津島通信

OCTOBER 2003
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◆CONTENTS◆

【広告】
【きむたく日記】

◆今月の予定

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感想をお聞かせ下さい。
kimutaku@cc.okayama-u.ac.jp

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広 告(刊行より1年間)

¶ 千年紀文学の会編『過去への責任と文学』,皓星社,2003.8.15.本体2,800円(税別)

 綾目広治「現代思想と文学―九・一一の以後の文学と思想」他

¶ 『敍説』Uー06,「特集◆性交」,花書院,,2003.8.12.本体1,800円(税込)

¶ 原爆文学研究会編『原爆文学研究』2,花書院,2003.8.1.本体1,200円(税込)

目次

¶ 鳥井正晴氏『明暗評釈』第1巻(第1章〜第44章),和泉書院,2003.3.30.本体5,500円(税別)

¶ 岡山市・岡山市文学賞運営委員会編『おかやま しみんのどうわ2003』吉備人(きびと)出版,2003.2.8,定価1,000円

 ¶ 小田島本有氏 『午後のひとときコーヒーブレイク』 近代文芸社,2002.10.1,本体1,000円(税別)

 


「演劇鑑賞サークル」のご案内 (岡山限定)  

   以下の要領で,演劇を鑑賞する仲間を募集します.役者が目の前で演じている舞
   台を見ると,TVや映画とは違う迫力と魅力に圧倒されます.募集の期限はあり
  ませんので,是非入会をご検討ください.

                  記

  ・入会の条件
   @教官・事務官・学生・院生・OB,OGなど,一切不問.
   A最低半年以上,サークル会員でいられる人.
 
  ・ 申し込み先:木村 功  〒700-8530 岡山市津島中3丁目1−1 岡山大学教育学部内
     (入会先:岡山市民劇場  岡山市磨屋町4-21 金谷ビル2F,086-224-7121,FAX086-224-7125)

    ・費用
   @入会金:1,500円
   A月会費:
        一般会員;2,300円
        学生会員;1,800円,
    
  ・演劇上演の時,入場料は要りません
  年間平均6〜8本の演劇が鑑賞できます.普通演劇鑑賞は,5,000円以上/1回
 かかりますので,演劇が好きな人にはかなりお得といえるでしょう.また,席が
 余れば期間中複数回の観劇も可能です.
 
  ・個人単位だと,事務局から割り当てられる座席の位置が悪くなるので,「サー
  クル」という単位(3人以上)を作って座席の割り当てを貰った方が,費用対効
  果があがるのです.

  ・詳細は,木村まで.

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 2003年 11月例会「三人吉三巴白浪」(さんにんきちさともえのしらなみ)(原作:河竹黙阿弥,出演:河原崎國太郎,藤川矢之輔,瀬川菊之丞)
 


「きむたく日記」

10月30日木曜日晴

     2限の近代文学の講義中,講義棟が面した道路をパトカーがサイレンを鳴らしながら通過した.志賀直哉の「城の崎にて」で,ネズミのシーンを解説していた.
     続いて,あの難解というか意味不明の悪文「あるがまま」のところを話していると,消防車が,カンカン音をたてながら通過していった.
     そして桑の葉の場面を「いのち」(草稿)を参照しながら解説していると,今度は取材ヘリがバタバタ音をたてて来襲した.「この,桑の□▼×が一枚◆※Bヒラしているのは〜」
     研究室でおにぎりで軽く昼食をとっていると,取材を追えたヘリコプターが,またバタバタと通過していった.
     いい加減にしろ!

10月28日火曜日曇

     昨日は15:00から大学主催のセクハラ講習会があった.岡山弁護士会の弁護士(女性)を招いての2時間の講演であった.話を単純化したのか,男性・上司・教官→女性・部下・学生という形でのセクハラを中心に話をされて,逆パターン(女性→男性,部下→上司,学生→教官)へのセクハラとか,同性間でのセクハラ(「木村さん,結婚まだ?」「子どもまだ?」)のようなパターンへの言及はなかった.事例も少ないのだろうけど,ないわけではない.僕自身はカンヨウというか世間のジョーシキとずれているのか,「結婚まだ?」とか「子どもは?」といわれても全然気にならないのだが,世間的にはセクハラと認識すべき事例なのだそうだ.
     話を聞いてみると,やはり弁護士さんは,事例が生じた上での対症療法的な動きしかできないことがわかる.「女は大学に進学しなくてよい」「大学院まで行くと嫁の貰い手がなくなる」「男のくせに」などの,ジェンダー・ハラスメントのような社会通念化した男女観などは,自然化(常識?化)しているために,ジェンダーそのものの勉強をしていないと当人にはなかなか意識されない.「教育」というものが必要になるわけなのだが,一応高等教育機関視されている大学でセクハラが発生するのは,実は大学が男性中心主義で運営されている組織であることが,大きな要因であろう.女性教官・教員の数を数えれば,それが分かる.大学教官・教員の頭の中身を,「教育」によって更新することも大事なのだが,制度面も更新することを忘れてはいけない.その意味で,セクハラ委員会は大学の人間だけではなく外部委員を入れることが必要であるという声が会場から出たことはは,歓迎すべき反応であった.

10月27日月曜日晴

     25日,26日と金沢大学で行われた日本近代文学会に参加.金沢を訪れるのは初めてで,大学に行くまでに経過する香林坊の街並みを見ていると,かつて加賀百万国と言われた金沢の繁栄ぶりが良く分かる.少なくとも岡山などは相手にならない.
     しかし,である.大学は昔あった場所から移転したらしく,角間キャンパスはすごく遠くてタクシーやバスで片道30分を要する距離であった.山の上にある大阪教育大学キャンパスに行ったときは,「これはほとんど登山だ」と思ったものだが,金沢大角間キャンパスは「陸の孤島」で,その上だらだら坂を上ったところに文学部はあった.しかも聞くところでは学生には車での通学が禁止されているということで,自転車やバスで通学しているのだという.バスの本数も多いとはいえず,不便な生活を強いられていることと思う.
     さて学会の内容だが,初日は3名の方の報告を聞いた.四方田氏の鏡花作品と映画に関する報告は,貴重なビデオを交えてのもので,大変興味ぶかかった.あとの2名の方については,会場から厳しい批判の言葉が飛んでいた.
     2日目は,午後のシンポジウムを聞いた.「真珠夫人」を漱石の「明暗」のパロディーとして読むことを提案された吉川豊子氏,太宰作品につきながら表現におけるパロディーの本質性と可能性について報告された綾目広治氏,実作者のエピソードを交えた清水義範氏のパスティーシュの話も興味深いものがあり,「若草物語」のパロディーを谷崎の「細雪」の文体模倣で書いたという最新作「パウダー・スノー」の宣伝もしっかりされていた.
     綾目氏の提起がパロディーの可能性についての議論を期待させるものだったのだが,パネリスト間でも会場でも,何をパロディーとするのかとか,これはパロディーではないとか,というあまり面白くない方向に行ってしまって議論が深まらなかった印象を受けた.またパネラーの一人にダラダラとまとまりなく話す方がいて,聞いているうちに要点が分からなくなるという,プレゼン面での問題もあった.説明というのは,長々と話すことをいうのではなく,要点を明確かつ簡潔に話すことをいうのである(第1にこれこれ,その理由は何々です,と).司会者は,もうちょっと発言をコントロールして欲しかった.
     ともあれ今回は,懇親会や2次会で名前でしか存じ上げなかった方とも知りあいになれたし,懐かしい友人たちとも再会して親交を暖められたのが,個人的には一番の収穫であった.金沢在住の半魚氏(近世文学会)も,四方田氏の話を聞きに来ていて,2年ぶりに話をすることができ,うれしかった.
       土産を買い,車中「亡国のイージス」を読みながら,21:20頃自宅に戻る.

10月24日金曜日晴

     着任6年目にして,はじめて小学校から中学校までの義務教育期間の教科書すべてを購入した.総額35,000円あまりである.文学教材の現状がどうなっているのかを確認する研究上の目的があって購入したのだが,ほんとに「絵本」のような教科書でビックリ.
     昨日帰宅すると,甥っ子(13)から葉書が来ていた.「定期試験の結末には悲しい結果がまっていたけど,卓球部の新人戦の選手に選ばれました」と書いていた.いっぱしにレトリックを使っているのに感心する.
     奥さまのおばあさん&お母さん,「松茸」をおいしくいただきました.ありがとうございます.やはり国産品は,香りが鮮烈ですね〜.
     明日から学会で金沢&古書店行きです.会員の方たちは,近代文学会のWEBサイトを見てから出かけましょう.会運営委員になっている友人の話によると,懇親会場には寿司バーが設けてあるとのこと.

10月22日水曜日晴

     暑い.夏日に逆戻りである.今日は,開学記念日で休講.僕はもともと講義の無い日なので,普段どおりの仕事をするだけなのであるが.
     14:00過ぎ,中国からの研究生が,世話役の中国の方と一緒に来日の挨拶にやってきた.1972年生まれの31歳.中国では中学校の国語教師をしていた男性である.指導教官は別にして,いろいろなキャラクター(複雑怪奇,七転八倒,七転び八起き,言語道断,以下省略)に恵まれたわがゼミに,また新たなキャラが加わったわけである.心配していた日本語も上手な方で,安心した.話をしていて案外に思ったのは,中国では物価の上昇がすごいらしく,日本の物価に驚くかと思っていた僕は,逆に「案外安いですね」という言葉に驚かされてしまった.
     その彼が,首から渋い彫り物のアクセサリーをぶらさげているので,「それは何か?」と聞いてみると,空港まで見送りに来た5歳になるお嬢さんからのプレゼントということだった.
     「(アクセサリー上部の飾りを指して)この小さい龍が娘で,下の大きい象が私だそうです」という.
     「良いお嬢さんですね〜,羨ましい.かわいい盛りのお嬢さんと別れての留学は,淋しいでしょう」というと,世話係兼通訳(34,2人の子持ち)が云った.
     「先生(39)は,まだですか?」
     「ほっとけい. 日本のコウノトリは先日絶滅したんだよ」
     「それは,トキですね」

10月20日月曜日晴

     昨日は,京都府私立学校図書館協議会の主催で行われた教育研究会(於・平安中学高等学校)に呼ばれて出席.国語科では高校生を中心とした読書シンポジウムが行われ,パネラー兼コメンテーターとして発言してきた.
     もう9年前になるが,僕は2年間洛星中学・高等学校の国語教諭として働いていたので,京都の私学とは細いご縁があるのである.
     シンポジウムの対象には,野坂昭如「赤とんぼと,あぶら虫」(『戦争童話集』中央公論社,1975)を取り上げた.あぶら虫というのは,「御器かじり」からその名前のついた,人類よりもはるか昔1万年以上に及ぶ歴史をお持ちの「虫」のことである(「ゴキブリ」,などとハッキリ明言しないこの配慮をお汲み取りいただきたい).
     「無意味な死」を自覚した18歳の特攻兵が,最後に親しみを覚えたのは,藁布団に紛れ込んできた幼いゴ…,もとい「あぶら虫」であり,特攻出撃中に僚機とはぐれた少年兵は,この虫を生かすために,南の島のはなれ小島に不時着するのである.
     死ぬために生きているような特攻兵が,あぶら虫を通じて「生きる」ことを再認識することが書かれていると思うのだが,高校生の殆どが,特攻兵が最後に沖の方へ泳いでいく場面を「自死」と捉えており,そこに生きる可能性を見出した僕の解釈とは違っていた.
     特攻兵だから,任務を果たせなかった以上自死しなければいけないという話もあるのだが,そもそもこの少年兵は当時の少年兵とは隔絶したところに形象されている.すなわち,実際の少年兵たちは「殉国の精神」などという観念をインプットされて,われ先に特攻に赴いていったそうで,野坂作品の少年兵のような「ノンビリ」した存在ではなかったのである.そういう少年兵が,最後に特攻隊員だから「自決」するという論理をとるだろうか? 僕は特攻隊員が,「生きた」ことにこそ,野坂の真意をみたい.会場からも洛西高校の先生が,野坂作品には,みっともなくても生きる事を最優先する姿勢があると発言されていたことも付け加えておこう.
     生徒の読みは,「特攻隊=死」という公式から出るものではなかったのだが,野坂はそれをズラす仕掛けを,擬人化された「赤とんぼ」や活き活きとした?「あぶら虫」の形象に施している.それらに気づくかどうかで,作品世界は違ったものになる.部分的に気づいた生徒もいたが,まだ十分とはいえず,そのあたりのフォローが指導者側で必要であろう.
     作品を分析的に読み,言葉と一つの論理にくみ上げて解釈して行く作業は,学校の算数・数学のように公式や解法に従えばそれで問題が解けるようなものではなく,経験的な要素に左右される.しかし,それは裏返せば,国語―言葉の世界は,一生をかけてブラッシュアップしていくものなのだ,ということになるだろう.その意味で「読書」をすることは,学校の一プログラムにとどまるものなどではないのである.

     この後洛星中学高等学校の友人達と歓談の席を持った.久しぶりの同窓会で,楽しいひと時を過ごすことができた.21:00のぞみ号で岡山に帰着.車で出迎えに来てくれた奥さまに,京のお土産を渡す.

10月16日火曜日雨

     午前午後と講義.
     昼休みに院生部屋のところで,英語教育の院生(1年)がニコニコとやって来ていうことには,「先生,きむたく日記見つけました」
     「ほほう.それはそうと,良いモノ持ってるね」
     「エンゼルパイ貰いました〜」
     お菓子をもらうと,本当に人は幸せそうにみえるなぁ,と思う.童心に戻るのだろうか.ちなみに一応ダイエット中の僕(甘党)は,甘いものは買うだけで食べることができない(食べるのは奥さま専門である).エンゼルパイがおいしそうだった.

     書架も入れたついでに,6年目にしてブラインドも交換する.今までのものは,ブラインドのパネルを操作する紐が切れてしまってブラインドの用をなさなくなっていたのである.放っておいたワタシも相当な武将,いや無精だが.
     生協に注文しておいた「文学」(9,10月号)が入荷したとのことで受け取りに行く.最近若い女性の間のファッションの流行は,ブーツにミニスカ(チェック・ツイード類)なのか? どうでもいいが,後ろから見ると皆「同一人物」だぞ.いや,そう見えるのは個別認識機能を失いつつある僕のせいなのか.
     そういえば流行など関係のないゼミ生(4年)は,指紋認証機能のついた携帯を2万で買ったと昼休みに自慢していた.コレはこれで,夕方に吹く秋風のように妙に心寂しいものがある.
     「この寂しさはとは何か,本文を踏まえて簡潔に論述しなさい.」

     森ゼミT井君,教採合格おめでとう.
     

10月15日水曜日曇

     午後,教授会.後期最初ということもあるのか,進路に悩んで休学したり退学したりする学生が多い.夏休み中にいろいろ考えたのだろう.でも,「出産」というのは….まぁ,いいんですけど(子供がいないので,実は羨ましかったりするのですが).教授会は,めずらしく1時間半で終わった.皆驚いていた.
     先日増える書籍を収納するために,新たに書架を2つ入れた.配置の関係で,電話機のコードがモジュラージャックに届かなくなったため,10mの長いコードを買ってくる.長すぎて,あまった部分がかえって邪魔になってしまった.
     夕食時,奥さまとある言葉をめぐる「方言」について議論.納得しない彼女は,「方言辞典」で調べて来いと言った(ま,「〜来い」とは言わないけど).
     「おお,調べてきちゃるワ」(←但馬方言)

10月14日火曜日雨

     急に冷え込み寒くなった.今日から秋冬物のスーツを着始める(減量はギリギリ間に合った?).昨日はまた暑かったので,温度差のせいか体がだるく感じる.
     午後の講義までになんとか体調が戻ればと思っていたが,余計に気分が悪くなってきた.「もうダメ,講義は休もう」とまで考えたが,「いやいやここで諦めては教師失格と」なんとか頑張って講義をする.しかし,2コマ連続だったので,2コマ目の講義は体力がキレてしまい,ヘロヘロ講義になった.これは受講生には本当に申し訳なかった.トシなのかなぁ…….それとも昨夜,首藤瓜於「脳男」(講談社文庫)を一気に読んだのがまずかったのか.奥さまは沢木耕太郎「無名」(幻冬舎)を一気読みしても,ピンピンしてましたが.

10月8日水曜日晴

     先日奥さまから「白髪増えたねぇ〜」といわれる原因になった論文を脱稿.ちなみに論文は11月締め切り1本.12月締め切り2本の計3本.120枚分ある.年末には帰省できないかもしれない……(泣).
     集中講義の課題レポートを査読し,コメントをつけて返送する.明日の講義準備.ゼミ院生が,修論草稿見てくれと持ってくる.
     廊下で久々に会った4年ゼミ生Fは,「昨日先輩に卒論の相談にのって貰いました」と殊勝なことをいった.
     講義で「蜜柑」を取り上げるので,最近の研究論文を探していると「解釈」7・8月号に岡崎晃一氏の「蜜柑」論が掲載されていた.この号には阪大院生の斎藤理生(まさお)氏の「大庭葉蔵の饒舌―『人間失格』論―」も掲載されていることをシッカリ告知しておこう(笑).
     さて,岡崎氏の論では,小娘の蜜柑投下地点はどこなのかという詳細な考察もあるのだが,これは岡山の地では殆ど紹介する意味がないなぁ,と思う.気になったのは,「暖な日の光に染まつてゐる」蜜柑の解釈で,他の人の同じ意見を引きながら,踏み切りの場面では「夕日が射していた」と解釈されているのである.物語は「冬の日暮」ではじまり,白い旗が「暮色」を揺っていて,男の子たちの頭の上にあるのは「曇天」である.夕日が射しているようにはとても読めない.これは蜜柑が「蜜柑色」をしているのを「暖な日の色」に染まっていると表現しているのではないか.「日暮」「暮色」「曇天」というグレーな色彩一色の中に,「暖な日の色」がばらばらと降ってくるから印象的な「絵」になるのである.夕日が射していたら,コントラストが活きない,と僕は思う.
     続いて斎藤氏だが……

     最近面白いのは,道路公団総裁の更迭をめぐるゴタゴタだ.藤井さんはヘラヘラノラリクラリだけの人かと思ったが,それなりにプライドはお持ちのようだった.2000万もの退職金をフイにしてでも,抵抗するご存念がおありのようなのだ.ま,分かりにくいプライドなんだけど.

10月6日月曜日曇

     生協ブックセンターで,冬休み用に島田雅彦の新刊2冊を買う.連作で新刊2冊を同時刊行するというのは,珍しい.買い忘れていた文庫版の「ユリシーズ」2冊も買って,積読する.
     12:30から会議.会議終了後,明日の講義準備.
     昨日奥さまと外食.ついでに紀伊國屋書店で新刊を購入.寝る前に1時間ほど斜め読みした.松谷みよ子『現代民話考』6に,「夏の花」(原民喜)の中に記述された甥の死の場面が,母親(原良子)の証言として採録されていた(350頁).こちらの方が,状況が良く分かる.
     『ライシャワー大使日録』を読んでいると,以下のようなくだりがあった.1964年3月22日の箇所である.
      金曜日の夜には,吉田元首相の孫の麻生青年ら五人の大学生が乗ったヨットが,油壺(木村注/神奈川県三浦半島,ヨットハーバーがある)へ向かう途中で沈没した.
     麻生青年(当時23)というのは,今の総務大臣(63)のことだろう.沈没してたんだ,と思う.

10月4日土曜日晴

     10:00に起床.午後,研究室で締め切り論文を作成していると,携帯メールが着信した.見ると,4年ゼミ生の一人からで,
     「(岡山県)教採に受かりました」とのこと.
     あまりに嬉しかったので,携帯電話に電話して直接におめでとうをいう.
     「君なら,ゼッタイ受かると思っていたよ」というと,「先生がいうと,白々しいんですけど」といわれた.
     「何をおっしゃるウサギさん」

10月3日金曜日晴

     昨日我が家に宅配便が届いた.
     奥さまが出て,「あら,何かしらこれは?」と配達員に言ったらしい.
     動揺したのか配達員は,奥さまにこういった.
     「奥さんに見られてはいけないものを配達しましたか
     帰宅した僕が,「奥さんに見られてはいけないもの」について,(笑いながら)追求されたことはいうまでもない.
     「H関係か」と期待された方には申し訳ないのだが,配達された中身は,来年3月にマシュー・ボーンが演出する「くるみ割人形」のチケットであった(この辺は,サスガ).男性が白鳥を踊る「白鳥の湖」(あの「リトル・ダンサー」にも出演したことで話題になったアダム・クーパー出演作品)の演出で話題になった人の新作なのである.
     それにしても,配達員の微妙なユーモアセンス(?)には敬服した.

     論文執筆の合間に,市民童話賞の応募作品を読む.
     面白いお話を読むのは好きで(悪口や噂話を聞くのも大好きだが),去年は「鬼タマ」と呼んでいる作品との出会いに恵まれたのだが,今年はまだその出会いがない.今のところ,ロールケーキを食べていたら,溶けていない砂糖が口の中でジャリジャリいったり,スポンジ部分にアルデンテの歯ごたえを感じるような具合である.
     例えば,であるが…,心情を描写するときには,前フリになる行動・事象の描写があって,それを受けた反応として心情が生まれるというのが,描写の基本なのだが,それがなくて心情語だけを書いて,心情の移り変わりを書こうという乱暴なものがある.これは,池の中に柱を適当に立てて,それを渡って向こう岸に渡れといっているようなもので,集中力をなくすとお池にはまってサア大変である.ドジョウさんと「こんにちわ」をした審査委員は,僕だけではないと思う.
     題材では,今年は「じいさん」ネタが多い.元気なじいさん→脳卒中で倒れる,あるいはボケる→子どもが心配→じいさんの死や痴呆から何かを学ぶ子ども,というパターンである.去年は,子どもの一人・兄弟電車旅行パターンが多かった.じいさんネタが多いのは,引退する塩ジイの影響なのか? なぜばあさんではないのか? よく分からん.

10月2日木曜日晴

     後期最初の授業2つ.久しぶりの授業だったので,結構緊張した.と,いっても今日は講義のガイダンス程度であったのだが.
     大学院生部屋に購入したデル社製PCを院生が組み立てたので,ネットワークの設定をする.1本のLANケーブルをスイッチングハブ(ポートは5つあるので,4つまで端末を増設できる)で分割し,2台のPCで共用するようにした.部屋を利用している者が,院生・研究生を合わせて10人はいるので,これで大分利用しやすくなったわけである.
     で,かねてから懸案のWEBカメラとヘッドセットを用いた映像・音声チャットによる通信実験をしようということになって,僕の研究室と院生部屋をネットワークで結んだまでは良かったのだが,映像はクリアで綺麗なものの音声が全く聞こえないし伝わってもいないということで,30分ほど試行錯誤した挙句,ギブアップした.ハードの設定は問題がないのだが,原因は不明である.
     聞いてみると,連合大学院用に外部と結んだ映像チャットシステムも,映像はともかく音声のレベルが悪いらしく,映像はPCに映しながら電話を使っているのだという(笑).これでは,電話と大して変わらない.
     それはそうと,デルのPCを僕は生まれて初めて見たのだが,広告しているPCの筐体やキーボードはそれなりに見えるのだが,実物はと見るとヒジョーに安っぽいプラスチックの質感に呆れてしまった.長く使おうと思っている人は,せめて毎日使うキーボード位は買い換えた方が良い.いや,驚いた.通信販売で買おうかなと思っていたが,デルはヤメである.大学が一括購入していた,エプソンダイレクトの方がまだ良い.

10月1日水曜日晴

     昨日,奥様が体に良いからと言うので,「ビール酵母」を飲まされた.本人は一口味見で飲んだ後,うがいをしていた(オイオイ).
     朝晩の冷え込みが強くなり秋になったんだなぁとは思う.しかし,日中は冷房をつけないと暑い.温度差が気になるようになったのは,トシのせいか.
     大学は今日から後期の講義が始まった.僕も明日から講義があるので,教材の準備に追われる一日であった.夏休み以来の雑用(自己点検評価)もあと少しで終る(ハズである).それよりも何よりも,研究室内の1畳程のテーブルが,書籍や書類やらでテンコモリになってしまい,仕事が出来なくなってしまったので,半時間かけて整理(というか移動)をする.野口悠紀雄の整理法なども読んでみたが,書類を処分できないのは「性分」もあるように思う.優柔不断の性格は,書類整理には向いていないようだ(当然か).
     13:00から大学院ゼミ生の修論の指導.質問の中に,「承久軍物語」が見つからないというのがあり,「群書類従」の中にあるのでは?と答えたが,「調べたが無い」というので,僕がOPACで調べて見る.結果,「続群書類従」の第20から第23の「合戦部」が怪しいと分かった.これを図書館で調べて見るように指示する.
     「(修論の締め切りに)間に合うでしょうか?」と聞くので,「ギリギリでしょう」と答える.
     契約しているBIGLOBEから,WEBサーバーの容量を100MBまで無料増設できますという案内が来たので,増設申請を出す.この結果,移行作業が始まるとサイトの閲覧が出来なくなるそうだ.近日エラーが出るときは,「移行作業中」とご理解下さい.
     と,書いたのだが,1時間後に「移行完了」の通知メールが来た.早かった.