津島通信

AUGUST  2004
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◆CONTENTS◆

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【きむたく日記】

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広 告(刊行より1年間)

¶ 米村みゆき『宮澤賢治を創った男たち』青弓社,2003.12.17,本体3,000円+税

¶ 岡山市・岡山市文学賞運営委員会編『おかやま しみんのどうわ2004』吉備人(きびと)出版,2004.2.14,定価1,000円

¶ 『敍説』U―07,「特集◆距離感」,花書院,2003.1.6,本体1,800円(税込)

 木村も書いています.

¶ 綾目広治 『倫理的で政治的な批評へ』皓星社,2004.1.30,本体2,800円+税

 のっけから福田和也批判で始まる痛快で刺激的な著書.批評理論系の方は,看過できない綾目先生の新著です.

¶ 米村みゆき編『ジブリの森へ 高畑勲・宮崎駿を読む』森話社,2003.12.15,本体2,200円+税

 映像テクストであるジブリ作品をどう「読み」「研究」の射程の中に位置づけなおすのか,文学研究者たちの果敢な取り組みです.

¶ 『現代文学史研究』第1集,現代文学史研究所,2003.12.1.
 大久保典夫「純文学の死」,大井田義彰「越境する中年女―松本清張『けものみち』論―」他.

¶ 千年紀文学の会編『過去への責任と文学』,皓星社,2003.8.15.本体2,800円(税別)
 綾目広治「現代思想と文学―九・一一の以後の文学と思想」他

¶ 『敍説』U―06,「特集◆性交」,花書院,2003.8.12,本体1,800円(税込)

¶ 原爆文学研究会編『原爆文学研究』2,花書院,2003.8.1,本体1,200円(税込)

目次


「きむたく日記」

8月31日火曜日晴
     昨日の台風16号は,久々に自然の怖さを教えてくれた.大学の通りを車で走っていると,街路の樹木の小枝が強風で折れて飛んでくる.道端には,大き目の折れた枝が横たわり,傘をさせない人たちは,あきらめ顔でずぶ濡れになって歩いていた.今日の新聞では,岡山のJRも午後からダイヤが乱れ,瀬戸大橋線も停まったようだし,帰宅時にはタクシーの争奪戦になっていたようだ.おかげで予定されていた会議も中止になった.これはラッキーだった.
     昨日ノルマ論文を送付してようやく8月の「死のロード」が終了した.9月は外注の仕事は1件(原爆文学研究会での発表)しかないので,自分の時間が持てる.ようやく夏季休暇というところである.
     と,いうわけで昨夜などは,乱歩賞の「カタコンベ」を読んだ.カタコンベというのは地下墓地のことで,物語に出てくる自然の鍾乳洞を喩えたものだ.選評でも指摘されているのだが,この作者,24歳の最年少受賞者ということなのだが(昨年の芥川賞コンビを意識した帯評),文章力に問題があって,何度も表現でつまずかされた.食事で喩えるなら,飲み込むたびに魚の小骨が喉に刺さるような状態である.
     例えば,「畳針のような雨」という表現があった.冷たく凍えるような雨を表現したのだろうが,僕には,畳針が何本も落ちてくるイメージしか浮かばなかった.比喩表現というのは,喩えるものの意外性で印象を強める効果を狙うレトリックなのだが,これはちょっといただけない.大体畳針を知らない読者も最近は多いだろうし.
     しかし,文章の粗雑さを上回っていたのは,ストーリーの面白さであろう.これが受賞をもたらしたように思う.それから映像化した時は,もっと犯人の人物像を作り直した方が良いと思った.犯人を読者に分からなくさせることと,犯人を書かないというのは別問題で,その点犯人の人間像がとても弱く,スリリングさを欠いてしまっていたのが惜しまれる.ヤマイヌ(ニホンオオカミ)という小道具を使いこなせなかったのも勿体無い.
     さて今夜は,エイズ関係の「アフリカの瞳」にしようか,京極世界に浸ろうか…….書店でモブ・ノリオ『介護入門』(文芸春秋)を見つけたので,買う.
8月26日木曜日晴
     昨日出張から戻り,久々に大学に出勤.溜まっていた雑用の処理に追われる.
    今月中にやらねばならない仕事は,出張が終わってあと1/5になった.31日締め切りの論文は,30枚前後といわれているのだが,28枚分書いては見たものの,各項目が断片と化してしまい論になっていないので焦ってしまう.焦ると人間不思議なもので,逃避行動に出るのですナ.
     あの『「キング」の時代』の著者佐藤卓己氏の新刊『言論統制 情報官・鈴木庫三と教育の国防国家』(中公新書)を買って来て,読み始めてしまう私です.
     そういえば,昨日から岡山県教採は2次試験が始まっている.悔いを残さぬよう,頑張って欲しい.オマエも頑張れよ,と言われそうだが….
     名古屋の佐々木亜紀子さん,論文の抜刷をありがとうございました.
8月21日土曜日晴
     来週から3日間の予定で出張.その準備のために大学に出勤する.
     昨日買った斎藤貴男『安心のファシズム』(岩波新書)を読む.ジワジワと身近に迫るきな臭いものに,「ファシズム」という明確な名前を与えてくれている.自民党が徴兵制導入を念頭においているという不気味な指摘には,もう暗然としてしばらく言葉がなかった.
     先日の沖縄における米軍ヘリの墜落事故を思い出すのだが,その事故処理をめぐって日本の捜査機関の立ち入りを禁じた米軍海兵隊の行為は,日本国民に日本の主権が米軍によって侵害されたことを如実に示していた.
     しかし驚いたのは,沖縄の人々が怒るのは当然として,本土の日本人がオリンピックに熱を上げて殆ど関心を示そうとしなかったことである.日本人は,主権の危機にすら鈍感になってしまっていた.
     米国政府と米軍が他国の主権を侵害するのは今に始まったことではないので,今さら驚くのはバカらしいのかもしれない.しかし足を踏んづけられて何もいわないのは,踏まれた側も明らかにおかしいのだ.ちなみに木村は,足を踏まれたら「笑って」踏み返すヒトです.  
8月20日金曜日曇時々晴
     大学院入試を受験予定の留学生来る.岡大が課していた日本留学試験を受験していなかったために,日本人と同じ受験科目で受験せざるを得なくなったことが分かり,留学生ともども青くなる.樋口一葉の擬古文を読みこなす点で,そう基礎学力に不安はないのだが,それでも日本人と同等扱いはシンドイ.
     入試要項では,平成15年以前の日本語能力試験の成績は,ノーカウントになるということで,そういうことは早く教えて欲しかった.入試要項が配布された時点で,すでに日本留学試験の1次試験は終了し,2次の申し込み(7.31)も終わっているのだから!
     13:30から16:00まで会議.
8月19日木曜日曇
     台風の関係で,曇りである.昨日まで夏季休暇を取り,ゆっくり骨休めできたといいたいところだが,雑用の処理を自宅でしていたというのが正確なところ.オリンピックも気になるところだが,ゆっくり見ていられなかった.
     10:20から,教採を控えたゼミ生の小論文の指導.その後,月末締め切りの論文書き.今まで一度も「落とした」ことはないのだが,今回は果たして間に合うのかかなり不安である.
     集中講義の準備のために「日本文学」8月号の鈴木啓子氏の「『ごんぎつね』をどう読むか」を読む.引用されている固有名詞が,2箇所「も」違っているのが気になる.30頁下の「高木まさと」というのは,横国の「高木まさき」氏のことであろうし,32頁下の「中村豊」というのは,誰あろう夢象こと「中原豊」氏(中也記念館)その人のことである.固有名詞を間違えるのは,相手に失礼である.鈴木氏本人もそうだが,査読者も留意すべきところであろう.
     ちなみに僕は論文で人名を間違えた載せたことなど,……たった一度あるきりである(←あるのかよ).……アメリカ人の名前であった.
     大学院生の方々,以って「他山の石」とされよ(トホホ).
8月13日金曜日晴
     お盆である.事務職員以外に構内の人影はまばらになっているのだが,僕は今日もレポート読みに出勤である.
     その甲斐あって,なんとか教養科目87冊のレポートを今日で読み終えた.今日など午後から頑張って40冊近く読んだもんね.自分で自分を誉めてあげたい.
     しかし,お盆休みの帰省にレポートを持って帰りたくない一心で無理をしたために,肩はゴリゴリ,目はシバシバと霞んでいる.もう無理が効かない年なのだなぁ,としみじみ思うのであった.
     さ,でも次の仕事がある.今日は,8月の仕事の2/5が片付いただけでも良しとしよう.
8月11日水曜日晴
     暑い.岡山は36度だそうである.
     教養科目のレポートを読み進む.現段階で17冊読んだどー.あと54冊だ.
     怪談「番町皿屋敷」の幽霊お菊さんは,1枚2枚とお皿を数えて,皿が1枚足りないと井戸の傍らで夜な夜なすすり泣くのだが,僕など1冊2冊と数えてまだ50冊以上あるのかと,毎日研究室の中ですすり泣いているのである.
     そうそう,レポートを読んでいてこんなことがあった.ある学生がレポートの中でインターネットから文章を引用していたのだが,同じ文章を他のレポートで読んだ記憶がよみがえり,そのレポートを探し出して文中のキーワードを手がかりに検索にかけたところ,その引用箇所が確かに現れた.そしてよく見てみると,そのレポートはサイトのエッセイ全文を「盗用」していたことが分かった.
     あとは事後処理に追われただけなのだが,くれぐれも評価対象のレポートでこのような「不正行為」はやって欲しくないと思う.当人は,バレないと思っていたのだろうが,「天網恢恢,疎にして漏らさず」なのである.木村の(つぶらな)目は,近眼ではあるが,まだ節穴ではない.「間違いないっ」(C)長井秀和.

     ああ,普通の読書生活に戻れるのは何時の日か.友人たちも採点地獄で苦しんでいるようだ.お互い頑張りましょう(それにしても,構内で遊んでいる学生を見ると腹立つな〜,ブツブツ)

8月10日火曜日晴

     昨日から担当していた,岡山県教員対象の免許法認定講習を終える.通信教育などで2種免許を取得して教壇にたっている先生を1種にするための講習会である.2種といっても,そこは毎日教壇で授業をされている先生方なので,現場の体験からいろいろ参考になる意見を言っていただいて,こちらの方が勉強になった.
     でも,朝から夕方まで,しゃべりっぱなしで,脳が酸欠状態になるし,気疲れもした.1人を除いて年上ばかりなんだから….
     まだ,レポートが74冊も残る.今夜も夜なべだ.

8月5日木曜日晴

     近代文学のレポートの小山で「遭難」しかける.
     この山は昨日からアタックを始めているのだが,一昨日登頂を果たした児童文学の小山に比べていろいろな障害が多く,読点のない長文「迷い路」や,突然の誤字・脱字「落石」.しまいには,何が書きたいのか五里霧中のガス(山霧)まで出てくる始末.もう大変である.さすがに「熊」なんかが出てきたり,「噴火」したりすることがないので助かっているのだが…….読みはじめて,2時間で集中力が切れてしまう.
     こんな時は,気分転換に昨日購入した片岡義男『自分と自分以外』(NHKブックス)や柄谷行人『定本柄谷行人集』5(岩波書店)をひもといてみる.
     片岡義男は最近は批評家になっていて,学生たちにはお堅いイメージがあるかもしれないが,僕の学生時代はトレンディな作家だった.結構読んだはずなのだが,内容を覚えていない.片岡は5歳の時に,岩国で広島の原爆の光ときのこ雲を目撃したのだそうだ(「その光を僕もみた」).
     片岡にしても柄谷にしても,その文章は大変読みやすいし,分かりやすい.学生の文章は却って難しい.難解なのではなく,分かりにくいのである.思考を相手に伝えるための表現を作り上げるには,修練が必要ということなのだろう.問題はその「修練」のプログラムを,どう作れば効果的なのかということなのだが,今のところレポートを書かせて文章を添削し,返却して反省させること位しか思いつかない.実に気が長い仕事で,前途遼遠である.
     さ,そろそろレポートの査読に戻るとするかぁ(どっこいしょ).

8月3日火曜日晴

     (今月から,「日記」の位置を上に入れ替えてみました.)  雨が上がったのはいいが,構内清掃作業当日に上がって欲しくなかった.
     9:00から学部内有志(半強制)で,清掃活動を行う.1時間半程で終了させていただく.例によって全身濡れねずみ状態になり,研究室で着替える.
     以後,昨日同様.レポート読みと月末締め切りの論文作成にいそしむ.そういえば,来週講習会の講師の仕事が入っていたのだった,その準備もそろそろ始めないと…….
     休暇に入った学生たちが羨ましい.  

8月2日月曜日雨のち曇

     土日で,非常勤先の試験の採点を終えてしまう.辛かった.本日から計画的にレポートを読んでいくこととした.まずは大学院などの少人数の授業のレポートを10冊余り片付ける.うまくいくと,お盆前には「レポート地獄」から解放されるはずだ.きっとそうに違いない.
     低血圧の僕の血圧を上げるような「出来事」が一件.

「演劇鑑賞サークル」のご案内 (岡山限定)  

   以下の要領で,演劇を鑑賞する仲間を募集します.役者が目の前で演じている舞
   台を見ると,TVや映画とは違う迫力と魅力に圧倒されます.募集の期限はあり
  ませんので,是非入会をご検討ください.

                  記

  ・入会の条件
   @教官・事務官・学生・院生・OB,OGなど,一切不問.
   A最低半年以上,サークル会員でいられる人.
 
  ・ 申し込み先:木村 功  〒700-8530 岡山市津島中3丁目1−1 岡山大学教育学部内
     (入会先:岡山市民劇場  岡山市磨屋町4-21 金谷ビル2F,086-224-7121,FAX086-224-7125)

    ・費用
   @入会金:1,500円
   A月会費:
        一般会員;2,300円
        学生会員;1,800円,
    
  ・演劇上演の時,入場料は要りません
  年間平均6〜8本の演劇が鑑賞できます.普通演劇鑑賞は,5,000円以上/1回
 かかりますので,演劇が好きな人にはかなりお得といえるでしょう.また,席が
 余れば期間中複数回の観劇も可能です.
 
  ・個人単位だと,事務局から割り当てられる座席の位置が悪くなるので,「サー
  クル」という単位(3人以上)を作って座席の割り当てを貰った方が,費用対効
  果があがるのです.

  ・詳細は,木村まで.

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 2004年 7月例会「アンネの日記」