10月3日木曜日晴

     今日も夏日である.昨日夜,岡山市民会館にこまつ座の「雨」を観にいってきた.
     井上演劇には珍しい江戸時代を舞台にした連続殺人劇なのであるが,主人公はある人物になりすまし,家付きの女房と財産の乗っ取りをたくらむ.顔かたちが似ていることから,言葉遣いを直し,都合の悪いことは「天狗に記憶を盗まれた」と誤魔化して,当人のなりすましに成功する.自分の過去や偽者であることを見抜いた人物たちは消してしまう.しかし最後の幕で,オセロゲームでいうなら,「白」がすべて「黒」に反転するような大どんでん返しが主人公を,というより我々観客を待っていたのである.だましたつもりが,騙されていたのは,主人公なのであり,観客なのであった.
     見事な構成で,感心したというよりも,こうなるだろうという結末を通り越した「結末」だったので,悔しかったくらいだ.
     「大どんでん返し」をここに書いてしまうと,初めて見る人の感興を奪うことになるので,詳しくは書かない.見所は,小道具の「五寸釘」が,生活の手段から,人殺しのそれへ,そして最後には主人公のアイデンティティ喪失の象徴であり,主人公の命を奪うものとなるという一連の変化である.また,俳優辻萬長の舞台上での一人二役も面白い.それから,妻を演じた三田和代が「家業を守る女」の怖さを見事に演じきっていた.
     機会があれば,是非見ていただきたいものだ.
     22:30過ぎに帰宅してから,拉致事件関係の報道番組を,夜食のおにぎりを食べながら見る.横田めぐみさんは,僕と同い年なので気になっている人なのだが,うつ病で自殺したという内容には胸が痛んだ.事実とすれば,彼女が追い込まれていたのは当然で,気の毒で仕様が無い.あの男のドラ息子一家を,あのオバサンがさっさと送り返したことが,今更のように悔やまれてならない.
     研究室で,来週から始まる専門の講義の「献立表」を書いていたら,ゼミ生が卒論の相談にやって来た.遊んでばかりで,卒論のことをスッカリ失念していた自分が,そこにいた.「…天狗に脳を半分盗られた」

10月1日火曜日晴

     昨日に続いて蒸し暑い.しかし,もう10月なのだ.来週からは専門の講義が始まるし,時間の経過ってホントに早い.
     一日書類書きに追われる.教養の事務が,もう終わっているはずの前期の成績処理の書類を「確認してくれ」といってきたりして,要領が悪い.
     昨日,北海道の西友で豚肉の日付の虚偽記載のお詫びに,購入者の申請でお金を返すと告示したところ,レシートなしの自己申告でも良かったことから,大勢返金を求める人間が殺到して,虚偽記載で販売した金額の4倍に相当する5,000万円を支払う破目になったという.西友は自業自得だが,人の弱みに付け込んで金を取ろうとする者達にも,この国のレベルを見る思いがした.
     10代のワカイのが,金が貰えなくて怒りのあまり担当者を蹴り飛ばし暴行容疑で逮捕されていたのだが,こいつも「実は買ってなかった」ということだった.「貧すれば鈍す」という言葉を思い出す.
     おりしも,小泉改造内閣が昨夜発足した.柳沢さんをクビにして,さて日本の金融行政は起死回生となるのか?